人間らしく働ける、ドイツの働き方
7月にデンマークを出てから、ハンブルク、ベルリン、ライプツィヒと、転々と旅をしていた。その間、労働ビザやアーティストビザでドイツに住んでいる日本人の方たちとたくさん会えて話ができたのだけど、そこで知ることになったのはドイツと日本の働き方の違いについてだった。
飲食、病院、大学の研究室、表現やアートの世界に至るまで。驚くほぼ全員が口にしていたのは「日本よりも働きやすい」という話だった。
日本でもドイツでも料理人として働いている女性は、日本の飲食店で働いていた時は高熱を出した時も人がいないからと、点滴を打ちながら仕事に出たこともあったという。最終的には長時間労働で心身ともに体調を崩し、仕事を辞めドイツに来た。ドイツでも同じ料理の仕事をしているけど、こちらのではもし体調を崩した場合、有給とは別に休みが取れるそうだ。さらに飲食店でもよっぽど繁忙期でない限り1日の労働時間が守られていて、週2日の休みや夏休み、冬休みもきっちり取れる。だからとても人間らしい働き方ができている、と話してくれた。
ドイツの大学の研究室に来ている男性は、日本の研究室では年次が上の人の帰る時間が遅いので自分たちも帰りにくく、帰りが深夜になってしまうこともあったけど、ドイツの研究室では定時になったらみんなさっと家に帰る。上下関係がある日本と違い、研究者同士の関係性もフラットだという。
ダンスの世界で仕事をする男性は、日本では「いかにお手本通りに踊れるか」ということが評価されて個性を出すことは良しとされなかったけど、ドイツやヨーロッパでは逆にいかに個性を出すことが重視されるので、自分の個性を生かした踊りができる。表現の世界でも、決められた練習時間が終わればきっちり終わることが多い。
いま挙げたような日本での働き方は容易に想像できてしまうけど、それがいかに「普通じゃない」かを改めて思い知らされることになった。
もちろんこれらは断片的な話だし、100%良い面ばかりではない。日本と比べてスタッフの仕事に対する意識が全体的に低く、マネージメントする側になると大変だという話も聞いた。ただ、「どちらが人間らしく働けるか?」という視点で見れば、間違いなくドイツだろうなということは、話を聞いて想像できた。
労働者の権利がしっかりと守られているドイツ
なぜ日本と比べてドイツが働きやすいと感じるのか。それは労働者の権利がしっかりと守られているからだ。
1日10時間を超える労働は法律で禁止され、残業した場合には別の日に早く帰ることができる「労働時間貯蓄制度」があり、年間最低24日間の有給休暇も法律で定められ、それをきっちり消化する。
そうした制度がきちんと守られているからこそ、ドイツのGDPは日本より44%も高いという結果になっているのだろう。
(出典:https://japan.ahk.de/jp/infothek/japan-im-ueberblick/motto-doitsu/2018/012018-kumagai/)
ドイツでは第二次世界大戦でヒトラー政権を生み出してしまった背景には、全体主義の暴走があった反省から、「たとえ最後の1人になったとしても自分の意見を貫け」ということを強く教えられるという。個人個人が自分の意見をしっかりと持ち、それを社会に対して声を上げているからこそ、労働者の権利も守られ続けているのだろう。
日本では政府が「働き方改革」や「ワークライフバランス」を国が声高に叫んでいるけど、これは本来国が主導するものではなく、労働者自身が自分たちの権利を守るために、会社や雇用主に向けて声を上げていくものなんじゃないだろうか?
そのためには、自分が労働者としてどんな権利があるのかを把握すること、「自分の人生において、どんな時間があれば幸せなのか」ということを、個人個人が考え、声に出していくことが大切なのではないだろうか。