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006 相続の高齢化

前回は、遺産分割協議においては、調査や相続人間における意見の調整を行うだけでも数ヶ月があっという間に過ぎてしまい、多くの相続において、遺産分割協議を早々に完了させることは簡単なことではないということを述べました。今回は、遺産分割協議の完了を難しくしている事情について、さらに述べたいと思います。平成28年12月19日の判例によれば、遺言がない場合、相続預貯金を取得する人を決定するためには、相続人全員参加による遺産分割協議を完了させなければなりません。ここで立ちはだかる壁は「相続の高齢化」です。人生100年時代とも言われるようになりました。亡くなるのが80歳代、90歳代となりますと、相続人の中にも80歳代、90歳代の人が含まれていることが珍しくありません。遺産分割協議を完了させるためには、すべての相続人が、遺産分割協議の内容や相続人間における合意内容を理解できなければなりませんが、高齢化やご病気等により認知判断能力を低下させてしまっていると、この遺産分割協議の合意形成に上手に加わることができないということが生じます。遺産分割協議は相続人全員参加による合意形成ですので、この合意形成に上手に加わることができない相続人がいると、そこで立ち行かなくなってしまうのです。このような問題を解決する手段としては成年後見人等を選任するという方法がありますが、この解決方法では、また、新たな悩みも生じ、さらに時間を要することにもなります。遺産分割協議においては、相続財産の調査、相続人間の意見調整、相続の高齢化問題、これらの問題が立ちはだかり、多くの相続において、遺産分割協議を速やかに完了させることは至難の業となっているのです。

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