疎結合な組織とコミュニティのリズム
先日の投稿ではJAWS-UGの東京勉強会の急激な拡大と、その直後のスケールアウト的な専門支部化による拡張の歴史をご紹介しました。専門支部のコンテキストは明確でCLI専門支部は「AWS CLIを中心に勉強会をする」、コンテナ支部は「コンテナ技術に関する勉強会をする」のため、これらの専門支部はお互いの活動に干渉することはありません。
こうやって設立された専門支部と、すでに全国各地に設立された地域支部はかなり緩い関係でお互いの存在を認識しています。JAWS-UGの特徴として、このスケールアウト後の疎結合な組織形態と、この疎結合を維持するために仕組みのバランスが絶妙だと感心します。
疎結合組織のメリット
組織運営上、支部を作り、各支部を管理しながら全体をまとめる「プラミッド型組織」がありますが、JAWS-UGはこのピラミッド型組織ではありません。ピラミッド型の組織にならなかった理由はいくつかあると思いますが、ひとつはクラウドのユーザーグループであるが故に、無意識にマクロサービス的な、個々のサービスがAPIを通して疎結合することで、システム全体として拡張性や冗長性を維持するような構造を組み入れようとしたのではないかと考えています。
さらにここにはAmazonの組織運営で求められる「ツーピッツァルール」も色濃く影響しているように思えます。Amazon/AWSでは1部門の最適なサイズは2枚のピザで十分な人数だ、と考えられています。巨大な組織(部門)を作ることに対するアンチテーゼをアマゾン社員は持っているのです。
現実に全国各地に支部を展開した場合の組織運営は、代表やコミッティメンバーを頂点として、北海道・東北、関東甲信越、近畿、、、といった地区の下に各支部を配置し、、、という3階層のピラミッド組織を想定しがちだと思います。しかし、JAWS-UGはその形態を目指しませんでした。ビラミット構成を維持するためのプロセス・プロシージャー(ルール)などの調整や確認事が少ない分、パッションの高い各支部のリーダーが自分で判断して、俊敏性を維持して、自分たちのできる範囲の活動をしているように感じました。
疎結合組織のデメリットを解決する
でも、不思議に思いませんか?そんな疎結合のネットワーク型の組織は、ややもすれば、他の支部の存在や活動に対しては無関心になり、やがて部分最適を目指して勝手に動きだすか、活動が停滞するかのどちらかで、全体最適のように組織全体が影響しあって活性化するのは何か秘密があるのではないかと。
事実、、、今でも、全国各地の50以上の支部の運営メンバーの顔と名前をお互いが知りあっているような状態ではないと思います。
その秘密は大きく2つあると思います。ひとつは以前にJAWS-UGの特徴として紹介した「アプトプットのカルチャー」です。
#jawsug でアウトプットするカルチャーは、地域や専門支部に分かれていても、同じ関心軸上にいることを担保しています。アウトプットによって、自然と他の支部の活動をインターネットを介して知ることができます。それが「オフラインの勉強会」の活動内容にも関わらず!です。同じ関心軸上にいる仲間の活動として意識できるアウトプットファーストは、こんなところでも良い影響を与えていると考えられます。
もうひとつの秘密は、これが事前に設計されていたとは思えませんが数年をかけて結果的に、年間を通して、AWSユーザーが集まるイベントが絶妙のタイミングで開催されていることです。
デメリットを解消するコミュニティのリズム
JAWS-UGは各支部がそれぞれ独自に勉強会を企画・開催して、ある意味バラバラに活動していますが、これらの支部メンバーや参加者が一同に集まる機会を通年を通して絶妙なタイミングで配置しています。
今年は、COVID-19の影響でこのコミュニティのリズム(Rhythm of Commuithy)が崩れていますが、本来は以下のようなイベントスケジュールで各支部のメンバーが顔を合わせていました。
2月-3月 JAWS DAYS (東京で実施)ユーザーが企画・登壇・実施
5月-6月 AWS Summit Tokyo / Osaka - re:Mix, JAWS-UGブース
10月-11月 JAWS FESTA (東京以外で実施)ユーザーが企画・登壇・実施
11月-12月 re:Invent (米国ラスベガスで開催)AWS User Groups activities
AWS Summit Tokyo/Osaka ではJAWS-UGのブースを設置して、AWSのユーザーコミュニティを多くの人に知ってもらう活動をします。各支部から運営のメンバーがスケジュールを組んでブースに立つので、そこで自己紹介することで支部と顔と名前が一致します。ラスベガスで開催するre:Inventでは、グローバルレベルでユーザーコミュニティブースを運営します。日本はもとより、各国からユーザーコミュニティの運営メンバーがブースに入ってAWSユーザーグループの紹介をします。このブースの中で世界各国のユーザーグループの運営メンバーと知り合うことができます。
現在、設立から10年たったJAWS-UGは本来もっている疎結合ネットワーク組織の強みを維持しながら、新しい形態を模索しています。オンライン勉強会が主流の今は複数支部で「コラボ勉強会」を企画する支部も多くなりました。先日お話した地域支部レベルで差がなくなり、コンテンツ中心になりつつあることへの一つのチャレンジだと思います。疎結合の形態も一歩先に進んだものの実現に向けて歩き出しています。
今年の9月に開催予定の AWS Summit Online では、これまでの疎結合JAWS-UGとは違う関わり方ができると今からとても楽しみにしています。
2288文字 100分
https://pixabay.com/ から写真をお借りしました
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