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【制作後記】明透「オレンジ」

やる気!元気!!佐々木!!!
久々にメイキングを書きます。よろしくお願いします。

「オレンジ」はSINSEKAI STUDIO所属バーチャルシンガー明透のオリジナル曲で、2023年2月25日に開催された「存流・明透 TWO-MAN LIVE 『Albemuth』」で初披露されました。このライブでは「オレンジ」の背景映像とリリックモーション制作を担当し、リリックデザインはJEFF99さんが担当しました。今回はこの「オレンジ」の制作について、制作初期段階の思考面のメイキングを中心にまとめていきます。

※当記事はささかい個人の考えによるものですので、当記事に関して運営元や関係アーティスト様へのお問い合わせはご遠慮ください。



■第一印象

「オレンジ」は作詞:牛肉さん、作曲・編曲:雄之助さんのお二人が制作しており、神椿/深脊界を知ってる人にはお馴染みのクリエイターが作ってます。

昨年の「V.W.P 1st ONE-MAN LIVE『現象』」で初披露された花譜×春猿火の「残火」も雄之助さん作曲で、この時リリックモーション制作を担当しており、その経験もあってデモを聴いた時のイメージがつきやすかったです。

「オレンジ」のデモを聴いて感じたことは、雄之助さんらしいリズミカルで力強いサウンドだなというのが第一印象でした。同時に、何個かイメージも浮かんでいました。

  • イントロのバシバシ音で音ハメしたいな

  • Bメロのだんだん音が上がっていく感じをトンネルで没入感上げたいな

  • サビ直前のクラップは音ハメで合わせたいな

  • サビはリズム合わせでカット割って魅せれたら面白そうだな

この時点で何回聴き込んでいたか覚えていませんが、さらに聴き込みながら手を動かし始めていきます。




■制作方針

第一印象で感じた通り、リズムカルで力強いサウンドに合わせて音ハメをしつつ、「オレンジ」感全開の演出を作ることを今回の軸にします。自分の中で方針が出来たところで、ここからどう作っていくか、思考を整理していきます。

  • 気持ちよく音ハメするために何を意識するか【構成】

  • 「オレンジ」感を出すために何(の要素)が必要か【アイデア】

  • 「オレンジ」感を出すためにどんなグラフィックを作るか【デザイン】

  • パフォーマンスする明透を引き立たせるために何を意識するか【考え方】


一番大事なのは「明透を引き立たせるために」です!
今回作る映像はライブ演出の一部であって映像が主役ではありません。明透がパフォーマンスする「オレンジ」を、さらに良いパフォーマンスにして視聴者を魅了させるための視覚情報の一部となることが目的です。



◾️ 明透を引き立たせるために【考え方】

早速ですが既に矛盾が生じています。それは「音ハメ演出をしたい」ということです。

音ハメにはカットをタイミングよく割る、カメラを切り替える、モーショングラフィックするなどいろいろな演出方法がありますが、カットを割ったりカメラを切り替える演出で細かく魅せる音ハメでは画面がかなりチカチカしてしまう恐れがあり、モーショングラフィックで細かく音ハメをしようものなら配信ライブの都合上細かすぎると音ハメしたことに気付けない、などといった問題が起こります。

つまり、音ハメを重視してしまうと映像演出として際立つ可能性が高くなりますが、目立たせたいのは明透であって映像ではないということを念頭におく必要があります。


では、“音ハメを重視する”という【考え方】を変えます。

例えば“キメのカットだけ音ハメをする”、“急な画面変化の少ない音ハメをする”、“音合わせはするが音ハメでキメを作ることはしない”、“そもそも音ハメをしない”、などいろいろと考えられますが、音ハメすることは自分で決めた方針なので“しない”や“減らす”という選択肢はありえません。

となれば、音ハメポイントは削らず、背景演出がうるさくならないように注意するけれど、明透の「オレンジ」が引き立つように音ハメをキメる…。
つまり“メリハリのついた音ハメをする”のが良さそうだと考え直します。


では、“どこで”、“どんな演出で”メリハリをつけるかが大事になってくるので、次は“どこで”を【構成】で、“どんな演出で”を【アイデア】で見つけていきます。



◾️ 音ハメするために何を意識するか【構成】

僕が音ハメ演出を作る時、基本はリズム合わせでポイントを決めます。1拍ごとだったり、ドラムの打つタイミングが多いです。今回も基本は拍合わせとインパクト音のリズムで音ハメをするのが気持ち良さそうだと思ったのでそうします。


基本となる音ハメポイントを決めたので、メリハリのついた音ハメをするために“どこで”メリハリをつけるか考えます。そもそもなぜメリハリのついた音ハメをする必要があるのか思い出します。それは、目立たせたいのは明透であって映像ではないということを念頭におく必要があるからです。

では、明透が目立つ瞬間はいつでしょうか?実際のパフォーマンスは本番まで分からないですが、ライブ出演者が目立つ瞬間といえばやはり歌っている瞬間だと思います。


明透が歌っている瞬間が目立つ瞬間(邪魔しちゃいけない瞬間)だと想定して、明透歌唱時の音ハメ演出は目立ち過ぎないよう注意し、それ以外ではキメとなる音ハメ演出してメリハリを作っていく構成が良さそうです!

これをベースに考えた構成がこちらです↓↓

【構成】
イントロ:ポイントで激しく

1A:激しくしない
1B:激しくしない
1サビ直前:激しく
1サビ:激しくしない
1サビ終わり付近:ポイントで激しく
2A:激しくしない
2サビ:激しくしない
間奏:ポイントで激しく
3サビ:激しくしない
3サビ終わり付近:ポイントで激しく

「激しく」というのは、カット割りで細かく魅せるという意味での激しさのことで、力強いサウンド的にもカット割りが合うだろうという考えです。「激しく」するカットは歌唱なしの部分なので、大胆に背景映像で魅せます!

それ以外の「激しくしない」部分は、音ハメというよりは音合わせに近いです。背景映像ではグラフィックデザインとして作りつつ、前面のリリックモーションで音合わせするのが気持ちよく魅せることができそうです!背景と前面両方を担当してるからこそ考えられる手法のひとつですね。

そもそもですがライブは演者を映すので「明透が歌う=カメラが寄る」可能性が高く、それを考慮しながら作れば効率良く制作もできそうです。



◾️ 「オレンジ」感を出すために何が必要か【アイデア】

枠組みとなる【構成】が出来たので、いよいよ「オレンジ」の中心となる演出案について考えていきます。「『オレンジ』感を出すために何が必要か」はブレインストーミングと連想ゲームで深めていきます。

ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法である。
出典:Wikipedia
『連想ゲーム』(れんそうゲーム)は、1969年4月から1991年3月までNHK総合テレビジョンで放送されたクイズ番組である。
出典:Wikipedia


……クイズ番組のことではないです。でも「連想ゲーム」という言葉で大体伝わるかと思います(伝われ)。ブレインストーミング(以下:ブレスト)も、おそらく小中学校時代に誰もが経験したことがあると思います。これも本来は複数人でやるものですが今回は一人でやります。


例えば、

「オレンジ」→「球体」→「輪切り」→「果実」→「果肉」

といった感じで、ひとつの要素から細分化したり、行動を加えたり、紐付けしたり、見方を変えたりして、【アイデア】を深めて演出案を膨らませます!

【アイデア】
・「オレンジ」→「球体」→「輪切り」→「果実」→「果肉」
・「果実」→「三日月型」「半円」「三角形」
・「果肉」→(抽象化)→⚫︎ or ▲
・「オレンジ」→(抽象化)→⚫︎ or ⚪︎
・「オレンジ」→(切る)(絞る)→果汁が出る→「水々しさ」
・「オレンジの表面」→「つぶつぶ感」
・「オレンジの表面」→(痛む)→傷ができる→「ザラザラ感」
・「オレンジ」→(皮を剥く)→ ティッシュ、新聞の上に置いて食べる
・「オレンジ」→(皮を剥く)→ 皮を重ねてまとめる
・「オレンジ」→(売る)→山積み、敷き詰め→「重なっている」
・「オレンジ」→(捨てる)→チラシで出来たゴミ箱にまとめる
・「オレンジ」→(見方変化)→遠目に見たら惑星?

あくまで視覚的情報に限定してます。味覚や嗅覚情報ではグラフィックに取り入れづらいからです。


たくさん【アイデア】が出たので、「“どんな演出で”メリハリをつけるか」について考えます。言い換えると【構成】に基づいて【アイデア】を組み合わせていきます

第一印象で「サビはリズム合わせでカット割って魅せれたら面白そうだな」と感じていましたが【構成】でサビは「激しくしない」ように設定したので、【アイデア】の中から音合わせできそうで「激しくしない」演出ができそうなものを探します。

そこで目に入ったのが「重なっている」という【アイデア】です。


ささかい「…いろんなオレンジが音合わせで重なっていく演出……ありだな」

ささかい「重ねていくオレンジ要素はオレンジ本体、輪切りしたオレンジ、スライスしたオレンジ、果実、果肉、抽象化して⚫︎⚪︎▲△(幾何学図形)とかを使えば単調にも見えないし良いかも?」


ささかい「サビの2まわし目直前のティロティロ音合わせは、オレンジの皮が重なっていって次のシーンに繋がったら面白そうかな?」


こんな感じで【アイデア】を深めて演出案を膨らませ、メリハリのついた音ハメ演出を考え続けます!

他にどんな演出に膨らんだか、一部をまとめます。

◾️演出案
・オレンジ+切る+水々しさ:オレンジを切って果汁が出る
・ザラザラ感+新聞:アナログ風テクスチャ
 ┗ アナログがあるならデジタルも採用できるのでは?→した
・スライスオレンジ+売る:スライスされたオレンジ敷き詰め
・明透+絞る+果汁:明透がオレンジを踏み潰すして果汁ブシャー
・明透+果汁:明透がオレンジジュースに沈む


演出案が出来たので【デザイン】部分を詰めていきますが、今回ここは省略します。演出案のイメージをそのままグラフィック化したものがほとんどですからね。リファレンス等が気になる方は僕へ直接聞いてください。決してここまで書いて疲れたからとかではないです。

あとはゴリゴリ作業です!背景映像を先に制作し音ハメポイントと魅せ方を確定、それに合わせるようにリリックモーションを制作します。地道に一個一個愛を込めてキーフレームを打ち続ければ完成です!




■完成

そんなこんなで、色々考えてグラフィックや動かしを詰めて完成させました!

冒頭にも貼りましたが、完成した「オレンジ」を改めてご覧ください。「オレンジの」ライブ映像はYouTubeで公開されており、運営様には本当に感謝しかありません。


【構成】で想定した通り、明透が歌っていないパートで激しく背景演出を作ったことで前にいる明透がより目立ったように感じます。音ハメタイミングと背景映像に合わせて照明さんも色を合わせていただけていて超感謝です!


リリックデザインやカメラアングルが良いということもあって、歌唱パートも前後の演出でうるさくならず明透に注目がいくようになってますね。JEFF99さん、カメラマンさんありがとうございます!




■まとめ

以上が「オレンジ」の制作メイキングでした!思っていた5億倍文章を書いてましたが、頭の中がすごく整理できたのでスッキリしました。

スムーズに思考を進めているように見えるかもしれませんが、実際にはこんなにスムーズにできません。【構成】と【アイデア】を常に行ったり来たりして、【デザイン】まで行ったけど方向性違うと感じて最初に戻ってを繰り返してます…。言うなれば「試行錯誤」じゃなくて「思考錯誤」ですね。


ちなみに、まとめなのでまとめますが、僕がやってたことを一言で5W1Hと言われています。

  • 「When:いつ」:【構成】、音ハメポイント

  • 「Where:どこで」:ライブ会場、配信視聴画面

  • 「Who:だれが」(ターゲット):明透、視聴者

  • 「What:何を」:【デザイン】、演出、パフォーマンス

  • 「Why:なぜ」:【考え方】、明透を引き立たせるため、魅了させるため

  • 「How:どのように」:【アイデア】、演出

もしかしたら使い方を間違えているかもしれませんが僕はこのイメージで作っていました。本来「Who」は主語なので「ささかい」が相応しいですが、今回は明透のライブ演出なのでターゲットとしての「Who」に設定してます。

毎回こんなことしてたら疲れるかもしれませんが、「どうしたいか」を考えているうちに自然とこうなっていくと思うので、今回の僕の制作を参考にしてもらえたら嬉しいです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
良ければ高評価・いいねなどしてもらえると嬉しいです。



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