勝手に10選〜夕焼けが似合うイカした曲(前編)〜
(前記)
色々なテーマを自身で設定して、自身が聴いてきた大好きな曲をプレイリストから引っ張り出して勝手に10選を行ってきた。
久しぶりに、なんとリクエストを頂いた。
世の中に星の数ほど存在する素敵な曲を全て網羅している訳でも無く、何かの縁があって自身のプレイリストにドッカと腰を据えた曲から、有名無名を問わず、バイアスはあろうとも好き勝手に曲をピックアップしている筆者としては、なんとも嬉しい事である。
そのリクエストに僭越ながらお答えすべく、今回は"夕焼け"をテーマとする次第だ。
単にタイトルに夕焼け、となるとかなりレンジが小さくなるので、タイトルや曲中に夕焼けを感じさせるフレーズがあったり、夕焼けを見ながら聞きたい様な、そんな観点から今回は、夕焼けが似合う曲として、勝手に10選する。
・落陽
1973年に吉田拓郎さんにより発表されたアルバム"よしだたくろう LIVE '73"に収録された曲だ。
筆者がこの企画をするにあたり、真っ先に思い浮かんだのが本曲である。
プロテストソングとしてのフォークミュージックがサブカルチャーの一端を担っていた時代に登場した吉田拓郎さんであるが、フォークというジャンルにポピュラリティーをもたらし、フォークからロック、ニューミュージック、J-POPまでの架け橋となったと言っても過言ではない。
実質的なシンガーソングライターとしての地位を確立して、女性もギターを手にする時代を作り出し、その業績たるや語ると終わらないが、例えば、音符1つに捉われずに歌う、いわゆる言葉を自由にメロディに載せる、字余り、字足らず、は今では当たり前であるが、吉田拓郎さんがパイオニアである。
本曲であるが、吉田拓郎さんの代表作として、非常に人気がある曲であるが、当時はライブ盤に収録されていただけで、スタジオレコーディングのバージョンは長らく存在しなかったが、それでも代表作に君臨するのが、この曲が如何に人々の心を掴んでいるかが良く解る。
旅にて北海道で出会った、ギャンブルに明け暮れる老人との束の間で培った友情。
男の話を、人生の話を沢山聞いていたのだろう。サイコロを2つ土産にもらい、帰りのフェリーには見送りに来てくれた。
そんな老人との別れの情景に夕陽が冴える。
このストーリー性のある歌詞にオケが見事に融合し、お互いを高め合っている。
実に夕焼けに相応しい曲なのだ。
・心の色
1981年に中村雅俊さんのシングルとして発表された曲だ。
元々は中村雅俊さんが主演するドラマの挿入歌であり、別に主題歌は存在したのだが、本曲の反響があまりに大きくて、途中で同ドラマの主題歌が本曲に変わる、という逸話を持つ曲だ。
筆者にとっても昔から大好きな曲であるが、今考えてみると、まだ当時は7歳前後であり、リアルタイムで衝撃を受けたとは、ちょっと考えづらいので、家族の車の中ででも聴いていたのであろうか。
この曲の素晴らしい点はズバリ緩急である。
イントロからAメロにかけては悲壮感すら漂う、ピアノと弦楽による寂しげなオケで、中村雅俊さんも抑揚を少なく、しっとり歌っている印象である。
曲の構成としてはAメロ、Bメロ、サビとなるであろうが、この曲に関してはAメロ、サビ1、サビ2と捉えたい。
Aメロが終わるや否や、ガラリと曲調が変わり、実に力強く、前向きさに少し切なさを加えたロッカバラードへと見事に変貌を遂げ、更にサビ2に入ると、力強さが増し、突き抜けるメロディが実に気持ち良いのだ。
歌詞は散文的かつ抽象的ではあるが、前向きに励まされる内容であり、丁度Aメロからサビへ移行する緩急のつくタイミングで、"昇るサンライズ"、と、"燃えるサンセット"のフレーズが肝となり更にサビ全体を盛り上げてくれる。
夜明けと夕焼けのシーンにおいて、どちらにもピタリとはまる大名曲なのだ。
・終わらないSun Set
1987年に吉川晃司さんのシングルとして発表された曲であり、アルバム"A-LA-BA・LA-M-BA"からのシングルカットでもある曲だ。
吉川晃司さんといえば、孤高のロッカー、俳優としても活躍されているアーティストであるが、その始まりは実に面白いエピソードにある。
高校に進学する前にギターを手に入れ、高校1年生の時からバンド活動を始めた。
高校2年生の時に佐野元春さんのライブを鑑賞し感銘を受け、ミュージシャンになる事を決意する。
ここで吉川さんがとった行動が実にユーモラスで素晴らしい。
場所は広島であり、スカウトされる可能性は皆無に近い。
そこで吉川さんは大手プロダクションに宛てて"広島にスゴい奴がいる、見に来ないと一生悔いを残す"と手紙を書いて送りつけたのだ。
すると、本当にプロダクションの方々が広島まで吉川さんに会いに行って、幾度かのオーディションを経て正式に契約を交わし、高校を中退して上京に至るのだ。
しかも、上京したものの他の新人達とともに歌やダンスのレッスンの日々が続き、嫌気がさした吉川さんは夜な夜なクラブ(ディスコ)に通い詰めダンスの腕を磨いた。
そして、プロダクションの社長室に自ら赴き、デビューを直談判し、その度胸を気に入った社長の意向でデビューに至るのだ。
実に夢に向かって実直に行動して、それにより多少の運も味方して、夢を掴み取ったこのストーリーは非常に感慨深いものがある。
本曲は吉川晃司さん作詞作曲により、ニューヨークの川沿いのカフェで20分程で制作された。
素晴らしいバラードで実に心地が良い。
様々な要因があって疲弊してしまい、美しい夕焼けを見て心が癒され、夜に眠れる勇気が欲しいから、ひたすらに夕陽を眺めている。
歌詞もストレートにメロディラインも実にシンプルに美しく、すっと心に沁みる。
川沿いでサンセットを見ながら聴きたい曲である。
デビュー当時はアイドル路線であったが、当時からオリジナルの楽曲を持ち、アーティストへの道を自ら模索して、今は日本を代表するロックスターとして外せない存在となった吉川晃司さんの素晴らしいバラードに身を委ねたい。
・思い出の九十九里浜
1991年にMi-Keのデビューシングルとして発表された曲だ。
元々はB.B.クィーンズのコーラスを担当していたグループのメンバーであった宇徳敬子さん、村上遙さん、渡辺由美さんの3人で1991年に結成されたのがMi-Keである。
リードボーカルである宇徳敬子さんであるが、短大生の頃、原宿を訪れた際にスカウトされて芸能界に足を踏み入れる事となった。
最初はモデル業、タレントとして活動しながらボーカルのレッスンを受けていた。
そして1990年に上記に記したB.B.クィーンズのコーラスを経て、Mi-Keとして歌手デビューを果たす。
さて、ここからが宇徳さんの凄いところで、Mi-Keの活動においては自ら作詞作曲した曲を発表したり、多重コーラスでその才能を発揮して、コーラスアレンジを自ら行い、実際のレコーディングの際のハモリは殆ど自ら行っているのだ。
本曲でも自身でハモリのアレンジをし、レコーディングの際のコーラスは9割以上が宇徳さんによる。
後の話となるがソロとしてデビューした後も、コーラスとしてB'zやTUBE、松本孝弘さん、相川七瀬さんなど名だたるアーティストの楽曲にコーラスとして参加している。
本曲もそんな宇徳さんのボーカルとハーモニーが冴に冴えている楽曲である。
潔い程にGSサウンドを用いて、歌詞の内容もGSにおける名曲のタイトルを多様しコラージュの様に曲の世界観を構築し、コミカルなマテリアルもあるが、宇徳さんのハーモニーや秀悦したメロディライン、あと忘れてはいけないのが振り付け、全てが実に気持ちが良い楽曲となっているのだ。
ちなみに歌詞中の"夕陽が泣いている"のフレーズはザ・タイガースの楽曲のタイトルである。
・夕暮れ
1993年にTHE BLUE HEARTSによって発表されたアルバム"DUG OUT"に収録され、同年にシングルカットされた曲だ。
1993年にブルーハーツは"STICK OUT"と"DUG OUT"という2枚のアルバムをリリースする。
前作のアルバムである"HIGH KICKS"の頃に、バンドとしての行き詰まりを感じていた甲本ヒロトさんが、ブルーハーツの本当の音を示し、ブルーハーツのリスタートを図るべくメンバーにその想いを伝えると、多数の曲数が集まった。
そこで、曲調で区切りテンポが早いロックを"STICK OUT"に、スロー、ミディアムなロックを"DUG OUT"に分けて、2枚アルバムを発売する事となった。2枚でひとつのアルバムとしている
しかし、甲本ヒロトさんはアルバムの出来は良いが、頑張ってここまで、ブルーハーツではここまでしか出来ないな、と感じ、また、この頃にはブルーハーツのメンバーが集まった時の空気感やムードが1番耐え難かった、と後に語っており、この2枚のアルバムを発売した後の凸凹ツアーにて、メンバー1人1人に脱退の意思をつげ、甲本ヒロトさんが脱退をするなら解散という結論に達した。
また、真島昌利さんは後日、あの時ヒロトが脱退してなかったら自分がしてた、と語っている。
まだレコード会社との契約が残っていた為、アルバムをもう1枚制作しなければならず、ラストアルバム"PAN"を発表するも、内容はほぼ元ブルーハーツによるメンバーの楽曲の寄せ集め、といったアルバムになったのだ。
従って、"STICK OUT"と"DUG OUT"がブルーハーツの実質的なラストアルバムであり、その"DUG OUT"からシングルカットされた本曲がブルーハーツのラストシングルとなった。
実に爽やかで少しノスタルジックな雰囲気も香るミドルテンポのバラードだ。
アコースティックギターのストロークが主軸となり、演奏もタイトかつストレートであり、歌詞もストレートに、生きている、という事の素晴らしさが実にシンプル胸に突き刺さる名曲である。
(後記)
後編へ続く。
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