士業の仕事。理論と実務。
練馬の税理士の渋谷です。
税理士の仕事において、「理論」と「実務」は不可分の関係でどちらも重要ですが、もしどちらかしか取れないとしたらどうでしょうか。
ものすごく極端な話ですが、以下の2人の税理士がいたとします。
実務しかできず理論を全く知らない税理士
理論しか知らず実務を全く知らない税理士
日本にこの2人しかおらず、どちらか1人しか選べないという究極の選択を迫られたとしたら皆さんだったらどちらを選びますか?
私だったら苦渋の選択で2を選びます。
イメージ図にするとこんな感じ。
赤い色の「結論」=「ある論点・状況において税理士として出した最善の結論」、右のほうにある鉄棒みたいなもの=理論、と仮定します。
1は上記↑のような状態です。
一方で2は以下↓のようなイメージ。
昔在籍していた職場で、「前例に倣ったり、『いつもこうやっているから』のような根拠薄弱な理由で進め方を決めては、『専門家』ではなく『事務職』だ」という公認会計士の先生がいました。
事務職の方々に失礼なような気もしますが、一般的に専門家の方が単価が高いのだから、その先生の言わんとしていることも理解できます。
1は「職業専門家が業務をこなしている」というよりは「その仕事をしばらく続けて、慣れれば誰でもできることをやっている」状態だと思います。
つまりわざわざ高い単価を払ってまで職業専門家に依頼する必要はないことかと。
だからこそ、選ぶとしたら2かな~と思います。
究極的な話でいえば、仮に裁判になったときに1のスタンスでは簡単な反論すらできないのではと思います。
繰り返しますが、士業の仕事において理論と実務は一体不可分の関係なので、現実にはこのような両極端な人はいません。
税理士だろうが税理士事務所の補助者だろうが、実務の現場では常に調べたり、根拠を探したり、ロジックを組み立てたり、先例を参考にしたり、社内で議論したり、といったことが日常的に行われていますので、両者を切り離すことは不可能です。
また、本コラムを読んで頂いているのが税理士業界外の方だったときのために念のため補足しますが、実務に寄っている=税法上のグレーゾーンを攻めている という意味の例えではありませんのでご注意ください。
税法に限りませんが、本来は実務と全くギャップが生じないように理論が作られている状態が理想的ですが、現実社会で起きること全てを想定して理論を作るのは現実的に不可能です。
その ギャップ=答えのない状況 を扱うとき、どのようなムーブをするか(例「こういう前例があったから今回もそれに倣おう」のようにボヤッと進めてしまうのか、「どういう根拠に基づいてどのような選択肢が取れるか?」を考えるのか、など)、という意味の例え話です。
税金というものは一種の「危険物」であり「理論から離れること」=「良いこと」ではありませんので…。離れれば離れるほど客観性からどんどん遠ざかり、「埋まっている地雷」がどんどん大きくなっていきます。
外からはなかなか業務内容が見えにくい業界かと思いますので、あまり税理士業界になじみのない方や現在はじめて顧問税理士を探している方にとって少しでもイメージ付けに繋がれば幸いです。