米国特許訴訟の訴状が国際宅配便で届いたら?
米国特許訴訟の訴状が国際宅配便で届くことがあります。このような訴状の送付が法的に有効な送達の方法なのかは議論があるようです。
訴状の外国への正式な送達手段は、ヘーグ条約に基づく送達です。ヘーグ条約に基づく送達の場合、米国の特許権者(原告)→在米日本大使館→日本国外務省→日本国最高裁判所→日本の管轄地方裁判所→日本の被告企業という流れを辿って訴状が送達されるようです。この場合、米国の特許権者が在米日本大使館に訴状を持ち込んでから日本の被告企業に訴状が送達されるまで60日~70日程度かかるようです。
そこで、訴状を検討する時間と答弁書提出期限をかせぐために、国際宅配便による送達は無効でありヘーグ条約に基づく送達を求めることを自社の代理人を通じて原告の代理人に伝えてもらうことも考えられます。
ただ、外国への国際宅配便による送達も、いったん被告企業が受け取ってしまうと有効となるとの見解もあるようです。また、自社の米国子会社が共同で提訴されているケースでは、少なくとも米国子会社への送達は早期に有効になされているので、(日本にある)自社に対する送達の有効性だけ争っても、米国子会社の訴訟手続は進行を開始してしまっているので、あまり意味がありません。
そこで、妥協策として、国際宅配便による送達を有効なものとして受け入れることと引き換えに、答弁書提出期限を、米国子会社の答弁書提出期限もあわせて、(通常合意される延長―30日程度?―よりも長く)50日程度延長することで原告と合意することが行われることも多いと思います。