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チェッカーズの勝手に10選〜大土井裕二氏作曲編

(前記)
チェッカーズの作曲陣の中では、曲数が幾分少ない印象がある大土井裕二さん。
しかし実に作品の完成度が凝縮されている。実に密度が濃い。
今回は、そんな大土井裕二さん作曲の作品から勝手に10選をする。

・ガチョウの物語
ファーストアルバム"絶対チェッカーズ"に収録。アマチュア時代からのレパートリーである。出だしの"卵の中から飛び出した おしりの大きなガチョウの子"までは、裕二さんのデモから、そのまま引用されている。その後の作詞は藤井郁弥さんだ。
タイトル同様、愉快で軽やかなレゲエの香るロックンロールで、森の笑い者のガチョウが、森の英雄となる歌詞との世界観が、ぐわーぐわーのコーラスや、間奏のガチョウ君によるガチョウ宣言など遊び心満点なオケに見事にマッチしている。
当時、ポンキッキに採用された愉快な名曲。

・あの娘とマッシュポテト
シングル"涙のリクエスト"のカップリングで作詞は藤井郁弥さん。こちらもレゲエ、スカがほんのり香る明るい、コーラスもキュートなロックンロールで、主人公が目当ての女の子がウェイトレスをしている店に通い、マッシュポテトをいつも注文し、通った挙句、ある日ついに!、というアメリカングラフティのワンシーンの様なお洒落な歌詞が曲と見事に調和している。

・恋のGO GO DANCE!!
アルバム"もっとチェッカーズ"に収録。作詞は藤井郁弥さんで、セルフプロデュースである。
郁弥さんの、"Hey!baby!踊ろうぜ!"から始まる、若さみなぎる、かつて、アマチュア時代にチェッカーズのメンバーが踊っていた久留米のダンスパーティに招待された様な気分になる、ストレートでゴキゲンな50'sの香り溢れるロックンロールだ。フミヤさんの、おいらのアメ車、いかした子猫、ダンスは誰にも負けないNO.1、などの古き良きフレーズを用いたキュートでイカした歌詞もバッチリハマっている。下の画像は、GO SUMMER TOURのものであるが、ダンスも演奏も最高にイカしてる。

・Miss アニーの証言
アルバム"FLOWER"に収録。作詞は藤井郁弥さん。チェッカーズの楽曲の中で裕二さんがリードボーカルをとる唯一の曲だ。

この"FLOWER"というアルバムは、メンバーが制作した楽曲は全てセルフプロデュースの形を取っており、次のアルバム"GO"から全曲メンバーオリジナルに、そしてシングルも"NANA"からメンバーオリジナルに移行する。従って、この"FLOWER"というアルバムは、チェッカーズにとって位置付けとして大きな分岐点となる。

話は曲に戻るが、ムーディーなピアノから始まり、ピアノがブギに移行し、そのままゴキゲンなロックンロールが始まる。Bメロのブレイクや、演奏全体を通して、実に明るいロックンロールである。
また特筆すべきは郁弥さんの歌詞で、つまるところアニーを妊娠させたのは誰だ?ん?もしかして自分か?という展開で、間奏の後ブレイクが入り、2題目のAメロがテンポを落とし、ブルージーな雰囲気ボーカルで始まり、続いてブレイク、セリフの掛け合いがあり、そこで真実が!という、物語性も楽しく郁弥さんのセンスが遺憾なく発揮され、陽気なロックンロールとアレンジとピタリと融合する。実に楽しいロックンロールの名曲だ。

・I LOVE YOU,SAYONARA
”NANA”に続くメンバーオリジナルの2曲目となるシングル。作詞は藤井郁弥さんの楽曲で文句なしに、裕二さん作曲の最高傑作、そしてチェッカーズの中でも、1、2を争う名曲であるミディアムバラードよりのROCKである。イントロは尚之さんのサックスから始まる。シンプルにて最低限にして、美しく切なさを伴いながらストレートに胸に刺さるリフは、尚之さんのサックスのリフの傑作の一つである。それからAメロへ。アルペジオをバックに郁弥さんが少し切なげに歌い上げ、1回目のAメロが終わるとサックスを伴い、2回目のAメロが力強いものになり、ビートの効いたBメロを経て、怒涛のサビへ。こんなに力強く、切なささえも美しく力強く、心の中の葛藤や悲しさや決意を調和し、音にした様な素晴らしいサビは、他にあるだろうか。享さんのカッティングも切なさ、力強さがみなぎり、名曲に花を添えてる。
そして、郁弥さんの名フレーズ、I LOVE YOU、だけど、I LOVE YOU、I LOVE YOU、SAYONARA、で締めくくられる。
お互いに愛し合っているのに、別れなければいけない恋人の不条理な愛を、見事に歌い上げた大傑作だ。

T.G.I.F.
シングル”ROOM"のカップリング。作詞は藤井郁弥さん。
ロカビリーという音楽を、当時のチェッカーズに演らせたら、こうなるんだぜ!と、見せつけた名ロカビリーである。歌詞は、毎日、同じ様な仕事に明け暮れているが、金曜日の17時にの鐘が鳴ると、翼がニョキっと背中に生え、本当の人生が始まる!神様よ、金曜日をありがとう!という、THANK GOD IT'S FRIDAY.、でT.G.I.F.な訳だ
非常に元気のでる歌詞、オケであり、間奏はいきなりJAZZになるなど、チェッカーズの音楽性の幅広さ、実力、余裕すらを見せつけてもらえる楽曲だ。

・HEART IS GUN
 〜ピストルを手に入れた夜〜
アルバム"SEVEN HEAVEN"に収録。作詞は郁弥さん。
この曲は、筆者にとって非常にフェイバリットな曲であり、未だに浮かない気分の時に、自分を鼓舞して頂ける、ありがたい曲である。
オケはスカの香り漂う、ゴキゲンなロックンロールで、裕二さんの本領発揮だ。また、尚之さんの、ポルカっぽいソプラノサックスのリフが、この曲を何倍にでも盛り上げる。
歌詞は、主人公がピストルを手に入れた夜に、とてつもない自信を同時に手に入れ、実物の銃を持たなくとも、ハートに自分だけのピストルを持ち、自信を持って前向きに目覚めろ、という前向き極まりない、メッセージ性に富んだものであり、オケと見事に融合し、いつも元気にさせて頂ける素晴らしい名曲である。
ライブの大定番、郁弥さんがピストルを手にクルクル回しながら歌い、会場が一体化しライブハウスの様に盛り上がる。
しかし、実際の映像を観たら解って頂けるだろうが、あれだけ自身がクルクル回りながら演奏する楽器陣には脱帽である。

・LOVE 91'
チェッカーズ、25枚目のシングル。作詞は郁弥さんだ。
実に王道のミディアムテンポのラブバラードであり、幸福感しかない、流石なラブソングである。題名の通り、1991年にリリースのラブソングだが、当時のチェッカーズは、打ち込みを用いた16ビートにも果敢に挑戦している時期で、この曲もドラムは打ち込みである。
オケはアカペラから始まる、古き良きロックバラードで、チェッカーズらしいドゥーワップのコーラスも絶妙、歌詞もネガティブな事は一切無く、素晴らしいラブソングであるが、ひとつ、ドラムは打ち込みにする理由があったのかは正直、この曲が大好きな故に疑問に残る事は否めない。
しかし、チェッカーズらしい、王道で幸せで前向きなラブソング。それは誰にも否定でさない。

・YELLOW CAB
ラストアルバム"BLUE MOON STONE"に収録。作詞は郁弥さんだか、リードボーカルは高杢さんである。
"BLUE MOON STONE"というラストアルバムは解散が決まってから制作されたアルバムで、全体的になんとなく解散前の一緒独特な、いつも元気なチェッカーズ!とは、少し距離を置いた、落ち着いた曲調が多いアルバム(少し、思い込みかな…)だか、この曲は遊び満点、ソウル、ファンクがほのかに香る、実に楽しい16ビートのロックだ。
バブル、イエローキャブ(当時の日本の女性を示すスラング)、クラブカルチャー、メイクラブなどをタクシーをメタファーに用いた、とことんゴキゲンで明るく描いた歌詞、そしてサビにおける郁弥さんの掛け合いが実に気持ちが良い。

・THANK YOU VERY MUCH!!
チェッカーズの最後のシングル"PRESENT FOR YOU"のカップリング。予定ではアルバム、シングルの"BLUE MOON STONE"が本来なら最後のアルバム、シングルであったが、もう一曲だけ、題名そのままにファンへのプレゼントで作られたシングルある。このシングルのクレジットがカップリングと共に作詞/作曲がTHE CHECKERSである。最後の7人からのプレゼント、という意味合いだろう。
さて、この曲はコアなファンなら作曲は裕二さんだろう、と予測のつく明るいレゲエだ。
レゲエのリズムに乗せて、チェッカーズの始まり、福岡のアマチュア時代を思い出すかの様な歌詞と、サビの、始まりは流れ流れ東の街、は、これからがまた東京での始まりなんだ、と示唆する歌詞だ。
題名の”THANK YOU VERY MUCHI!!"。
題名からと、曲全体で、今までありがとう!これからもよろしく!とも捉えられる。
カラッとしたレゲエに、少しの切なさと、前向きさのエッセンスが加えられた様なオケとコーラスが歌詞とベストマッチして有終の美を飾っている。
ドラムの徳永善也(クロベー)さんも、今は亡くなってしまい、チェッカーズ7人全員揃っての最後のレコーディング曲だ。

(後記)
前記にも書いた様に、他の3人に比べて、楽曲数はやや少ない。だか、その濃密さ、完成度が凝縮された曲が多く、10選するには、やはり頭を悩ませた。
裕二さんの楽曲は、実に太陽の様に明るく、暖かい曲が多い。

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