第17回 大人相談会 ／ 楽しかった時間(私に喋らせろ)Part2
大人は皆、日陰を歩いた経験がある。だから尚更、日向に出た時にその温かさや幸せをしみじみと味わい愛でることができるのだろう。
この二年半の未曾有の事態は、私たち人間にとって、それまで当たり前に受け取っていたあらゆる『ギフト』を、他には替えがたい感動や喜びとして、ふたたび味わうことの奇跡を教えてくれたのかもしれない。
「人と会って話すこと」がこんなにも人間にとって生きる喜びだと知り得ることは、少なくともこの禍を経験してこその気づきだったと言える。身をもってその実感を得たことを話していると、自然と笑顔が溢れてくる。そして、話している人だけでなく、聴いている周りの人たちがみんな深く頷きながら、「そうそう、そうなんだよね！」と共感し、笑顔が連鎖していく。
マスクをしていると口周りの筋肉の動きが抑えられて、笑うことさえも抑制された感覚になる。オンラインでは画面越しとはいえ、実際に目の前にいるけれどその微妙な距離感を埋めようと無意識に表情やリアクションが大きくなる。話をしている人への共感を少しでも画面の向こう側へ伝えたくなる。普段マスクをして生活している時よりも、きっと大きく笑っている。大きく頷いている。そしてその笑う行為によって脳が「楽しいね」を思い出す。そう、人と顔を合わせて話すことって、とても楽しくて嬉しいことだったんだよね、と。
「楽しかったこと」の話は笑顔が徐々に充満してきた頃合いを見計らって一気に加速化。そこからは多方面へと広がっていった。
最近転居をした人は、以前に住んでいた家の残りの転居手続きを兼ねて、再度その土地を訪れる家族旅行的なイベントを楽しんだそう。そういえば、私も昔京都に住んでいたことがあったけれど、その時は生活に追われて観光などほとんどしたことがなかった。住めば都とはいうけれど、都も住めばただの地元。そこから離れて初めて“なんだかもったいないことをしたなぁ“と思うものなのだろう。その方はその街にとても愛着を持っておられ、引っ越したのちに改めて家族旅行をしに戻ってきたほど好きな街の見所や素晴らしさを語ってくれた。私たちは行った事もないその異国の街に想いを馳せ、まるで一緒にその素晴らしい街並みや自然の眺めを楽しませてもらったような気持ちになった。気づいたらみんな笑っている。とても楽しそうに、嬉しそうに。あぁ、いいなぁ。人の「楽しい」を共有するってとても幸せなことだなぁ、と実感。私は長く海外に住むその人に質問してみた。
「じゃあ、いずれまたその街に戻りたい感じ？」
「そう、またいずれ住みたい」
「日本に帰ってきたいとは思いませんか？」
「全然思わない」
即答。素晴らしい。これまで歩いてきたその人の人生までもが美しい街並みと共に祝福されているかのように見えてくる。そこには肯定感しかない。その想いが私たちに伝わって、そのキラキラと輝きながら話す表情に見惚れてしまうのだった。海外のその街を「第二の故郷」と呼べる幸せ。その街はもはやその人にとっての「推し」なのである。
そこから一人ずつの「推し活話」に飛んだ。推しは正義。推しは人生の珠玉の楽しみであり慰めであり希望だ。さぁ、思いっきり語っちゃってください！
娘さんとの共通の推し活を楽しむ人は、親子で奇跡的に抽選に当たったライブに向けて只今予習の真っ最中。通勤途中の車の中でヘビロテしていると言う。いつ行くんですか？と聞くと12月だと。なんと半年かけて予習を繰り返すとな。これぞ推し愛。一途で美しきことこの上なし。娘さんとその時間を愛でるように楽しんでいる様子が伝わってきてまたみんなが笑顔。いいですねぇ。
ある人はそのダダ漏れる推し愛をここnoteでも以前に綴っておられたが、語っているときのお顔がもう少女のように可愛くてキラッキラだ。まるでJKだ。笑顔の筋肉MAXだ。口角が上がって頬がピンク色に染まっている。そうそう、これぞ推し愛効果！推しはどんな高価なエステや美容液にも勝る、一番のアンチエイジングの特効薬なのだ。
推し愛もさることながら、以前は月に二度ほど上京し、お友達や知り合いとランチや歓談を楽しんでおられたという人の話も面白かった。世間って広いようで狭いのね、という偶然が重なったエピソードは聞いていてカルマの妙のような、それでいて心温まる稀有な出来事で、人と人との「ご縁」というものの不思議や有り難みのような貴重な経験をシェアしていただいた。
「あの頃は楽しかったのよ」としみじみと仰る笑顔に、この禍によって私たちに一方的に課せられた閉塞感や心の重石を改めて思い知らされた気がした。
「是非また東京に遊びにきてくださいよ！」
そう言うとパァッと花開いたような明るい表情になって、「うん、絶対に行く！」と固い約束を交わした。
少し先の未来に楽しみを持つことは生きていく上で心の支えになる。そこに誰かとの楽しい時間が待っているとしたら尚更だ。
私たちは十分に頑張ってきた。そして耐えてきた。大人だからいちいち嘆いたり悲しんだりしないだけで、本当は言葉にしない鬱々とした想いを抱えながら生きている。なんて健気。なんて謙虚。なんて賢く愛しいことか。それだからこそ、ここではその想いを言葉にして、感情を表に出して、笑いあったり励ましあったりしたいのだ。
開催終了直後の感想にとても嬉しい言葉をいただいた。
「終わって退出してから訳もなく明るい気持ちで前向きになっていることに気づいて驚いています」
この言葉が聞きたくて、私はこの場所を作っているのです。
ありがとうございました。また、会いましょう！
参加してくださったメンバー
＊大人相談会はメンバーを募集しています。この会のテーマは「能動的参加」です。毎回皆さんから頂いたテーマをもとに、参加希望者を募って少人数でのディスカッションを楽しんでいます。参加の条件は「大人」です。解釈は大人のあなたにお任せします。能動的参加をお待ちしています。詳しくはverdeのDM(@verde88988252)までお気軽にどうぞ。
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