012 具体的な対応策は自筆証書遺言
前回は、相続対策における本人の責任について述べました。部外者任せの相続は、きっと、後悔しますので、相続を、自分の手に取り戻す、家族の手に取り戻すことを提唱しました。今回は、その具体的な対応策である遺言について、さらに述べたいと思います。遺言書の作成方法としては、民法により、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方法が定められています。秘密証書遺言という遺言書の作成方法は、法律の学習としてはなかなか興味深く、自筆証書遺言と公正証書遺言のいいとこ取りのような仕組みなのですが、いいとこ取りは、反面、悪いとこ取りである側面も否めず、結果として中途半端な特徴となり、利用しづらいということでしょうか、秘密証書遺言という遺言書の作成方法を選択する人は極めて少数派です。実際に作成されている遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれかといっても過言ではありません。私は、かれこれ20年にわたり相続に関する問題解決の仕事をしてきており、長らく、遺言書の作成方法としては公正証書遺言を推奨してきましたが、近年の法律の改正を踏まえ、自筆証書遺言を推奨することに意見を変えました。私が意見を変える起因となった法律の改正は2点ありました。1つは、自筆証書遺言における財産目録をパソコンで作成できるように法改正がなされたこと、もう1つは、自筆証書遺言を法務局において保管する法改正がなされたことです。そもそも、私が、長らく、公正証書遺言を推奨してきたのは、間違いのない(瑕疵のない)遺言を作成することができ、相続開始後の円滑な手続きを期待することができたからです。言い換えれば、自筆証書遺言では、間違いのある(瑕疵のある)遺言になってしまう懸念、相続開始後の手続きにおいて支障をきたす懸念があったからです。このような懸念が、この度の法改正により、かなり払拭できるようになりましたので、部外者の過度な関与を必要としない、不必要な高額な費用を必要としない、自筆証書遺言を推奨することに意見を変えたのです。話が脱線してしまいますが、近ごろ私が感じていることとして、本人が真剣に考えて、本人が主導して何か行動を起こそうとするとき、高額な費用はかからないということです。ITを使いこなすことができる周囲の助力を借りれば、多くのことは、高額な費用をかけずに実践することができると思います。高額な費用がかかるということは、部外者が過度に関与している証左であり、それは本人のためではなく、その部外者のビジネスになっているということではないでしょうか。
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