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017 自筆証書遺言保管制度

前回は、自筆証書遺言について、遺言者の死後において検認の手続きが予定されていることが、自筆証書遺言による円滑な相続手続きにブレーキをかけてしまっている側面が否めないことを述べました。今回は、自筆証書遺言の検認の手続きを不要とする法改正について、述べたいと思います。近年の法改正により、法務局における自筆証書遺言保管制度が、2020年7月1日から、施行されました。この制度は、自筆証書遺言を法務局が保管してくれるという仕組みですが、法務局において自筆証書遺言が保管されることにより、遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿等のおそれはないと考えられることから、この制度を利用した自筆証書遺言については死後の検認の手続きを不要とする、という仕組みになっています。そして、この自筆証書遺言保管制度を利用することにより、法務局において遺言書が保管される際に、最低限ではありますが、形式上の不備がないことを法務局において確認してもらうことかでき、また、遺言者の死後における検認の手続きを要しないことから、公正証書遺言と遜色のない、円滑な相続手続きの実現を期待することができるといえます。私は、かれこれ20年にわたり相続に関する問題解決の仕事をしてきており、遺言書の作成は相続対策における最重要ポイントと考えていますが、この制度の利用を多くの方に推奨したいと考えています。なお、自筆証書遺言に関する法改正(本稿012)、自筆証書遺言作成の手順(本稿014)については、既に述べました。ところで、このような法改正により自筆証書遺言の利用価値が高まっているにもかかわらず、なお依然として、公正証書遺言を推奨する専門家(と言われる人々)が多いように思いますが、私は、反論します。なぜならば、専門家(と言われる人々)による部外者任せの相続は、きっと、後悔することになるからです。私は、相続を、自分の手に取り戻す、家族の手に取り戻すことを推奨しています。そのための方法としては、公正証書遺言よりも自筆証書遺言のほうがはるかに優れているからです。

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