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【制作後記】ヒスイ色のミライMV

いつか書こう……って思っていたけどずっと忙しくて書けず、GWに入ってやっと少し余裕が出来ました。
なので忘れないうちに、監督させていただいた「ヒスイ色のミライ」MVのメイキングなど書き残していこうと思います。

▼「ヒスイ色のミライ」について

「ヒスイ色のミライ」は、にじさんじ所属北小路ヒスイさんの初オリジナル楽曲で2020年12月9日に公開されました。
初配信でいきなり生歌でこの曲を披露されており、初配信のプレッシャーの中であの綺麗かつ力強い歌声のパフォーマンスに感動したのを覚えています。
作詞・作曲・編曲はのーねーむさんが担当し、以前から親交もあったのでMVを作る際にいろいろコミュニケーションを取りやすく良い感じに進められました。


▼コンセプト、初期MVイメージ

・憧れ、希望、努力、やる気、自由、可能性
・爽やかさ
・ノスタルジック
・翡翠色
■演出案
・アニ撮処理
・ハーフトーン、コミック調、アメコミ風
 ┗アメコミ風はスパイダーバースを参考に
・水玉
・モノクロ(ちょっとザラ付き)
・髪の毛、服、肌など、部分的に鮮やかなテクスチャを雑多に載せたり
・    〃     部分的にシルエット
・デジタル調
・シルエット単色、グラデ
・シルエットクレヨン(粗め)
・塗り絵、絵具でだんだんいろんな色で塗りつぶしてく(ヒスイさんのみ or ヒスイさん以外)
・縁取りブラシアニメーション
・コマ撮り風(紙を雑に切ったような縁)
・水中
・風が通り抜けていく
・逆さま
・額縁入れてズームループ
・影無し塗りのみアニメーション(フラットに魅せれると思う)

ヒスイさんへの第一印象は「可能性の広さ」でした。
色々なものへの「やる気」や「1番になりたい」という気持ちを強く感じてました。

そこから「複数の演出を使ったり、演出を畳み掛けて変えていって『1番になるための可能性を沢山秘めているイメージ』をMVにしよう」と決めました。これがMVの全体テーマです。

その考えがあった上で「こういう演出あるといいかな」というアイデア出しを思いつく限りicloudのメモ帳にまとめていました。
(上の演出案の中でも使っていないものもあります)

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▼リファレンス

・サイダーガール 「化物」、GEMS COMPANY「ゴールデンスパイス」の手描き感
・オカルティックナインOPのテクスチャ感
・nano.RIPE など

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リファレンスの選定理由としては、

可能性の広さ → イラストをいろんな魅せ方で演出したいな
自由な感じ  → 手描きエフェクトで緩さ、自由さを見せて緩急をつけたいな

という感じです。


▼イラスト/アニメーションについて

MVの要となるイラスト/アニメーション担当をしてくださったpre_sktchさん、実は僕の希望でこの方に描いてもらっていたりします。
というのも、コンセプトの「爽やかさ」「ノスタルジック」を出す為に線が細くアニメ調の絵を描ける人が良いなと最初考えていて、さらにせっかくなら多少差分アニメーションを描けると最高だな…なんて思っていました。
するとTwitterに現れたんですよ……

上の願い全部叶えてくれそうなpre_sktchさんを見つけてしまい、即「この方だ!!!」となりました。

見て分かる通り、「ヒスイ色のミライ」のメインビジュアルもこのファンアートから少なからず着想を貰っています。

MVではヒスイさんに「希望」や「1番になりたい気持ち」を持たせて演出したかったので右向きに描いていただきました。これは『機動戦士ガンダム』などで有名な富野由悠季監督の「映像の原則」という本で解説されてる有名な話のひとつです。下手/上手、左向き/右向き、動く方向などでキャラクターが所持する心情や立場に変化があり、今回はチャレンジャー精神を持たせたかったので下手側から右を向いてるような構図になってます。

想像以上に絵のアップが早くて上手くて感動していたのを覚えています。


▼コンテ

ありません。

本当は良くないんですが…、イラスト1,2枚で勝負する際は画コンテを描いたところでレイアウトや動かし方が変わるくらいなので基本描きません。

でもパートごとの字コンテはざっくりと書きます。途中で「こうした方が良いな」と思うことが結構あるので、あくまで道筋としてざっくりと。

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今見ると、公開されてるMVと初期コンテでは結構変わってて恥ずかしいですね。


◆メイキング:コンポジット準備-イラスト分け作業-

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イントロから1Aに入る音合わせカットについて、素材分けの観点からメイキング話をしていきます。4Fごとにカットを切り「アニメ撮影風→フラット→キラキラ→スポーツ感→ipod→アメコミ→次回予告」演出が連続するシーンで、視聴者を一気に引き込ませる大事なカットのひとつです。

今回のイラスト分けは、「元絵/線画/塗り/影無し塗り/影のみ塗り/ハイライト」の6通りです。

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このアニメーションは横向きループだけだと9枚、振り向き終わりまでだと28枚あるため、少なくとも6通り×28枚=168枚分素材分けしてます。

実際には横向き口元差分、後ろ姿アニメーション、駆け出しアニメーションなどもあるため、計300枚以上は素材分けしてます。端から見たら地獄だと思われそうですが、僕はこういった作業大変ではありますが実は精神統一になってたりします。

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ここから先はひたすらコンポジットです。(どうコンポジットしたかについては特別なことをしていないので省略します)

どの素材をどう変えたら〇〇に見えるか、✖✖を表現できるか」をひたすらトライ&エラーをしていきます。線色を変える、ハイライトの合成モードを変える、影をハーフトーン化させる、そもそも影を無くすなどアイデアを絞り出します。

1構図から何通りにも魅せ方を変える表現は僕が映像制作においてやりたい表現かつ得意分野のひとつなので、MVのコンセプトと相まっていろいろな表現が出来て良かったです。

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◆メイキング:手描き

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このMVの中で一番やりたかった演出のひとつ「手描き」シーンについてです。

今作はiPad ProでProcreateを使って描きました。描いたところはヒスイさんの輪郭を巡ってる線部分で、他の音符や星などのパーツはAEJuiceというエフェクトセットから使ってます。

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12枚描いて3コマでアニメーションしてます。

手描き感を強く出したかったので、太くて粗めの鉛筆ペンで2重に描いて、BGに紙をくしゃくしゃにしたテクスチャを配置しました。自由度を魅せるためにも線の描画順にあえて連続性を意識せずバラバラっとした輪郭線の描画にしてます。

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リファレンスに上げたように、サイダーガール「化物」の手描き演出をかなり意識してます。個人的にサイダーガールが好きでもあり「メランコリー」のMV演出に感動していつか手描きやろうと考えていました。今まで映像の構成的に手描きをやれる機会が無かったので今回やっと出来て嬉しいです。


◆おまけ

実はMVの右下の方に時々カット番号が載っていたりします。コミックの隅にページ番号が書いてあるような感じで情報量を増やす意識で載せてます。

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でもYouTubeのシークバーで隠れて見えてない可能性が…;;


▼終わりに

本当はpixivFANBOXで投稿しようと思っていたんですが、noteがヒスイ色っぽかったのでnoteで投稿しました。note結構良いですね。

最後にMVクレジットを載せておしまいです、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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ヒスイ色のミライ』MV
作曲/編曲/作詞:のーねーむ
ボーカル:北小路ヒスイ
ギター/ベース:湯原聡史
ドラム:香山玄季
レコーディング/ミックス:フクイタクミ
[Music Video]
監督:sskai
イラスト/アニメーション:pre_sktch

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