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voice_watanabe
【エッセイ】理想の部屋は、トイレ
今日はトイレの日だそうだ。
そう聞いて最初に思い浮かんだことは、昔からトイレが好きだったということ。
こう書くと、便器が好きみたいに思われそうだが、そうではない。
正確には、壁で囲まれたせまいスペースが好きだった……のだと思う。
我が家のトイレは一畳ほどの広さだったのだが、幼い頃からトイレに座っては妄想したのだ。
このせまい部屋にすっぽり収まるようなベッドを置いて、壁をくり抜いて棚を作り、折りたたみ式の机を壁に取り付けたら、最高の部屋になる、と。
いつでもベッドに寝転がれて、寝たまま、あるいは座ったままで、必要なものにすぐに手が届くという怠惰な空間に憧れがあったのだと思う。
その理想の部屋にベストマッチだったのが、私が両手を広げると、両肘が左右の壁に触れる広さの、我が家のトイレだったというわけだ。
さすがにこの広さの部屋は実現しなかったが、ひとりがけのソファの隣に小さな机を置いて、飲み物と食べ物を準備し、箱ティッシュとゴミ箱を装備し、小説やマンガを積んで、動かない1日を過ごすなんてことはよくあった。
母からは、「また巣を作って」と笑われたものだ。
成人してからは、自宅のデスク周りがほぼ同じ状態だ。
幼き日のトイレでの妄想は、今も私の生活スタイルの根幹をなしている。