おたねさんちの童話集「ほしのうたがきこえたよ」
ほしのうたがきこえたよ
ほしのうた!
ほしのうた!
ボクの言葉がきこえるかな?
ユウくんは小さく呟きました。
外は雨です。
「梅雨に入ったので、明日も明後日も雨は続くみたいです」
テレビの向こうで、天気予報のお爺ちゃんが、そう喋っていました。
ほしのうた!
ほしのうた!
ボクの言葉がきこえるかな?
ユウくんは小さく頷きました。
はやく晴れたらいいのにな。
「ユウくん、早く寝なさい!」
お母さんに、そう言われても、ほしのみえないそらを、ずっと眺めています。
ほしのうた ほしのうた
ボクの言葉がきこえるかな?
雨がふってて聞こえないの?
雨が止んだら聞こえるの?
「ユウくん、早く寝なさい!」
お母さんに、何度も何度も、そういわれてからユウくんは眠りの国へいきました。
ユウくんのうた!
ユウくんのうた!
わたしのこえがきこえるのかな?
不思議なメロディーがきこえています。
ユウくんはまだ眠りの国
ユウくんのうた!
ユウくんのうた!
わたしのこえがきこえるのかな?
不思議なメロディーがきこえています。
ユウくんはまだ夢の国です。
ユウくんは目をさましました。
雨はあがりました。
ほしのうた!
ほしのうた!
ボクの言葉がきこえるかな?
ユウくんは小さくつぶやきました。
外はもう朝です。
空高く虹が架かっています。
ほしのくに!
ほしのくに!
この橋をわたると行けるかな?
ユウくんは小さくつぶやきました。
虹はだんだんと消えていきました。
「朝ご飯ができたわよ!」
お母さんに、そう言われても、消えかけている虹を、ずっと眺めています。
ほしのくに!
ほしのくに!
この橋をわたると行けるかな?
虹はもう見えませんでした。
朝ご飯を食べると、保育園へ行く時間です。
ほしのくに!
ほしのくに!
黄色いバスで行けるかな?
保育園につきました。
「おはよう!ユウくん」
保育園の先生が、やさしく声をかけてくれました。
ほしのすな
ほしのすな
小さなシャベルで、すくえるのかな?
ユウくんは砂場で、トンネルを作っています。
ほしのくに!
ほしのくに!
ボクと一緒にきてくれるかな?
ユウくんが顔を上げると、
オホシサマがたっていました。
ほしのうた!
ほしのうた!
ボクの言葉がきこえるかな?
ユウくんは、にっこりと笑いました。
あたりが、すうっと暗くなりました。
空には一面の星。
ユウくんの側でたっているオホシサマも輝き出しました。
ほしのうた!
ほしのうた!
ユウ君の声が聞こえたよ!
「さあ、この手をにぎって!」
ユウ君がオホシサマの手をにぎると、ゆっくりと空へと枚があります。
保育園が少しずつ小さくなっていきました。
ユウくんのおうちの屋根もみえました。
ほしのくに!
ほしのくに!
いったいどこにあるのかな?
ユウくんが歌うとオホシサマも歌います。
ほしのくに!
ほしのくに!
こっちにあるからついてきて!
ユウくんはいつの間にか
一人で空に浮かんでいました。
どうやら、宇宙へついたみたいでした。
ピーポーピーポーピーポー!
ピーポーピーポーピーポー!
サイレンの音が聞こえました。
ユウくん!
ユウくん!
ママの声でした。
オホシサマ!
オホシサマ!
あしたもきって会えるよね。
ユウくんは目覚めました。
病院の小さなベッドの上でした。
保育園の砂場で、いつのまにか、眠ってしまったようでした。
ユウくんが、あんまり楽しかったものですから、いくら呼んでも気づかないまま。
ぜんぜん目が覚めなかったのです。
ほしのくに!
ほしのくに!
大きくなっても行けるかな?
ユウくんは、お母さんの腕の中です。
ほしのうた!
ほしのうた!
今日はたくさん歌ったよ!
「イタイよ、ママ」
ママがあんまり、ぎゅっとするものですから、ユウくんは、あやうく忘れてしまうところでした。
あのね、ママ!
あのね、ママ!
ほしのくにはキレイだったよ。
ママみたいにキレイだったよ。
こんどはボクがアンナイするよ。
ほしのうた!
ほしのうた!
あなたの声がきこええたよ。
ユウくんは、まだママの腕の中。
ユウくんは、いま夢のくに。