キャップ

僕は帽子を着用する人間の一人である。赤いadidasのキャップを6年ほど。

今日、その帽子をなくした。
教室を出た僕は、リュックの中に帽子と腕時計(帽子の凹みでつつむように)を入れて、ファスナーをしめずにふたを被せるようにして部室へ向かった。
活動中しばらくして、リュックの周りはもちろん部屋内にも、帽子と腕時計がないことに気がついた。

確かに部屋に着いた後、鞄からそれらを取り出した記憶があるのだが、いくら探しても、帽子は僕の視界に現れることはなかったのである。

しかも今日は修了式兼保護者会である。学校内の通行はかなり多い。もし教室から部室の間でなくしたとすれば、学校内ながら見つかる可能性は稀有であるといえよう。無くしたものが2つであるというのも厄介だ。

かくして僕は今、頭と左手首をスースーさせながら電車に乗っている。どうしたものか。次の登校は4日後の25日、部活がある日だ。それを過ぎれば年が明けるまで学校に行くことができない。今僕ができるのは、ただただ学校からの連絡を待つことだけである。