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トクトメノコト ⑦

返事をしない長男

この日、私は体調が悪かった。
仕事を終えてフラフラの状態で帰ってきて、家の片付けとご飯の支度と洗濯と子供たちのお手紙の処理など、家事が山積みだったので子供たちに協力を要請した。

「お母さん今日は体調が悪くて、ご飯は頑張って作るから、出来れば今からお片付けとお洗濯を手伝ってほしいんだけど、協力をお願いできますか?」と伝えた。
長男は私に一瞥をくれたあと、黙ってゲーム画面に視線を落とした。
次男もそれを見習った。

最近このように、長男が返事をしないことが増えていた。
返事をしないことはとても悪いことだから、親が望む返事なんてしなくていいんだから、自分のその時の気持ちで必ず返事はしなさいと繰り返しほぼ毎日子供たちに伝えてきた。

返事をしない時の特徴として、単純な本人の意志を確認する問いかけや、親が望むであろう答えを自分がしたくない時が多いので、良い子であろうとするがあまり返事が出来なくなっているのだろうとは推察していた。
しかし、これでは本末転倒が過ぎる。

良い子でいたいがあまりに返事をしないという一番の悪手を選んでしまっていることになる。
そもそも私としては望む答えなんて無いのだ。
子供たちが今何を考えて何を思って生活しているか聞きたいだけなのだから正解なんで無いのである。

これはほんまになんとかしなアカンと思い、子供たちに招集をかけた。
「今からあなたたちに大事な話があります。真剣な話だからゲームを止めてこっちにきて座ってください。」

母から子供たちへ伝えたいこと

母:まず、なんで今呼ばれたかわかりますか?
兄:お手伝いをしなかったから
母:違う、お手伝いしないことで怒ったことはお母さん一度もないよ
兄:お返事しなかったから
母:そうだね、じゃぁなんでお返事しないのが悪いかわかる?
兄:・・・・・・

母:そもそもお母さんの話は聞こえていましたか?
兄弟:聞こえてた
母:では、なぜお返事をしなかったのですか?
弟:ごめんなさーい
母:ごめんなさいは返事になってない。謝って欲しいわけじゃないので、質問に答えてください
弟:・・・お兄ちゃんが返事しなかったからいいかなと思った

母:なんでお兄ちゃんが返事しなかったら君が返事しなくてもいいことになるの?
弟:ならない、ごめんなさい
母:ならないってわかるんだったら次からどうする?
弟:お兄ちゃんがお返事してなくても僕はちゃんとお返事する
母:では次から君はそうしてください。お兄ちゃんはどうですか?

兄:特に理由はないです
母:なるほど、なぜ返事をしないのかと注意を受けたのは何度目ですか?
兄:何度も注意されてる
母:何度も注意されていることなのに、特に理由もなく返事をしないという選択をあなたはするんですか?

兄:・・・・・・
母:では、お母さんもあなたが話しかけてきた時に返事をしなくてもいいですか?
兄:イヤや
母:それはなぜ?
兄:返事してほしいから
母:なぜ返事してほしいの?
兄:話がしたいから

母:じゃぁなんであなたはお母さんに返事しないの?話がしたくないから返事しないってことじゃないの?
兄:ちがう、話がしたくないんじゃない
母:じゃあなんで?
兄:どう返事したらいいかわからないから

母:手伝ってくれますか?に対する返事は、いいよ、か、イヤだよ、しかないやん。良いかイヤかはその時の自分の気持ちなんやから自分しかわからんことやろ?なんで返事がわからないの?
兄:さっきは、お手伝いがイヤなわけじゃないけど今はちょっとって思った
母:それ、そのまま言うだけでいいんちゃうん?
兄:そう思う
母:なんで言わんかったん?

兄:お母さんしんどそうやったから手伝った方がいいんやろうなって思って
母:でもお手伝いよりゲームの気持ちやったんやろ?じゃあそれでいいやん。今はゲームしたいって返事しても絶対に怒らないけど、返事しなかったら怒られるねんで。せっかくそんな優しい気持ちをお母さんに持ってくれてるのに、返事しないほうが損するやろ?
兄:そう思う

母:お母さんは君たちにイヤイヤ家のことをしてほしくないから、お母さんが体調悪くても嫌な時はちゃんと断って欲しい。でも返事が無かったら君たちの気持ちもわからないし、お母さんは単に家族に無視されてる人になるやろ?君たちはお母さんに無視されて嬉しいか?
兄弟:悲しい!ぜったいに無視されたくない!
母:お母さんだって同じやで?お母さんも家族に無視されたらめちゃくちゃ悲しいし辛い。君たちがやってるのはそういうことやで。
兄弟:(号泣して)ごめんなさーい!!

お母さんのことを思いやってくれて今まで返事が出来なかったのはよくわかったから、次からはお母さんのことを本当に思ってくれるならお母さんにとって都合の悪い返事でもいいから何か気持ちを聞かせて欲しいし、二度と無視しないでねとお約束をした。

その後の話

お手伝いしてくれる人ー?と聞いたら、今のバトル終わるまで待ってー!とか、今日はお手伝いしたい気分じゃないけどいいー?とか言ってくれるようになった。
お手伝いを募らなくても私が家事をしていたら何か手伝うことある?と自分から聞いてくれることも増えた。

次男も僕はお手伝いするーと言ってくれたり、僕は今日はやらなーい!と言ったり、お兄ちゃんの返事や行動とは別に自分の気持ちとして真似っ子ではない返事をしてくれるようになった。

今日のご飯何食べたいですかー?についても無限の可能性の中から自分で選択肢を作るのが苦手な長男は、何ができるか教えて?とこちらに選択肢を出してもらった上で、その中から一番食べたいものを選ぶということをしてくれるようになった。

優しすぎるがゆえの長男の返事をしない問題は無事に解決を見たと思う。
きっとこれから成長していくにつれて色んな問題が起こるのだろう。
毎回無事に解決とはいかないことも出てくるだろうけど、家族としての心地よい関わり方を都度見つけていけたらいいなと思う。


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