【エッセイ】じいちゃんのフナ
今日は「いい(11)フ(2)ナ(7)」の語呂合わせから、「いい鮒の日」だそうだ。
小学生の頃、庭には古い浴槽が置いてあって、その中でたくさんのフナが泳いでいた。
祖父が世話をしていたフナたちを、私はペット感覚で眺めていたのだが、どういうわけか日に日に数が減っていく。
「フナどうしたと……?」
眉を下げる私に、祖母は、じいちゃんの友達がもらっていったとよ、と言っていた。
そっか……と、数が減ったことにガッカリしながらも、もらわれた先で幸せに生きていたらいいなぁと思っていた、純粋だったあの頃の私。
ばあちゃん、優しい嘘をありがとう。
あの時期、祖父が頑なにくれなかったおいしそうな魚の甘露煮こそが、私がニコニコと眺めていたフナだったと気付いたのは、いつだったか。