肛門に鉄の棒突き刺されたみたいなあの日
せつ子初めての入院は、24歳とかそこらの乙女の時でしたでしょうか。
ある時自宅のトイレにて、それはもう突然に、未だかつてない腹痛と気持ち悪さと息苦しさに襲われて、パンツもあげられぬまま部屋に踊り出て、はぁはぁしながら私は倒れました。
はぁはぁしていると、段々と縮こまり、シャキーンとした状態でどんどん固まり動かなくなっていく手足。
何これ何これ死後硬直?!死後硬直なの?!
パニック!せつ子パニック!
舌も呂律が回らなくなっていましたが、当時の同居人になんとか叫びました。
「救急車!救急車呼んでぇっ!」
ドラマみたい。下半身丸出しだけどドラマみたい。
救急車から担架で病院に運ばれて、注目されながら待合室を横切って、内科で診察された結果、
「うーん、特に異常ないですね」
痛み止めをもらって帰るせつ子。
救急車呼んだことが恥ずかしい。申し訳ない。
でもその後、数日経ってもお腹は痛い。
歩いて振動を与えると痛い。
まあでも、気のせいかな。
当時私はかなりの貧乏暮らしをしていて、アパートは駅やスーパーから徒歩25分くらいの場所にあり、でも自転車があるし、自転車で何でも運べることを自負していました。
その日も自転車で、物干し竿だったか何か長い物を自転車のカゴに載せて大道芸のように運んでいましたところ、ちょっとした段差に来るたびに、肛門からお腹にかけて、鉄棒を突き刺されたような痛みが。
気のせいじゃない…痛い…せつ子どうしても痛い…
せつ子、もう一度病院、行く。
同じ病院で痛みが引かないことを伝えると、産婦人科を紹介されました。
もはや座っているだけでも痛いのに、人が溢れていて4時間待ちの産婦人科。痛いのに待たされ過ぎてイライラ。
隣に座ってる皺が多めの80代くらいに見えるおばあちゃんが、「子宮健診、問題ないといいけど…」と呟いてるのを聞いて、「なんで?!なんで?!おばあちゃん子宮もう良くない?!」と、思わずお年寄りを心の中で悪く思ってしまったせつ子。
やっとこさ順番が来て、レスラーの親分みたいな先生が診察してくれました。
と、突然看護師に怒り出すレスラー。
「なんで早く通さないんだ!手遅れになるところだ!」
緊急入院になり、車椅子で病室運ばれる私。
会社の人に「すみません。緊急入院になってしまいまして…」と申し訳なさそうに伝える私は、どこか誇らしげでした。
病名は、卵巣出血。
お腹の中に血液が溜まっていたようでした。
何も食べずに点滴をして3日ほど安静にしていたら、自然に血液も痛みも引いていきました。
奇しくも入院した日は母の誕生日。広島に遊びに行っていた母が慌ててもみじ饅頭と共に舞い戻り、お見舞いに来てくれました。申し訳なかった。誕生日なのに。
点滴から栄養が入っているはずなのにお腹が空き過ぎて、何度も看護師さんに、今日食べていいですか?今日はご飯でますか? と2日目からしつこく聞いたけれど許されなかったせつ子は、もみじ饅頭をこっそり食べました。ごめんなさい。めちゃくちゃおいしかったです。
最後に、3日間洗っていない下半身を、美人な先生たち3人に内診されて無事退院。
教訓:肛門からお腹にかけて鉄の棒を突き刺されたような痛みが走るときは、どうか内科ではなく婦人科に駆け込んでください。