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勝手に10選〜タイトルに名前が入るイカした曲(THE BEATLES編)〜前編
(前記)
タイトルに名前が入るイカした曲を、邦楽編と洋楽編と分けて勝手に10選したのだが、洋楽編の楽曲をピックアップする際に、これはビートルズに限定できるかも、というアイデアが浮かんだ。
従って、今回はビートルズにおけるタイトルに名前が入るイカした曲を勝手に10選する。
・Michelle
1965年に発表されたアルバム"Rubber Soul"に収録された曲だ。
作曲はポールによるが、"I love you"の繰り返しから成るミドルエイトはジョンによるものである。
歌詞はミッシェルに対するラブソングであるが、英語とフランス語のチャンポンであり、フランス語の部分は前身バンドであるクオリーメンの元メンバーで、なんとジョンとポールを初めて引き合わせたアイヴァン・ヴォーンの奥様でフランス語の先生であったジャネット・ヴォーンによるものである。
この曲の由来であるが、リヴァプール時代にジョンと共にアートスクールのパーティーに出かけたポールがナンパ目的にボヘミアンを意識してフランス風の歌を歌った事をジョンが覚えており、あれを曲にしないか、と提案したのが始まりであった。
実にお洒落な美しいバラードだ。
コーラスワークも素晴らしく、曲の見どころは満載であるが、イントロとサビのキーが半音ずつ下がるクリシェと、そのクリシェとは独立して舞い踊るベースラインであろう。ベースが単なるリズム隊では無く、メロディを奏でられる楽器である事を見事に立証している。
実に聴きどころ満載のイカしたバラードなのだ。
・Eleanor Rigby
1966年に"Yellow Submarine"と共に両A面シングルとして発表され、アルバム"Revolver"にも収録された曲だ。
ビートルズのメンバーが楽器を弾いていない楽曲であり、ジョージ・マーティンのアレンジによる弦楽八重奏がオケとなっている。
基本的にポールの作品であるが、冒頭などの"Ah,look at all the lonely people"のフレーズは、ジョンジョージのどちらかによるアイデアであるが真相は解っていない。
筆者もポールの作品の中ではフェイバリットな作品の1つであり、歌詞のストーリー性と弦楽のアレンジの絡み方が絶品であり、ジョージ・マーティンの功績もかなり大きい。
なお、エリナーとは、映画"HELP!"で共演したエリナー・ブロンから拝借し、リグビーはブリストルを歩いていた時に見かけた店から拝借し、エリナー・リグビーとなった。
また、登場人物のマッケンジー神父は電話帳をパラパラと見て適当にピックアップしたものだ。最初はマッカートニーで良いのでは、との意見もあったが、さすがにそうはならなかった。
しかし、時は流れ1980年代になんとリバプールにあるウールトン墓地にてエリナー・リグビーのお墓が発見され、しかも近くにマッケンジーのお墓も見つかったのだ。
しかも更に、このウールトン墓地があるのはジョンとポールが初めて出会ったセント・ピーターズ教会にあるのだ。
ポール曰く潜在意識の中から起きた出来事の可能性がある、との事ではあるが、実に背筋が冷える様なエピソードである。
いずれにしても、エリナー・リグビーとマッケンジー神父による孤独な人々の物語が、弦楽のオケと見事に融合した大名曲なのだ。
ちなみにアコースティックギターで弾いても実に気持ちの良い曲である。
・Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
1967年に発表されたアルバム"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"の表題曲であり、オープニングを飾ると共にラスト前に(Reprise)として、別のバージョンも収録されている。
世界初のコンセプト・アルバムとして、またビートルズのアルバムとして最高傑作と挙げる人々も多く、ロック史に燦々と輝き続けているアルバムである。
最初の着想はポールであり、ペパー軍曹が率いるバンドとして、1枚のアルバムにする、つまりコンセプトをアルバムをもらたす案であった。
そしてポールが作成した表題曲が本曲である。
結果的にアルバムとして大成功をおさめる事になるのであるが終始このアルバムにおけるコンセプトに賛同していたのはリンゴのみであり、ジョージは"興味が無かった。題名とジャケットだけで良いと思った"と発言しており、ジョンは"最初のコンセプト・アルバムと言われるが全く何の意味も無い。僕の作った曲はどれもペパー軍曹とそのバンドというアイデアとは全く関係ない。"と否定的な発言をしている。
ジョンが言う通り、確かに繋がっているのは、ペパー軍曹がビリー・シアーズを紹介するフレーズと、本曲の(Reprise)が入っているところだけである。
しかし前述した通り、結果的には世界初のコンセプト・アルバムとして世の中で大ヒットを記録し、ロック史に金字塔を打ち立て、伝説のアルバムとなるのだ。
これは、この楽曲の2バージョンの存在とアレンジ、ジョージ・マーティンの存在、そしてジャケットのアートワークが重要なマテリアルであると筆者は考える。
冒頭のオーディエンスの騒めき、チューニングをするオーケストラ、そしてディストーション(ファズだろうか)のかかったハードロックさながらのインパクトのあるオケによるポールの挨拶的な歌詞、ハーモニー、ビリー・シアーズ(リンゴ)の紹介により幕を開け、(Reprise)にて、オーケストラは居なくなり、よりシンプルなロックンロールとなり、3人によるボーカルでショーの終焉を歌い上げ、オーディエンスの歓声とともに曲が終わる。
そして、ラストの"A Day In The Life"が壮大なるアンコールに聴こえる。
この2曲がらあるからこそ、ジャケットの見事なアートワークがあるからこそ、このアルバムがコンセプト・アルバムとしての、またバンドとしてのまとまり、グルーヴを束ね合わせ、世の中で輝き続けているのだろう。
・Lucy In The Sky With Diamonds
1967年に発表されたアルバム"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"に収録された曲だ。
筆者がビートルズのアルバムの中で初めて購入したのは"Please Please Me"である。
理由は簡単、ビートルズの右も左もジョンもポールも解らない小学生であり、まずはデビューアルバムを選んだだけだ。
シンプルで陽気なイカしたロックンロール、これだ、さすがビートルズだ、なんて何回も聴いたものだ。
すると、当たり前だが、すぐ2枚目のビートルズが欲しくなる。
はてさて、順を追っていけば次は"With the Beatles"になって然りなのだが、なんだか雑誌や本などで勉強すると、ビートルズの最高傑作は"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"(以下、サージェントペッパー)というアルバムらしい。
では2枚目はビートルズの最高傑作を購入しようではないか、という凄く単純な思考回路でサージェントペッパーを購入したのだ。
自宅に戻り、早速アルバムを聴く。
いや、驚いたのなんの。思っていたビートルズとは全然違う音楽が流れてきたのだ。
今は当たり前の話であるが、10歳の少年の気持ちは心中察するに余りある。
てっきり間違えてビートルズ以外のアルバムを購入してしまったか、と何度もジャケットを確認したのが懐かしい思い出だ。
さすがに10歳やそこらの少年に、サージェントペッパーをいきなり聴かせて感想を述べろ、というのは無理難題な話だが、当時は買ってしまった手前、しかも大人達は最高傑作と賞賛するアルバムなので違和感を覚えながらも頑張って聴くに至る訳だ。
しかし、そんな違和感やら不安感みたいなものを吹っ飛ばしてくれたのが本曲だった。
幻想的なワルツで曲が始まる。
Aメロに加え、Bメロは更にボーカルのエコーも増し、10歳の少年の不安は募るばかりだ。
しかし、Bメロの終わりに4発のバスドラが響くと3拍子から一転して、勢いと疾走感に溢れるロックに変貌を遂げる。
カッコいい。凄い。音楽って凄い。ビートルズって凄い。
一気に色んな感情が衝撃に姿を変え少年のハートをものの見事に撃ち抜いたのだ。
今、振り返ると本曲を聴いた瞬間がビートルズにのめり込む瞬間だったのかも知れない。
頭文字がLSDだの、どうでもいい話であり、実に緩急が効いてカッコ良さが少年期から輝き続ける大名曲である。それだけだ。
・Being For The Benefit Of Mr.Kite!
1967年に発表されたアルバム"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"に収録された曲だ。
同年に"Strawberry Fields Forever"のPVを撮影している合間にジョンが骨董品店にて1枚のポスターを見つけ購入した。
1843年の2月14日にランカシャー州のロッチデイルで開催されたサーカスの宣伝用のポスターである。
この1枚のポスターにインスパイアされてジョンが主に作られた楽曲が本曲である。
実際にポスターを見て頂ければ解ると思うが、歌詞、登場人物は韻を踏む為に2箇所程変更がある以外は、ほぼ全てそのポスターに集約されている。
ジョンはサウンドにて大規模なサーカスを表現したかった。
まさにジョンの思惑通りで、煌びやかでゴージャスながら、異彩を放ち、摩訶不思議で幻想的な曲の中に引き込まれてしまう素晴らしい楽曲である。
ハーモニウムやオルガンのオーバーダビングがオケの主軸となるが、ジョンは当時のスティーム・オルガンの音が欲しかった。
そこで、ヴィクトリア朝時代のスティーム・オルガンの音源の入るテープを30cm程に切り刻み、空中に投げ、拾い集め繋ぎ合わせて逆回転にて間奏や曲の最後に用いる事により、見事にサーカスを連想させる煌びやかなサウンドを得たのだ。
摩訶不思議で幻想的な唯一無二と言える楽曲の持つ世界観とジョンのボーカルが見事に融合した筆者も大変お気に入りの作品である。
(後記)
後編へ続く。