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これから猫を飼う人に伝えたい10のこと

猫の日なので、これから猫を飼おうと思っている人に、伝えたいことを伝えたい。

1. 20年を想像しよう

あなたはいま何歳でしょうか。

猫の寿命は、だいたい20歳くらい。
その間に、あなたは引越しをしたり、結婚をしたり、親になったり……。
それはもう結構な人生の動きがあると思います。
もちろんあなたも歳をとるし、猫はそれ以上のスピードで歳をとります。

「いま」だけでなく、「この先20年」を想像してみてください。
猫を飼うことは、当たり前だけれど、猫の一生をまるごと引き受けることです。

2. 全部人のせいだ

我が家の猫は、悪いことをしません。いや、ちょっと不正確だな。
猫がすることで、「猫が悪いこと」は、ほとんどありません。

例えば、猫が花瓶を割ったとします。
それは、割れてしまう材質の花瓶を、落とされてしまう場所に置いた「人」のせいです。
お弁当の唐揚げを盗み食いされたら、盗み食いされるようなところでお弁当を冷ましている「人」のせい。

人間側がケアすれば回避できることは、全部飼い主の責任です。

3. 猫のためは自分のため

猫のために買ったおもちゃで、猫はだいたい遊びません。
猫のために買ったオヤツを、猫はだいたい食べません。
猫のために買った爪とぎで、猫はだいたい爪をとぎません。

いいのです。
猫のためじゃないのです。自分が猫に喜んでもらいたくて買ったのです。
自分のためです。
おもちゃも、オヤツも、爪とぎも全部自分のために買ったと思うことにしています。

4. 叱るより慣れろ

これまで結構な数の猫と関わっている者の結論として、猫は「しつけ」られない。
それが猫の猫らしいところだと思うのです。
これを前提としたとき、叱りつけるようなことは、ほとんどないはず。
先に書いたように、叱りたくなるようなことは全部人のせいなので、叱らなくてもいい工夫をする。

矯正や強制でなく共生する、みたいな感じです。うまいこと言った感じです。

我が家で猫を叱る(声を張る)のは、「他の猫を攻撃したとき」と「(火元のある)キッチンに上ったとき」くらい。

それだって猫に非はないよね。叱るより慣れろです。

5. 1匹より2匹

(最初から2匹なんて飼えないよ……)と思うでしょう。

でも実感として、1匹だけよりも2匹一緒に飼う方が気が楽です。
1匹だと(留守中、寂しい思いをさせているのではないか)と気になるものだけど、2匹いればその心配はなくなります。

もちろん2匹分の猫の一生を引き受けることになるのだけれど、猫同士でじゃれているのを眺めるのは、無条件にいいものです。

途中から2匹目を考えるのもいいけれど、意外と相性が難しかったりするので、最初から2匹がオススメ。
子猫のうちからなら、だいたいうまくやるイメージです。

6. 完全室内飼い願い

猫は、必ず完全室内飼いで、外出させないように。避妊・去勢手術もしましょう。

(狭いところに閉じ込めてかわいそう)と感じるかも知れませんが、それは間違いです。
事故にあったり、迷子になったり、カラスに襲われたり、他の猫とケンカしたり、病気に感染したりするリスクに晒される方がずっとかわいそう。

猫タワーとかで高低の運動ができるようにしてあげれば、広さはそれほど求めないみたいですよ。

7. 命名

猫を飼うと、その猫の名前が、あなたが普段もっとも口にする言葉になります。

どんな名前を付けてもいいと思います。
ただし、長い名前を付けても必ず「あだ名」で呼ぶことになるので、最初から2〜3音くらいの呼びやすい名前にしておくのが吉。

また子猫だからといって「ちびた」などと名付けると、1年後にはまったくピンとこない名前になります。(そういう猫に限って、大きくなります)

8. テトごっこは悲劇の始まり

子猫の可愛らしさは、別格です。

ポヤポヤとした毛並みやポテポテとした歩き方、ひどい寝相、たどたどしい動作、全部が圧倒的です。

そんな子猫が、腕や背中をよじよじ登ってきて、肩に乗るのです。ナウシカのテトのように。それは自撮りもしたくなるというもの。

でも、ダメです。心を鬼にして「ここは乗ってはいけないところ」と徹底しましょう。「しつけ」ることはできませんが、長い時間をかけて諦めさせることならできるような気がします。

猫は、体重が4キロになっても、セルフイメージが子猫のままです。
背後から駆け寄ってきて、爪を立て、一気に背中をよじ登ってきます。

阿鼻叫喚です。

9. 気づくことができることのすべて

猫は、よく寝ます。

普段から寝ている時間が多いので、体調の変化がわかりにくい。
毛艶やトイレの状態、食事の量や体温……。
撫でたり、トイレ掃除をしたり、エサをあげたりする中で、ちょっとでも「?」という変化があったら、すぐ病院。

(思い違いだったら、それはそれでよかった)くらいの気持ち。

できることがあるとすれば、気づくことくらいだ、と思っています。

10. 猫より先に死んではいけない

あなたの人生の内側に、猫の生涯がまるごと入らなければいけません。
必然的に、その猫の死とも向き合うことになります。

(死んじゃうときが嫌だから最初から飼わない)という声もよく聞くし、それはひとつの考え方として、全然ありだと思います。
もちろん一緒に暮らしてきた猫を失うことはつらいし、きついし、たまらないです。しんどいです。
なにも手につかなくなります。自分でもよくわからないうちに泣いていたりします。(嗚咽ってこういうことか)って思います。

それでも猫との暮らしはめちゃめちゃ楽しいよ、と伝えていきたいし、伝わればいいな、と思って、こんな文章を書いています。

最後に

ここまで読んで「ああ、猫飼いたいな」って思ってくれたら、本当に嬉しい。

実際に飼ってくれたらもっと嬉しい。
できればペットショップで「買う」のではなく、保護団体などで里親を募集している猫を引き取ってもらいたい。

あなたが猫を飼い始めるということは、食べるものに、寝る場所に、生きることに困らない幸せな猫が1匹増える、ということだから。

#猫 #ペット #猫の日 #エッセイ

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この文章をもとにした冊子「これから猫を飼う人に伝えたい10のこと」(短歌・エッセイ 仁尾智/イラスト 小泉さよ)を制作しております。よろしければ、こちらもどうぞ。

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その後

この小冊子は後に韓国語版が出版されています。

追記

さらに2021年8月5日、上記の冊子が元になった単行本『これから猫を飼う人に伝えたい11のこと』(短歌・文 仁尾智/絵 小泉さよ 辰巳出版)が刊行されます。

noteの記事から自費制作の小冊子、韓国語版を経て、商業出版までたどり着いたわらしべ長者みたいな話ですが、この先も多くの、遠くのひとに届きますように。

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