ソワレ
少しずつその時が近づく。
窓の外は日暮れの寂しさ。
上手くいくかしら・・・
今夜は初めてのパーティー。
大人になる初めての階段を登る夜。
この日のためにしつらえたドレスはママの見立てを初めて断った、私のオリジナル。
ママはヘビーシルクの襟の詰まったパフスリーブのミディ丈をすすめたけれど、そんなのは着たくない。
だってあの人が来るんだもの。
そんな子供みたいなドレスはちっとも魅力的じゃないわ。
もっと大人っぽい素敵なドレスを着るの。
私がオーダーしたのはシルクシフォンの柔らかな透ける素材。色は深いワインレッド。デコルテを思いっきり開けて、美しく磨き上げた肌を強調するの。
ウエストはキュッと絞ってね。
チョーカーは輝くクリスタルにしましょうか。
初めてのハイヒールももう何度もお部屋の中で練習したから大丈夫。
初めてのダンスはどんな曲かしら。
あまりアップテンポなのは苦手だわ。
優しいワルツが聴こえたら、きっとあの人は私の元へやってくる。
そして私の手をとり、甲にキスをしてこう言うの。
「踊っていただけますか?」
返事をする代わりににっこりと微笑んで少し膝を曲げてみる。
あの人はどんなふうに私をリードしてくれるかしら?
それより心配なのはライバルの彼女のこと。
もしかしたら私より素敵なドレスで来るかもしれない。
あの子が私より魅力的だったらどうしよう。
あの人があの子を選んだらどうしよう・・・。
今夜は私のこれまでの人生で一番綺麗でいたい。
そうでなければ絶対ダメなの。
だってそれは初めてのパーティー。
あの人との運命の夜になるの。
はやる心をどうやって抑えよう。
こんなんじゃ上手く踊れない。
さあ、深呼吸しましょう。
胸に手を置いて、目を瞑って・・・。
ゆっくり、ゆっくり、深呼吸して。
目を開けたら私は今夜、誰よりも綺麗な女の子に変身するの。
あの人に選んでもらえるような素敵なレディになってるの。
大丈夫。大丈夫。不安な気持ちはもういらない。
笑顔で部屋を出るわ。
ワン、ツゥー、スリー!
さあ、自信を持って。
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