なまえのないものがたり
電話番号だけが表示されたスマホの画面を見つめる。
とりあえず電波が届く所だと安心し、ゆっくり通話に触れた。
「お目覚めのようですね?」低い男性の声
「あ、あのーここって」と聞く私の事を無視し男性は話続ける。
録音なんだろうか?
「あなたにはこれからゲームに参加して頂きます」
「安心してください。よくある殺し合いとか物騒な物ではありません」
「ルールは簡単です」
「その部屋から出るだけです」
「時間制限はありません」
「それではゲームスタートです!」
そう言うと一方的に電話が切れた。
(え?ゲーム?なに?意味が分からない)
手元のスマホを眺める。
(これリダイヤルしたら出るのかな?)
一応、リダイアルをしてみる
プップップップルルル…
「え?折り返しちゃった?」
出た。
「え?普通折り返しにでる?」
困惑する私。
「こんなノータイムで折り返して来る人いないよ?いまLINE返そうとしてたんだよー」
え?この男の人バカなの?
「で、なに?聞きたいことあるんでしょ?」
なにこのユルユルなゲームと思いながら質問してみた
「あのー、ここってどこですか?てゆーか私記憶ないんですけど!」
「記憶ないの?まじかーwそりゃ最高のギフトじゃないの!ウケるwwwww」
そう言い笑い出す男。
ムカつく。
「場所はそうだねぇ。言っても良いけど信じないと思うよ?」
え?教えるんだ!
「信じる信じないかは私が決めるから教えて!」
「分かったから大きな声を出すなよ」
「君のいる場所はね」
「君の記憶のなかだよ」
は?意味が分からない。
この男、バカにしてるの?
「ちょっ!なに言ってるの?」
「それじゃ、LINE返さないといけないからさ。本当にゲーム開始ねーバイバイ」
そういうと、電話を切った。
頭にきた!LINEを返せないようにすぐリダイアルしても今度は出ない。
しばらくリダイアルを繰り返していたが電話に出なくなってしまった。
猫が私に寄ってきた。
ゴロゴロと喉をならし、すり寄ってくる。
可愛い。
猫の頭を撫でながら思わず呟いた。
ここは…私の記憶のなか…?