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広島協奏曲 VOL.2 尾道・流れ星 (4)
尾道ラーメン
11時、ラーメン店めぐりを始める。
1軒目、大亀食堂。三成にある大衆食堂へ行く。……残念っ!。日曜日は店休日だった。
そこから北へ数分の所にある味平へ行く。オーソドックスな尾道ラーメン。醤油ベース。
2件目、東珍康(とんちんかん)。超有名店で、休みの日には行列もできる。透明な油の膜と薄い色の醤油と塩ベース。
3件目、尾道市役所駐車場前の 朱 。朱華園と言う全国的な有名店が閉店した後、関係者が開店したお店。お店もまだ新しい。朱華園譲りの醤油ベース、色は薄い。
4件目、丸干し。市役所から住吉神社方面へ少し歩いた所にある。ここも行列が出来る店。餃子や唐揚げも美味い。
近くには、つた藤と言う小さなカウンターだけのお店があるが、お休み中だった。うどんと中華そば。同じラーメンスープで頂ける。
その他にも紹介し切れないくらい多数のラーメン店があり、尾道水道を挟んだ向島(むかいしま)にもいくつか有名店がある。
それぞれ、お店特有のスープで長年の信頼を得ている。
(味やスープの状態は個人的主観が入っています。悪しからずご了承ください)
「食うたあ~、、、食いすぎたあ~。」雅恵が大きくなったお腹をさすりながら唸る。
「毛利さん、妊娠ではありませんよね?」富田、ギャグのつもりで聞いた。
「え、もう?。昨日と今朝ので出来ちゃった?」ボケを返す。
「んな訳ありませんっ!。」富田、ツッコむ。
「そりゃそうです!。大きくなったのは上の方、胃袋ですんで、、、あはははっ」「ハハハハハっ」
それから毎週の様に、富田のアパートへ通う雅恵。
秋、富田所長が「サンマのおいしい季節だ。食べに行こう。」と所員を招集。居酒屋へ行く。
【所長、この後はどうされるんすかねぇ~】と思いつつ、雅恵も着いて行く。
所長や所員に、「毎日、お疲れ様です。」と言いながらビールを注いだり、焼酎をお湯割りにしたりと雅恵は世話を焼く。
ホステスの様な行いも嫌いじゃない。それで人間関係が上手く回るなら、進んで行う。
「毛利さ~ん。今度、どっか行きましょうよ~。」梶谷が酩酊状態で、擦り寄ってくる。
「あ~んもう~。!、面倒臭さ~。あっち行けぇ~!。」雅恵は半ばふざけながら、梶谷を押し退ける。畳の上を転げまわる梶谷。それを見て笑う所員。
営業所員で独身は雅恵と梶谷の二人だけ。
梶谷は雅恵より4歳下の23歳。工業高等専門学校を出て3年目。
年齢が近い事もあり、話す機会も多い。
前々から雅恵に好意を寄せてくれているのは判っている。悪い気はしない。応えてあげたい気も、たまに起きる。
しかし、梶谷は一人っ子。実家は尾道郊外の 御調町で農家、両親と同居中。
会社の飲み会の時は、ビジネスホテルへ泊まっている。
「毛利さん。今夜、泊めて~や!」と堂々と皆の前で頼んだりする性格。
周りは「泊めちゃれえや!」と囃し立てる。私は「嫌じゃっ!。乙女の貞操がっ!、、、」と笑って逃げている。
物怖じせず、明るく、一生懸命に仕事に打ち込んでいる梶谷。
【遊び程度なら付き合っても良いかな】と思う事もあるが、きっと別れる事になる。必ず。
同じ営業所の人でなければ、、、別の会社へ勤めてる人であれば、付き合っていたかもしれない。明るい年下の男の子。
富田との関係を続ける理由。
【どこか遠くへ、私を連れてって】
【引き返す事の出来ないところへ】
【すべてを捨てる事の出来るところ】
雅恵の希望をもしかすると、叶えて貰えるかもしれないという妄想があった。
【ほんまは、所長でのおても(なくても)、えかったんかもしれん(良かったのかもしれない)、、、】
雅恵は富田との関係を続けている内に、考え始めた事。
自分の願いが叶う時、富田の家族の幸せは崩壊すると思う。梶谷だった場合も同じ様な気がする。
誰かの悲しみの上で手に入れる幸せは欲しいとは思わない。
ただ、ひと時でも、夢は見させて欲しいとも思う。
傷つかない内に、終りにしよう、、、自分に都合の良い終らせ方、、、自分に向けた言い訳探し。