おたねさんちの童話集 「カバさん親子の墓参り」
カバさん親子の墓参り
ザブン!ザブルン!水浴び中。カバの親子が水浴び中!親子三頭水浴び中!
緑の草が生えてたけれど、いつのまーにか、メッチャッチャ!青空みたいだった水の色も、やっぱり、いつしかバッチャッチャ!
それでもね。パパさんカバのパオルンも、ママさんカバのマオルンも、小さなカバのバオルンも、平気な顔して、ヘッチャラリン!
水浴びが終わった草の上、親子三頭、川の字で、すやすや眠ると思ったら、同じ具合に大あくび!!
でもね。でもね。でもなのね。小さなカバのバオルンは、いっつも悩みがありました。小さな小さな悩みだけれど、それでも悩みがありました。パパさんカバのパオルンも、ママさんカバのマオルンも、どうしてカッコーよくないの?僕が大きくなったとき、やっぱりカッコーわるいのかなぁ?
ライオンのガオさんみたいなタテガミもないし、サイのドゥンさんみたいな角もない。馬さんみたいにスマートじゃないし、チーターさんみたいにカッコーよくも走れません。
「ねえねえ、ママさん、ママさんよ。僕のお祖父さん、お祖母さん。いったいどんなカバだった?」
小さなカバのバオルンは、思わず思わず聞いちゃいました。
「どんなって、言われても、カバはみんなカバだよ。のんびりしてて、水浴びがだいすき。顔もパパやママにそっくりなカバ!!」
ママさんカバのマオルンは、のんびりこたえて、にっこりクリクリ笑います。
小さなカバのバオルンは「フーン」とこたえてみたけれど、あんまり、うれしくないみたい。
「そろそろ、お墓参りの季節だね」
パパさんカバのパオルンが、のんびりのんびり言いました。
「そうね、お墓参りの季節ですね」
ママさんカバのマオルンも、のんびりのんびり言いました。
小さなカバのバオルンは、ちょぴりちょっぴり不満顔。ご先祖様がもう少し、今よりカッコーよかったら、僕らもきっと、もう少し、カッコーいいのに違いない。
小さなカバのバオルンは、イライラしながら言っちゃいました!
「ねえねえ、パパ!ママ!教えてヨ!お墓参りはいついくの?」
「そうね、明日もすることないし、天気が良ければ出かけよう!」
パパさんカバのパオルンは、やっぱり、のんびり言いました。
「それじゃあ、みんな出発だ!」
パパさんカバのパオルンが珍しく、元気に元気に言いました!
パパさんカバのいうとおり、雲一つない青空のもと、カバの親子の三頭は、朝から元気に出発しました!
「ねえねえ、パパ!ママ!教えてヨ!お墓はいったいどこなのさ?」
小さなカバのバオルンは、すぐに疲れてたずねると、
「そろそろ、ここらで休憩しましょ!」
ママさんカバのマオルンも、やっぱりすぐに、疲れたみたい。
「目指すお墓は、あの川こえて、森のむこうの泉まで、まだまだ時間がかかるから、ここらでちょっと一休み。
パパさんカバのパオルンも、やっぱりすぐに疲れたみたい。歩き始めて、すぐだけど、やっぱり、とっくに疲れたみたい。朝の光はやわらかく、三頭そろってスヤスヤスヤ。
「コリャコリャ、イカン!コリャ、イカン!まだまだ先は長いのに、こんなところで、眠ったならば、夕暮れまでには着きゃしない」
パパさんカバのパオルンが、慌ててみんなの起こします。
「それじゃあ、みんな出発だ!」
パパさんカバのパオルンが、やっぱり、元気に言いました!
「ねえねえ、パパ!ママ!いつ着くの?そろそろお腹がへっちゃった!」
小さなカバのバオルンは、すぐに疲れてたずねると、
「そろそろ、ここらでゴハンにしましょ!」
パパさんカバのパオルンも、ママさんカバのマオルンも、やっぱりすぐに、疲れたみたい。
バクバクモリモリ、お弁当!三頭そろってお弁当!
まるで楽しいピクニック!いえいえ、ちょっとは急いでいかないと、いつまで経っても帰れません。
パパさんカバのパオルンも、ママさんカバのマオルンも、小さなカバのバオルンも、それでもやっぱりグーグーグー。ゴハンのあとは、お昼寝タイム。
やれやれ、ぐっすり眠ったみたい。カバの親子の三頭は、やっと、グズグズ歩き出します。
「ねえねえ、パパ!ママ!見て見てヨ!あの山きれいなみどりいろ!」
小さなカバのバオルンは、遠くのお山を指さした。
「コリャコリャ、イカン!コリャ、イカン!遠くのお山の近くまで、あんなに近くに近づいた!大きな大きなお日様が、あんなに近くに近づいた!」
パパさんカバのパオルンが、急にセッセと歩き出す。ドンドンドンドン歩き出す。
「ねえねえパパさん、パパさんよ!お願いだから待ってよね!ゼエゼエゼエゼエ待ってよね!」
パパさんカバのパオルンが、急にセッセと歩くから、ママさんカバのマオルンも、小さなカバのバオルンも、ゼンゼンゼンゼン追いつけません。
「ねえねえパパさん、待ってよね!お願いだから待ってよね!」
小さなカバのバオルンは、とうとうとうとう泣いちゃった。エンエンエンエン泣いちゃった。地面にペタンと座り込み、エンエン泣いて進みません。パパさんカバのパオルンも、ママさんカバのマオルンも、困ってしまって泣き出しました。エンエンエンエン泣きました。カバの親子の三頭は、一緒にエンエン泣きました。
カバの親子の三頭が、一緒にエンエン泣いているうちに、西のお空はマッカッカ!カバの親子の泣き顔もエンエン泣いてまっかっか。
「ねえねえ、パパ!ママ!見て見てヨ!一番星がきれいだよ!」
小さなカバのバオルンが遠くのお空を指さしました。
きれいな星ふる空のもと、カバの親子の三頭は、スヤスヤスヤスヤ夢の中。ぶっとい、ぶっとい川の字になり、カバの親子の三頭は、スヤスヤスヤスヤ夢の中。
次の日に、やっとのことで着きました。ご先祖様の大きなお墓、小さなカバのバオルンは生まれてはじめてやってきました。
「ねえねえ、ママさん、ママさんよ。僕のお祖父さん、お祖母さん。いったいどんなカバだった?」
小さなカバのバオルンは、思わず思わず聞いちゃいました。
「どんなって、言われても、カバはみんなカバだよ。のんびりしてて、水浴びがだいすき。顔もパパやママにそっくりなカバ!!」
ママさんカバのマオルンは、のんびりこたえて、にっこりクリクリ笑います。
パパさんカバのパオルンは、今度はちょっと恐い顔。のんびりカバのパパさんが、今だけちょっと恐い顔。
「ちょっと、こちらを見てごらん」
パパさんカバのパオルンは、ブットイブットイ後ろ脚を、小さなカバのバオルンに見せました。
小さなカバのバオルンの大きな大きな目の前に、ブットイブットイ後ろ脚。 パパさんカバのパオルンのブットイブットイ後ろ脚。そうして、そこにあったのは、大きな大きなキズあとでした。
「この大きな大きなキズあとは、ワニに噛まれたキズあとさ。ブクブクブクブク河の中、パパがもうダメだと思った時、パパのパパがたすけてくれたんだよ」
大きなワニとたたかって、パパの命をたすけてくれた、世界で一番カッコいい!すっごいすっごいパパのパパ!」
パパさんカバのパオルンは、でっかい胸をバッチリ張って、スゴイだろうと低い声!
小さなカバのバオルンは、パパの後ろをついていく。世界で一番カッコいいパパの後ろをついていく。小さなカバのバオルンは、ママの後ろをついていく。世界で一番大好きなママの後ろをついていく。
ザブン!ザブルン!水浴び中。カバの親子が水浴び中!親子三頭水浴び中!
遠くの方でワニたちが、おっかなビックリ眺めてました。カバの親子の三頭を、おっかなビックリ眺めてました。おしまい。