米国Discovery対応として社内の電子データは日常的に定期的かつ短期に消去しておくべきか?
米国Discovery対応として社内の電子データ(電子メールのデータ、等)は日常的に定期的かつ短期に消去しておくべきとの考え方がある(もちろん、米国訴訟が合理的に予測できた時点からは関連データの消去はできない)。
このような考え方は、米国訴訟が開始すると自社にとって不利な情報も含めすべての関連データを提出しなければならなくなることを踏まえ、訴訟になる前に日常的に定期的かつ短期(2~3年程度)に社内の電子データを消去しておこうというもののようである。そうしておけば、訴訟になっても存在しないデータはそもそも提出できないから、自社に不利になるデータの提出を免れるというということなのであろう。
しかし、当然のことであるが、社内のデータには訴訟において自社の立場をサポートするデータも多数含まれているはずである。日常的に定期的かつ短期に社内の電子データを消去してしまうと、このような自社にとって有利なデータの提出もできなくなってしまう。個人的には、このことによる不利益の方が大きいと思う。
日常的に定期的かつ短期に社内データを消去しておくとの対応をとるかどうかは、要は、自社に対する信頼感があるかどうかによるのではないだろうか。
自社に対する信頼感があるなら、自社を不利な立場に追い込む情報があり得るリスクよりも、自社の立場をサポートする情報が消失してしまうリスクを重視し、このような対応はとらない方が良いと思う。