島根:【前半戦】選手レビュー



#1 コティ・クラーク

島根が誇る最凶スコアラー。求められる役割やローテの変化の影響で昨季からプレータイムは5分ほど減少。しかし、平均得点は昨季からほぼ据え置きの15.7得点であり得点効率の高さがうかがえる。島根のスコアを引っ張る頼れるエースである。今季の島根で最もUSG%が高いのはクラーク選手だ。実に29%を誇る(ちなみに昨季のビュフォード選手のUSG%は33%)。つまり、クラーク選手がコート上に立っている時、島根のオフェンスの約3割はクラーク選手のシュートもしくはターンオーバーで終わっていることを意味する。それだけボールを持つ選手に相手のディフェンスが集中するのは当然だ。試合を消化していくごとに3ptライン上でクラーク選手がオープンにさせてもらえるシチュエーションは減少し、それと共に島根のオフェンスの閉塞感もだんだんとあらわになってきた。クラーク選手にはコーナーで少しでもずれがあったら迷わず3ptを打つことを求めたい。エースが外しても誰も文句はない。むしろ打たないほうが悪影響だ。滋賀戦game1では今季最多の3ptアテンプトを記録し、なにか意識の変化があったのかもしれない。

#3 安藤誓哉

まごうことなき島根の心臓、真の英雄へ。安藤選手に宿る情熱の灯火が消えれば、島根は精神的にも物理的にも死んでしまう。それくらい今の島根は安藤選手と一心同体であり、安藤選手の強靭な精神力とプレーによって支えられている。おそらく怪我の影響でしばらく調子を落としていたが、直近の滋賀戦では圧巻のプレーで今季最多の25得点を記録した。得点以上にコート上の支配者として君臨していた印象が強く、味方ながらに何か獣が迫ってくるかのような迫力/怒り/危機感を感じた。生物的な本能がこいつはやべぇと言っていた。今季の安藤選手はディフェンスでの貢献も大きく、その貢献度(D-PIPM)はチーム内で3位となっている。今季はプレーメイカーとしての働きが重要なので、得点の量産と同時にアシストの量産も求めたい。島根に来て以降多くの実績を残し、お世辞であったとしても島根での生活は充実していると言ってくれている安藤選手。残された仕事は島根を優勝に導くことだけだ。

#4 ニック・ケイ

Wキャプテンの一角を担う。個人的に前半戦の島根のMVP。特筆すべきは圧倒的な貢献度だ。ボックススコアと"ボックススコアに残らない貢献"を包括的に評価したPIPMという指標では、オフェンス面ではチーム内1位、ディフェンス面ではチーム内2位の貢献度を誇る。安藤選手やマカドゥ選手が派手なプレーで会場を沸かせるなら、ケイ選手はquality assurance(品質保証):島根というチームの品質を保証してくれる存在だ。マカドゥ選手と共に出る1stユニットでは主に3ptライン外にストレッチしてプレーメイクに加わり、クラーク選手とともに出る2ndユニットではダンカーポジションに位置してインサイドプレイヤーとしてチームを機能させる。地味だが、誰にでも出来ることではない難しい役割を淡々とこなしてくれている。また、平均ファウル数がわずか1.5なのも、ビッグマンとして抜群の安定感を誇り信頼できる証となっているだろう。後半戦、ケイ選手にはコーナー3ptの安定感を求めたい。今季ここまでコーナー3ptの確率は4/15=約27%と、少しもの足りない数字となっている。試投数は少ないものの、ここぞの場面で決めてくれるケイ選手に期待したい。あとはもっとリングにアタックするプレーが見たい。

#6 北川弘

チャンスを掴んで躍進のシーズンへ。怪我人が続出した前半戦、島根が大崩れをするのだけはなんとか防げたのは北川選手の貢献が大きい。そもそも、へナレ体制以降の北川選手は大幅にプレータイムが減り、最も不憫な立場にあったと言ってもいいだろう。しかし今季は編成のコンセプトの変化に伴い北川選手にもプレータイムが与えられるようになってくる。その少ないチャンスを掴んだ結果、怪我人が相次いだ群馬戦以降はスタメンとして定着している。津山選手や納見選手と比べて北川選手の良いところは、相手DFのズレを作るのが上手いこと、ペイントに果敢にドライブできること、ガッツがあるところなどがあると思う。後半戦も果敢なプレーでチームにエナジーをもたらして欲しい。

#7 介川アンソニー翔

NBA入りも期待された島根のホープ。怪我の影響で前半戦でデビューとはいかなかったが、特筆すべきは197cm 93kgという圧倒的に恵まれた体格。ほそかった身体も徐々に仕上がってきている印象だ。悠々とダンクをかませる身体能力と、ウイング〜ビッグマンまで複数のポジションをオールラウンドにこなすユーティリティー性も持ち合わせている。大学では主にビッグマンとして、スクリーナーやリバウンダーなど、インサイドの役割を担っていることが多かった。しかし、島根ではウイングへのポジションアップが要求されるだろう。DF、ハンドリング、3ptシュートなど、まだまだ粗削りで改善すべき点は多くある。しかし、彼のエナジーが島根の天井に穴を開けてくれることは間違いない。後半戦、果敢なペイントアタックでチームを勢いづけるプレーに大いに期待している。島根の全盛期は彼の全盛期と共に訪れるかもしれない。

#13 津山尚大

いざ、日本人エースへ。島根に来て以降、自身のそして島根の天井にぷつぷつと穴を開けている津山選手。しかし、まだ完全には天井を破りきれていない印象が強い。今季プレータイムがキャリアハイなのに伴い、平均得点もキャリアハイだ。なのに物足りなく感じるのはやはりPGとしてのプレーメイクが安定しないからだろう。津山選手の武器は間違いなく高い3ptシュート力だが、いつも3ptが打てるとは限らない中でいかにペイントに侵入する勇気を持ちながらプレーメイクできるか。ここが問われている。ヘナレHCがよく拍手を送るプレーに、津山選手がペイントにドライブをしてキックアウトパスを出すプレーがある。バスケにおいてこのイン-アウト(中から外)のパスから打つ3ptが最も確率が良いとされている。故にへナレHCが津山選手に求めているプレーメイクはそのようなものだろう。昨季の映像などを見ると津山選手はペイントに侵入した後のスキルセットは持ち合わせているように思う。あとは持っているものをいかに表現するか、そこだけだ。加えて、ステップバック3ptなどもっと自分の間で3ptを打つ機会を増やしていって欲しい。

#14 ジェームズ・マイケル・マカドゥ

島根の守護神。マカドゥ選手はヘナレ体制下の島根で待望されていた高いディフェンス力とアスレチック性を兼ね備えたセンターだ。ディフェンスでの貢献度(D-PIPM)は今季チーム内1位、スティール数はリーグで1位タイとなっており、まさに島根のディフェンスにおいて扇の要となる存在だ。苦手なフリースローも徐々に改善されてきており、ここまでキャリアハイの成功確率を記録している。豪快なアリウープダンクは2点以上の価値があるだろう。マカドゥ選手はゴール下のシュート成功率は71%ほどあるが、その他のペイント内のエリアでは40%ほどまで落ちる。いかにゴール下まで押し込んでシュートを打てるかが重要な課題だ。あとはファウルマネージメントに気をつけてもらいたい。今の島根においてマカドゥ選手がファウルトラブルに陥り、予期せぬローテをしなければならないのはゲームプランが崩れダメージが相当に大きい。マカドゥ選手が冷静さを保てるかが重要だ。加えてこれはチームルールなのかもしれないが、ペイントに侵入してきた相手に対してはもっとヘルプDFに行っても良いのではないかと思う場面が多々ある。後半戦はリムプロテクトにも注目したい。

#15 白濱僚祐

復帰が待望されるDFの要。今季は怪我が相次ぎ、ここまで6試合の出場に留まっている。しかし、出場した三遠戦では相手のエースであるヌワバ選手に対して完璧なDFを披露し、今季最強チームに対してgame1の勝利に貢献した。島根においてDFで違いを生み出せる選手という点で白濱選手は唯一無二の存在だ。昨季、ボックススコアを基に算出されるディフェンスの貢献度を表すD-BPMという指標はチーム内でトップであった。今季ウイングDFで苦戦をする島根にあって、白濱選手の早期復帰が待望される。しかし、今季出場した試合で1本も3ptを決めれてないのでシュートタッチのアジャストは必要だろう。また、怪我の再発が一番危惧すべき点なので3月〜4月にかけて復帰してもらい最後の1〜2ヶ月でCSに向けての起爆剤となってもらうのが理想的か。

#17 横地聖真

島根の救世主となれるか。バスケ選手にとってタブーとされる怪我の一つであるアキレス腱断裂を昨年夏に受傷して以来、今季はリハビリ生活が続いている。持っているものは間違いないだけに、大学バスケ以降怪我が相次いでいるは本人にとって不本意であり、もどかしい時間を過ごしているだろう。しかし、コート外での貢献は大きく明るいキャラでどんな時もチームに良い雰囲気をもたらしてくれている。今季は怪我をしにくい体質改善に取り組み、身体を一回り絞ることに成功しているようだ。怪我が怪我だけに慎重な復帰が求められるが、復帰した暁にはコート上で大暴れして欲しい。今の島根に足りない、ペイントへの果敢なアタックとDFでチームを救えるか注目だ。かつて世代No.1と言われた輝きを取り戻せるか。

#20 ワイリー光希スカイ

我慢の時を乗り越えられるか。今季序盤戦は北海道戦でスタメンに抜擢されたのをはじめ、10分以上のプレータイムも与えられることも多く、ブレイクを予感させる良い動きを見せくれていた。しかし、シーズンが進むごとに
北川選手と晴山選手にプレータイムを奪われた形となった。一番はディフェンス面でのインテンシティのなさが原因だろう。今季のウイング陣には寝ても覚めてもまずはDFが求められる。その中にあって苦戦しているが、個人的にはワイリー選手には尖って欲しいと思っている。つまり、DFはほどほどにして、オフェンス面の能力を最大限磨き、そこで圧倒的な違いを見せることでクリエイト出来るウイングとしてプレータイムを勝ち取るべきだ。オフェンスのセンスは他のプレイヤーと一線を画す素質があると思うので、そこを存分に伸ばしてほしい。バランスだけが全てじゃない。

#21 納見悠仁

2ndユニットの舵取りを任される期待のPG。強いチームか否か、これは2ndユニットでアドバンテージを取れるかどうかと密接に関係している。島根の2ndユニットのタクトを振るう納見選手の躍進なしに、島根の躍進はないことをヘナレHCは良く分かっている。ミスをした後にすぐに呼んで指導をしているのは期待の現れだろう。今季3pt確率が37.8%と高いアウトサイドシュート力が武器だが、プレーメイクには課題が残る。津山選手同様、納見選手もペイント内に侵入した後のシュートパターン増やす、もしくは確率を上げる必要がある。納見選手はゴール下を除くペイント内のシュート確率は35%ほどしかない。対して安藤選手はこのエリアの確率が50%近くあり、2人に一線を画す要因ともなっている。納見選手はこのエリアのシュートが苦手なのがプレーメイクにもろに影響していて、判断の悪さに繋がっている。もうひとつ納見選手に足りないのはパッションだ。彼の良いところはミスをしてもその後に良いプレーが出来ることだと思う。琉球戦でも千葉J戦でもミスをしたがその後いいプレーを連発した。その失敗しても取り返すというメンタリティーを、試合中は常に表現してプレーしてくれることに期待している。

#32 晴山ケビン

脅威的な3pt確率でチームの起爆剤に。怪我人が続出した島根のウイング陣において、チームの危機を救った1人が晴山選手だ。今季ここまで3pt確率は47.8%であり、コーナー3ptに限って言えば62%もある。昨季の3pt確率が31%ほどだったことを考えると大幅な躍進であり、キャリアハイペースできている。何よりここで決めて欲しいという大事な場面できっちりと決めてくれる印象がすこぶる強く、千葉戦game2は晴山選手のおかげで勝てたと言っても過言ではない。またチーム内で一番エナジーを感じ、若手のウイング陣にいい刺激を与えてくれるだろう。滋賀戦ではコーナーからのカウンタードライブも披露し、得点パターン増加に期待がかかる。

#33 エヴァンス・ルーク

島根の大黒柱。今季、誰のプレーを見て一番驚いたかと言われればエヴァンス選手だ。まず驚いたのは器用さである。ポストアップからのオフェンスの巧さ、1on1をもしかけられるスキル、成功率が48%もあるコーナー3pt などなど多彩なプレーを見せてくれている。そんなことも出来るのかと試合を追うごとに思わされている。今季はケイ、安藤に次いでチーム内3位の貢献度(PIPM)を誇る。エヴァンス選手の離脱が今の島根にとって最も痛手であることは間違いないので、後半戦もこのまま怪我なく突っ切って欲しい。マカドゥ選手同様、ファウルマネージメントとより確率の高いゴール下のシュートを打てるところまで相手を押し込めるか、ここが鍵となってくる。フリースロー確率が51%ほどであり、コーナー3ptを打つのとさほど変わらないという面白い選手でもある。このFT確率が改善されれば、いよいよアンストッパブルな存在になれるだろう。

#55 谷口大智

模索する年に。チーム編成の大幅な変化に伴い、プレータイムが劇的に減った谷口選手。契約前にそれは分かっていただけに、それでもチーム内で自分にできることがあるということでの島根残留の決断だろう。谷口選手が出れる可能性があるとしたら、安藤 津山 コティ 谷口 マカドゥこのようなラインナップになるのではないかと思う。ただ、おそらく今の島根のシステムは谷口選手ありきで作られていないため、谷口選手が出るとなれば特にディフェンス面でシステムの作り変えが必要となるだろう。それをしてまで谷口選手を出す動機をヘナレHCに持たせることが出るかどうかは、分からないとしか言いようがない。しかし試合に出れずとも、ベンチで一番声がけをして盛り上げる姿勢はチームに多くの勇気を与えているに違いないし、若手にも積極的に声をかけてチームになじませようとする姿勢はコート内だけでは測れない価値の一面だろう。

#999 すさたまくん

美男子に。今季フォルムチェンジを遂げた島根の愛されマスコット。前半戦で島根の負けがこんだ時に、島根の負けがこんでいるのはすさたまがフォルムチェンジしたからだというツイートを見かけ少し不憫に思った。後半戦は神通力により島根を勝利に導けるか注目だ。



いざ、後半戦へ。

順風満帆なスタートを切った島根だが前半途中で急失速。オフェンス面が大きく停滞した時に粘れずに自滅するシーンを何度も見た。島根の完成度に不安を覚える人も多かっただろう。

直近の滋賀戦では、安藤選手が完全に個の力で打開するという一つの解決策を示した。しかし、これは一つの解決策として有効ではあるが、今後CS優勝を目指す中で再現性があるとは到底思えない。

チームとして、組織として状況を打開できれば理想的である。ただ、それは理想論であり、往々にしてバスケでは個の力が戦術へと昇華する。

とりわけ日本人選手は安藤選手の一強体制が続く島根において、安藤選手に追随して個で打開する選手が現れるのを待望している。

CSクラスのチームになると外国籍選手はやって当然の世界だ。優勝出来るか否かは、日本人選手がどれだけやれるかにかかっていると個人的には思っている。日本人選手の出来が大きな違いを生み出す。

誰が島根の天井を破ってくれるか。若手の勢いで終盤に向けてブーストをかけれるか。

後半戦はここに注目して見ていきたいと思う。

どうやら島根は後半戦、全B1クラブの中で強豪クラブとの対戦が一番少ないようだ。つまり、前半戦のうちに強豪クラブとの対戦はほとんど終わっている。

島根は思った以上に今の成績に自信を持って良いのかもしれない。その自信を糧に、後半戦に向かっていって欲しい。まずは三河戦に全てをぶつけて。

次にnoteを書くのはもうシーズン終了後になるだろうから、その時の内容が島根優勝の歓喜に沸く内容となることを願って。

さて、優勝に向けて勝負の後半戦が始まります。


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