虫食いのある野菜は良い野菜?
今回は、野菜の話です。
皆さんは、「虫食いのある野菜は良い野菜」と聞いたことがありませんか?
これは、虫食いのある野菜は農薬を使っていないため良いものだと言う意味ですよね。
しかし、実はそれは間違いです。
虫食いのある野菜は必ずしも良い野菜とは言えない理由を、次の順序で話します。
1.野菜に虫が来る理由
2.肥料による害
3.肥料と農薬の関係
4.まとめ
1.野菜に虫が来る理由
畑にいる虫たち(害虫)は、なぜ野菜に寄って来ているのでしょうか。
野菜は植物なので、光合成と根から水分や栄養を吸うことで成長しています。根から吸っている、野菜にとっての3大栄養素は窒素(N)、カリウム(K)、リン(P)です。
虫のお目当ては、野菜が根から吸った窒素(N)です。
なぜ窒素(N)が虫にとって必要かというと、窒素(N)と炭水化物(CHO)でアミノ酸(CHON)を作ることができ、アミノ酸は結合してタンパク質となるからです。
タンパク質は体を作る細胞のもとなので、短い寿命で子孫を残さないといけない虫は常にこれを探しています。
また、植物は光合成によって酸素だけでなく炭水化物も生成しているので、虫は植物である野菜を食べることで、炭水化物も窒素も摂取できていたんですね。
野菜にとっては光合成によって生成される炭水化物と根から吸っている窒素などのバランスが良ければ、元気に育つ事ができます。
しかし、野菜の成長を促すために人為的に投入された肥料(主成分は窒素、カリウム、リン)によってこのバランスは崩れ、窒素過多になることがあります。
そうすると、窒素は虫の好物ですから、その窒素を目当てに虫がたくさん集まってきてしまいます。
つまり、虫の寄ってくる野菜は農薬は使っていないけれど窒素過多と言えます。
2.肥料による害(窒素残留)
では、窒素過多の野菜は虫に食われる以外に何がいけないのでしょうか。
肥料に含まれる窒素は様々な種類がありますが、植物が吸収できる窒素は主にアンモニア態窒素と硝酸態窒素の2種類なので、分解されたり酸化したりしてその状態になります。稲など一部の植物はアンモニア態窒素を好んで吸収しますが、多くの植物はアンモニア態窒素が更に酸化してできた硝酸態窒素を吸収するので、肥料により窒素が過剰に供給された野菜には硝酸態窒素が硝酸塩(硝酸イオン)となって残留してしまいます。
残留した硝酸塩は人間にとって有害です。体内で亜硝酸塩に変化し、様々な害をもたらします。具体的には、発がん性のリスクを高めたり、頭痛や目眩、呼吸を引き起こすメトヘモグロビン血症のリスクを高めたりします。
1956年にアメリカで起こった「ブルーベビー事件」では大量に硝酸イオンの残留した葉物野菜を食べたことで幼児が死亡したと報告されています。
残留窒素の多い葉物野菜は、濃い緑色をしているので、実際に野菜を選ぶ際は注意してみてください。
3.肥料と農薬の関係
ここまでの内容から、肥料を撒くから虫が来るという仕組みがわかったと思います。
そして、虫が来るから、農薬が必要になります。
ならば、そもそも肥料を撒かなければ虫が来ないので農薬も不要になるのではないでしょうか。
無農薬野菜に虫がついているのは、肥料は撒くけれどそれによって集まってきた虫を殺す農薬を使っていないためです。
自然栽培では、肥料を使用しないので無農薬なのに害虫が来ません。
この無肥料無農薬の栽培方法は、害虫が来ないだけではなくもちろん人体にも優しい農法です。
肥料にも農薬にも頼らない、それが理想的な農法だと私は思います。
4.まとめ
虫食いのある野菜は必ずしも良い野菜とは言えないことが、伝わったでしょうか。
私は、正しい知識が広まって、「虫食いのある野菜は良い野菜!」というような間違いに多くの人が気づけるようになると良いなと思っています。
今回の記事は、普段聞き慣れない物質の名前などが続出し、わかりにくい部分もあったかと思いますが、これを機に肥料によるリスクにも目をむけていただけると幸いです。
また、スーパーで葉のもの野菜を選ぶときは色の濃いものは避けるなど、日常生活でも活用できそうなことはぜひ取り入れてみてほしいです。
左が自然栽培の大根の葉。右はそうでないもの。
左の緑色は「爽やかな緑」右は「詰まった緑」という感じが個人的にします。肥料によって葉が大きく育っているので右の大根の葉のほうが見栄えはしますね。葉の枚数はどちらも同じだそうです(・o・)!
見栄えを取るのか中身を取るのか…正しい知識を持っているかどうかでその選択は変わってきそうですね。
ちなみに、自然栽培の葉のもの野菜を日光に当てると光が透けて黄緑色に光ります。
そんなお野菜がもっと身近に出回ってほしいです。
私はそうなるように、これからも自然栽培の農家さん達を応援します。