性教育YouTuberシオリーヌさんが性教育ドラマに込めた思い 「情報を若い人に届けることが大人の責任」
※サムネイルは『ユースクリニックへようこそ ここはあなたのための病院です』より
初出:wezzy(株式会社サイゾー)2021.10.03 18:00
助産師・性教育YouTuberとして活動しているシオリーヌさん。
9月29日には新しい試みとして、自身のYouTubeチャンネルでドラマ「ユースクリニックへようこそ ここはあなたのための病院です」の公開をスタート。毎日1話ずつの公開で、10月3日20時に最終話が公開される。
シオリーヌさんにドラマ制作の背景や、本作に込めた思いについて伺った。
シオリーヌ(大貫 詩織)/助産師・性教育YouTuber
総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟にて勤務ののち、現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。 性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。 オンラインサロン「Yottoko Lab.」運営。 著書「CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識」(イースト・プレス)、「こどもジェンダー」(ワニブックス)
ユースクリニックを舞台に若者が悩みを解決するドラマ
——ドラマの概要についてお伺いします。
若者専用の医療機関である「ユースクリニック」を舞台に、思春期の性や体の悩みに寄り添った全5話のドラマです。性やパートナーシップなど、さまざまな悩みや困難を解決する一歩として、高校生がユースクリニックに足を運びます。
私が原案・監督を務めていますが、ドラマ制作は素人ですので、プロの力をお借りしています。脚本は『サレタガワのブルー』(MBS・TBS)の舘そらみさんにご担当いただき、展開やキャラクターへの要望を物語として形にしてくださりました。
また、私の「SxX EDUCATION」「CHOICE」のミュージックビデオ制作を担当してくれた、映像クリエイターのしみがドラマ制作のノウハウを持っており、画角や繋げ方のアドバイスをくれました。さらに、出演してくださっているのは、プロの役者さんたちです。
——「ユースクリニック」という言葉を聞いたことがない人も多いと思います。どのような場所なのでしょうか。
性別問わず、地域の若者たちが心・体・性に関する悩みを気軽に相談に行ける医療機関です。スウェーデンの取り組みが有名で、スウェーデンでは国内に約250ケ所あり気軽にアクセスできるので、何か困ったことがあればユースクリニックへ行くことが習慣になっています。
一方、日本ではまだまだユースクリニックの存在は認知されておらず、全国で数えるほどしかありません。日本にあるユースクリニックの一つである「スマルナ医科歯科レディースクリニックOSAKA」には今回の撮影にご協力いただき、実際に働いている助産師さんからヒアリングし、相談や声かけについてアドバイスをいただきました。
——本作では具体的にどのようなテーマを取り上げているのでしょうか。
妊娠不安・緊急避妊・性に関する話のタブー感・マスターベーション・男らしさ/女らしさ・恋愛におけるジェンダー役割・生理・ホモソーシャルなど、私が伝えたいことを詰め込んでいます!
パートナーとジェンダーの話をすることの難しさや、娘が「婦人科に行きたい」と言った際の親の障壁といった、かなり具体的な内容も取り入れていますし、話の主題ではないものの、レズビアンカップルが自然に登場するところもこだわったポイントです。
最終話のメインテーマは「性的同意」で、パートナー間のコミュニケーションや、「自分の体のことは自分で決める権利がある」といった内容が含まれています。
テーマの選定は私が絶対に入れたかったこと、ユースクリニックで働いている助産師さんからのヒアリング、また私のオンラインサロンのメンバーから意見を募りました。特に「性的同意は『ムードがなくなる』と言われるので、胸がキュンとする性的同意のシーンがほしい」という意見は多く、力を入れたポイントですので楽しみにしていてください!
「大人が教えられなくてごめんね」若者に情報を届ける大人としての責任
——今回なぜドラマを作られたのでしょうか。
YouTubeでの活動を始めて2年半以上経過し、多くの方に動画を見ていただいたり、チャンネル登録者も14.9万人(9月28日現在)になりました。でも、自分としてはまだまだ足りない!という思いです。
確かに「性教育は大事だよね」という雰囲気は広まりましたし、性の話を特別扱いせず、普通に学んでいこうという発信を見るようにもなりました。一方で、性教育への意識が高まっているのは、一部のアンテナを張ってる人の話であって、依然として性の話にアクセスする機会がない人も多い。日頃発信している授業形式の動画だけでなく、色々な形で情報をお伝えするチャレンジをしたいという思いがあります。
また、昨年10月に「Active-Bystander=行動する傍観者」という啓発映像を公開した際の反響が大きく、私のチャンネルを一度も見たことない人からも感想をいただきました。映像やエンタメの影響力の大きさを実感し、今回はドラマという手のかかる作品に挑戦してみました。
——「まだまだ足りない」という言葉があったように、ドラマ制作、書籍刊行やVoicy、TikTokなど活動の幅をどんどん広げていらっしゃいます。大変なことだと思うのですが、新しいことを始められるその原動力はどこにあるのでしょうか。
予期せぬ妊娠や、一人で出産して赤ちゃんを遺棄してしまうなど悲しいニュースを見ることが珍しくなく、まだまだ社会全体に性教育が行き届いていないと感じます。
性の知識は自分の人生や体、大切な人を守っていくために欠かせないものです。にもかかわらず、普通に生きているだけでは教えてもらう機会が得られず、自分から情報を探さないと辿り着けないのはおかしいですよね。情報を若い人に届ける努力をすることが、大人としての責任だと私は思っています。
今回のドラマの第1話では、助産師さんによる「大人が教えられなくてごめんね」というセリフがあるのですが、私の中に常にそういう気持ちがあります。若い視聴者さんからの悩みを聞いて「本当にごめんね」と思うことが多々あるんです。
色々なことに挑戦することで、どれか一つでも若い世代に偶然見かけてもらうことができたら……。効果がありそうなことはなんでもやってみよう精神で、世の中にさまざまな種を蒔いています。
——最後にドラマを通じて伝えたい思いと、読者へのメッセージをお願いします。
先ほどお話したように、日本にはまだユースクリニックは数えるほどしかありません。本作を通じてユースクリニックがどういう場所なのか知っていただき、大人側も「日本にもっとあったらいいな」と思う人が増えてほしいですし、「作ってみようかな」と考えるきっかけになったらという思いも持っています。いずれは全国各地にユースクリニックができたらと。
本作は性教育のドラマとして作ってはいるものの、最後まで見ると一人ひとりの生き方について考えるドラマになっています。1話は15分弱と気軽に見れる長さですので、学校の授業で流していただけたら嬉しいです。
「自分の体は自分のもの」「自分の人生を決める権利は自分にしかない」「嫌なことは嫌と言っていい」「周りに助けを求めていい」——これらのことは日々改まって考えることはないかもしれませんが、若者が生き抜いていく際に、お守りとして持っておいてほしい言葉です。本作を通じて、自分の「これから」を考えるきっかけにしていただけたらと思います。
※情報は初出掲載時当時のものです。