ライターのしごと#4「フィードバック」
どんな仕事もそうなのかもしれないけれど、ライターの仕事というのは常にインプットとアウトプットの繰り返しだ。アウトプットとはもちろん、記事を書く作業のこと。そしてインプットとは、取材活動や執筆する分野の勉強、情報収集なども含めたあらゆる取り込み作業のことだ。
インプットの1つには、「フィードバック」というものもある。
ライターにとってのフィードバックとはもちろん、読者から反応をもらうことにより何かを得ることだ。
インターネットの時代になって、読者からのフィードバックは格段に便利になった。自分が書いた記事がネットにアップされPV(ページビュー)の数が多ければ「興味を持たれているのかな」と思えるし「こういうのがウケるのか」または「ウケないのか」という判断材料にできる。
もちろんネットには「炎上」というものがあり、反感を買ってしまったために多くのPVを得るというケースもある。しかしそれは長期的に考えれば書き手にとってマイナス。普通の書き手なら、炎上狙いで記事を書くなどということはあり得ないので、ここではそのようなケースは除外する。
これまでの経験で感じるのは、面白い記事を書けばPVは上がるということ。
またネットメディアが黎明期だった時期は、PVを稼ぐために大袈裟な見出しを付けるのが流行ったりもしたのだが、今はそれがかえってマイナスになることが多くなり、やはり面白い内容の記事が読まれると思う。大抵の場合は書き手と見出しを付ける人は別なのだが、記事の内容、趣旨を的確に要約してある見出しの記事は、読まれることが多いようにも感じる。
中には、まったく予想外の記事が多くのPVを記録する場合もある。そういう場合は、なぜそんなにPVが伸びたのか自分なりに検証などもする。予想外の反応を得るときは、書き手としては勉強させてもらっているので有意義だし、ありがたいフィードバックだと思う。
とはいえ、書き手の期待とは裏腹にPVがまったく伸びないことの方が多いかもしれない。もちろん書き手は常に、面白いと思ったことを書いているわけで、それはあまり読まれないとなると、やはり理由をあれこれと考える。以前、セイバーメトリクスが今ほど浸透していなかった時期にそれを書いたら、編集者からは非常にウケがよかったがPVが伸びなかったことがあった。今書けばまた違う反応だったかもしれないし、当時はニッチ過ぎるテーマだったのかもしれない。記事は書く時期の見極めも必要だと考えさせてくれる記事だった。
フィードバックといえば、ネット時代以前はどうしていたか。
何と筆者は、そんな化石時代のような時期から記者をしていたのだが、当時は雑誌なら大抵どこも読者プレゼント付きアンケートというのを行っていた。その号のどの記事が一番面白かったかというアンケートの葉書が雑誌に付いていたのだ。
某週刊誌で記事を書いていたまだ駆け出し記者だったとき、筆者は超柔らか系記事の連載を担当したことがあった。その記事は、読者アンケートの面白かった記事ランキングでだいたい1位か2位に入っていた。順位表は毎週、編集長の机の横に貼りだされており、見に行って1位だとやはり嬉しかった。自分はこういう感じでこういう風に書いていけばウケるんだなということを学んだし、記者として読者の投票に育てられたと思う。
写真は2019年12月、ヤシエル・プイグ選手が来日し野球教室をしているときの様子。フィード〝バック〟にかけました。無断転載はご遠慮ください。©Shoko Mizutsugi2019