015 精度の高い財産の棚卸し
前回は、自筆証書遺言作成の具体的な手順について述べました。そして、自分の死後における円滑な相続手続きを期待するためには、精度の高い財産の棚卸しを行い、精度の高い財産目録を作成しておくことが有効であることを述べました。今回は、精度の高い財産の棚卸しを行い、財産目録を作成することについて、さらに述べたいと思います。誤解を恐れずに言えば、相続手続きにおける「難敵」は金融機関と法務局(不動産登記)です。法律及び判例に則って相続手続きを実践していると言えばそれまでですが、融通が効かないなかなかの「難敵」です。この「難敵」を打倒する最も効果的な武器が、精度の高い財産の棚卸し、そして、精度の高い財産目録です。対金融機関においては、遺言を作成する前に金融資産及び金融機関を整理することが効果的です。例えば、妻に相続させる金融資産はA銀行、長男に相続させる金融資産はB銀行といった具合に、財産を承継させる相続人によって金融機関を分けておくと相続手続きがシンプルになります。同じA銀行の中で、定期預金1と定期預金3は妻に、普通預金2と定期預金4は長男に、といった具合では、A銀行の手続きに妻も長男も出向かなければならず、金融機関に対して提出する相続手続依頼書の記載内容もやや複雑になることが想定されます。妻はA銀行、長男はB銀行といった具合に相続人ごとに金融機関を分けておけば、A銀行の手続きには妻が、B銀行の手続きには長男が出向けばよいことになります。この整理の際、使用頻度の低い金融機関の預金口座は解約し、取引金融機関を整理しておくのもよいと思います。次に、対法務局(不動産登記)ですが、不動産をもれなく把握することが肝要です。不動産が自宅不動産のみである場合は大きな問題になることは少ないのですが、自宅不動産の他に、別荘であったり、投資用不動産(賃貸用不動産)であったり、複数の不動産を所有している場合には、各拠点ごとに土地や建物を正確に把握しておく必要があります。見た目にはひとつの土地も、登記記録上は2つ、3つ(2筆、3筆と数えます)に分かれていることがあります。また、土地が接している道路が私道で、その私道を所有していたり、その私道の持ち分を所有していたり、また、私道も2筆、3筆に分かれていることがあります。道路部分は固定資産税の課税対象にならないため見落としがちです。古い取引関係書類や権利証等もよく確認する必要があります。
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