おたねさんちの童話集「インコのポポ」
インコのポポ
三月三日はお祭りです。
夢見る少女のお祭りです。
桃源郷はどこですか?
いつか出会えるシャングリラ!
春の弥生は、巣立ちの季節。
インコのポポも旅立ちの時!
ピューピューピュルリピュルリララー、自慢の喉をふるわせてインコのポポは、旅立ちの時!
どうしてかしら?
なぜかしら?
新しい暮らしがはじまったのに、明日旅立つ夢を見ました。
インコのポポは目覚めます。
新しい町!新しい部屋!みんながみんな新しい!
パパもママも友達も、今はだ~れもいないけど、きっとこの町好きになれるよ。
ゼッタイ!ゼッタイ!好きになれるよ。
けれども、とっても、静かなの。
誰もいないと静かなの。
インコのポポは歌い出す。
寂しくないよと歌い出す。
だ~れもいないきれいな部屋で、インコのポポは歌い出しました。
けれども、誰もいないから、インコのポポは飛び出しました!
あんまりお部屋が静かすぎて、涙が出そうになったから、インコのポポは飛び出しました!
ホットロードを南へ下って、町一番の繁華街。
ショーウィンドウに映ってる、ポポの翼が茶色く見えて、背中を丸めて下を向きます。
ピーナッツロードの鳥の波、みんな知らない鳥でした。
インコのポポは歌い出します。
寂しくないよと歌い出します。
お外に出ても同じだから、インコのポポは部屋の中。
大好きな歌を歌います。
コンコンコンとノックの音。
そおっと誰かを確かめたけど、知らない鳥がたっていました。
コンコンコン!
コンコンコン!
「えっ!」
「どうしよう?どうしよう?」
「ど、ど、どどど、どどどなた?どなたですか?」と声が出ました。
いつもと違う声がでました。
ぜんぜんポポじゃないみたい。
とっても変な声がでました。
「はじめまして!こんにちは。隣に住んでいるカナリアです。あんまりきれいな歌だったから、思わず遊びにやってきました」
インコのポポは開けました。
玄関のドアを開けました。
勇気を出してあけました。
「はじめまして。カナリアのリリと申します」
きれいな黄色い鳥でした。
すらっとしていて可愛くて、ポポとは全然違っていました。
「びっくりさせてごめんなさい。私も歌が好きだから、一緒に歌を歌いましょう」
とってもオシャレなお菓子をもって、カナリアのリリが入ってきました。
インコのポポは歌います。
カナリアのリリと歌います。
とっても楽しく歌います。
まるで、昔から友達だったみたいに、楽しく楽しく歌います。
インコのポポとカナリアのリリ!それからずっと仲良しです。
毎日毎日仲良しです。
なんだ、な~んだ、そういうことか。
リリも友達がいませんでした。
やっぱり、春に旅立って、ポポとおんなじ、はじめての町。
一羽で、ちょっと寂しいときに、流れてきたのが歌でした。
リリの大好きな歌でした。
誰の声かな?と思っていたら、部屋から出てくるポポを見ました。
私と同じ女の子!
カナリアのリリはノックをしました。
勇気を出してノックをしました。
インコのポポとカナリアのリリ!それからずっと仲良しです。
毎日毎日仲良しです。
まるで、昔から友達だったみたいに、毎日毎日仲良しです。
インコのポポはおしゃべりです。
毎日毎日おしゃべりです。
カナリアのリリはニコニコと、毎日笑って聞いてくれます。
ほとんどポポがしゃべっても、リリは、いっつも笑ってくれます。
インコのポポは大好きです。カナリヤのリリが大好きです。
まるで、昔から友達だったみたいに、毎日毎日仲良しです。
けれども、今は違います。
一年、二年と時間が流れ、今は、ちょっぴり好きじゃないかも……。
だって、リリは、可愛いんだもの……。いっつもいっつも可愛いんだもの……。
ずんぐりむっくりのポポじゃなく、みんながリリに憧れています。
リリと一緒に歩いていても、みんなの視線はリリだけのもの……。
インコのポポは、イヤになります。
自分が自分がイヤになります。
リリはなんにも悪くないのに……。
リリやいつも優しいのに……。
どうして、私はこんなのだろう。
インコのポポは、イジワルをしました。
カナリアのリリに、イジワルをしました。
リリの一番大好きな、ママから貰ったイヤリング。
わざとこっそり隠しておいたの。
インコのポポは、後悔をしました。
すぐに返して謝るつもりが、なぜか投げつけ、壊してしまったのです。
カナリアのリリは出て行きました。
遠くの遠くへ出て行きました。
悲しそうな目で出て行きました。
インコのポポは、泣きました。
エンエンエンエン泣きました。
ごめんなさいとも言えないで、エンエンエンエン泣きました。
あんまりたくさん泣きすぎて、涙が出なくなったから、インコのポポは飛び出しました!
ホットロードを南へ下って、町一番の繁華街。
ショーウィンドウに映ってる、ポポの翼が汚れて見えて、背中を丸めて下を向きます。
ピーナッツロードの鳥の波、みんな知らないでした。
インコのポポは、探します。
カナリヤのリリを探します。
必死で必死で探します。
毎日、毎日探します。
けれどもリリは見つかりません。
「大切なもの、大事なものを、ちゃんと大切にしなければ、大切なものがなくなるよ」
子供の頃に、叱られた遠い記憶を、インコのポポは思い出しました。
ママに貰った人形を、大好きだった人形を、お外で遊んだままにして、雨に濡らして汚してしまったあの時を、思い出して泣きました。
一年二年と流れても、やっぱりリリは見つかりません。
それもそのはず、病院の中。
カナリヤのリリは病院の白い冷たい部屋の中。
ゼンゼンきれいじゃなくなって、歌もゼンゼン歌えません。
ほんとはポポと会いたいけれど、こんな姿は見られたくない。
どうしてあの時、出て行ったの?
イヤリングよりも、ポポの方がもっと大切なのに。
怒ってなんか、もうないよ。
あの時、すぐに許していたら、こんなに寂しくならなかったのに……。
「もう、ぜんぜん怒ってないよ。だって、ポポの優しさは、私が一番知っているもの。ほんとはポポにあいたいよ」
カナリヤのリリは、寂しくなって、初めてポポに手紙を書きました。
「やっぱり、ポポと歌いたい!今でもポポは友達だよ!」
インコのポポは、大喜び!
手紙を読んだら、猛ダッシュ!
エンエン泣いて猛ダッシュ!
涙と一緒に病院だ!
「ほんとに、ほんとうにゴメンナサイ」
インコのポポは謝った。
カナリヤのリリ泣き顔で、いいよ!とニッコリ笑ってくれた。
カナリヤのリリが元気になったよ。
ポポが来たから元気になったよ。
一緒に歌を歌える日。きっともうすぐやってくる。
三月三日はお祭りです。
夢見る少女のお祭りです。
桃源郷はここにあります。
リリがいるからここにあります。
そうよ!出会えたシャングリラ!
ポポと出会えたシャングリラ!
三月三日はお祭りです。
夢見る少女のお祭りです。
桃源郷はどこですか?
あなたも出会えるシャングリラ!