【毎週ショートショートnote】「カミングアウトコンビニ」(410字)
コンビニの店員は人間扱いされない。
小銭を放られるなんて当たり前。レジ打ちが遅いと舌打ちされるし、重大な秘密のカミングアウトだってされる。
当局が目を光らせて秘密を話す場所がないのは分かるが、このジョージ・オーウェルも真っ青な超監視社会において、一方的に秘密を告げられるのがどれだけストレスになるか少しは想像してみてほしい。
当局はSNSにデマを流すバイトを大量に雇っている。
田中某が国家転覆を企んでいる。
総統は実はヅラである。云々。
ときに前に並んでいた人がつぶいた秘密に対し、後ろに並んでいた人がコメントを残すこともあり、私はツイッターかと突っ込みたくなる。
だが私はこの職業にやりがいを持っていた——。
※
「お疲れしたー」
私はコンビニを出るとすぐに諜報員に電話を掛けた。
「今日密告するのは三人ですね。特徴は……」
コンビニの店員は人間扱いされない。秘密を預かるのにも漏らすのにもうってつけの職業だろう。
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