【4回目の失敗(後編)」
・関係各所への連絡と謝罪
・クライアントへの謝罪と損害賠償
・作り直しと納品に向かって
・情け
・関係各所への連絡と謝罪
この事態を収拾するために、僕は会社に行った、日曜日のオフィスは誰もいなかった。
最初に部長に電話して、事の次第を報告した。明日月曜日にクライアントへ報告と謝りに行くことになった。その後、12曲入りの7曲を作った制作会社へ電話した、その制作会社には、僕の友人がいたので、彼に事の次第を話した。友人は、「お前、それは冗談だろう」と言い、そんなこと信じられない、と声を張り上げていた。僕はひたすら謝って、友人会社の社長の電話番号を教えてもらって電話した。社長も、絶句していたが、ひたすら謝って、明日月曜日にクライアントへ行って説明と謝罪と対応について話してから連絡させてもらうことにした。
・クライアントへの謝罪と損害賠償
月曜日、部長が出社してから事の次第をあらためて説明し、クライアントへ行った。
クライアントの部長に経緯の説明と謝罪をしたが、この時、このカラオケビデオの発売時期がずれたら、2,000万円の売り上げの損失になると告げられた。思わす、「どうやったら、この2,000万円を弁償できるのか?」田舎の母に及んだらどうしようと、頭の中がぐちゃぐちゃになった。もし、そうなったら生きていられないなと思った・・・。
・作り直しと納品に向かって
クライアントと対応策を協議して。月曜日だった納期を、製造スケジュールを見直して3日後の木曜日に延ばしてもらえることになった。
それから、急ピッチでスケジュールを組み直して、関係各所へ連絡と報告を行い、2日後の水曜日に、12曲全てを完成させる手配をした。
水曜日、7曲を作った制作会社のディレクターが編集室にいらっしゃった。僕はひたすら、僕のミスでもう一度同じ作業をしていただくことをお詫びした。事情を既に聴いていていたらしく、僕をとがめることもなく、逆に励ましていただいた。僕は泣きそうになった。
順調に7曲の編集が終わった。次はようやく、僕の会社が編集する段になった。この時、何の曲を作ったか、今は全く覚えていない。とにかく必死で、延ばしてもらったスケジュールを守ることと、守ることによって免れる2,000万円の損害賠償のことで頭が一杯だった。
どうにかこうにか、編集はすべて終わって12曲分の映像が完成した。これで、田舎の母に迷惑をかけないで済むと真っ先に思った。
翌日、メーカーで完成した映像のプレビューが行われた。プロデューサーは、少し言いたいことがあったようだが、OKにしてくれた。
日曜日から木曜日までの長かった4日間が終わった。
・情け
会社に戻って、デスクワークをしているときに、電話が鳴った。電話を取ると、その声はクライアントのスケジュールを管理する人で、いつも気にかけてくれる人だった。納品は出来たが、スケジュールをおしてしまったので改めて何か言われると思って身構えたが、それは杞憂だった。
「大変だったろうが。こんなことで辞めるとか思っちゃいけないよ。誰にでも失敗はあるんだから、引きずっちゃいけないよ。また、頑張ればいいんだよ。」と励ましていただいた。
僕は、お礼を述べて、電話を切った。そして、トイレに向かった。
誰もいないトイレで、顔を洗いながら泣いた。
24歳で人の情けに触れて、生まれて初めて流した涙だった。
それから、僕の仕事のスタイルは変わった、相手が知っているだろうという潜入間を捨てて、注意事項口頭ではなく紙にして、仕事相手に渡すようになった。
そして、 ミスをした人を責めないようになった。ミスをしたら、出来る限り、再起の為のきっかけを作ってあげるようになった。僕が救われたように・・・。