勝手に10選〜カッコいいアルバムジャケットPart.5(洋楽編)〜
(前記)
ロスアンゼルスへ旅行に行く機会が多い。
毎回、解っていながら困ってしまうのが現地で調達したレコードの重量である。
お目当てのレコードはもちろん、今の時代に"ジャケ買い"、つまるところジャケットを見て、ジャケットに惹かれて音も聴かずに買ってしまう事だが、筆者が少年時代には、レコード店に通っては、目当てのレコード以外にふと目に留まったレコードを買って、ワクワクしながら家に持ち帰り、プレーヤーからどんな音が待ち受けているかドキドキしながら針を落としたものだ。
もちろん外れも多かったが、新しい出会いもそこにはある、未だにそんな"ジャケ買い"をしてしまいトランクの重量に頭を悩ませている。
音楽にはレコードのジャケットの様な視覚的要素もあった方がより楽しいと筆者は思う。
ジャケットだって、そのアルバムにおける重要なマテリアルであり、メッセージであり、名刺がわりとなる。
だから"ジャケ買い"という出会いも存在するのだ。
レコード屋を後にし、重いレコードを抱えて、ワクワクする心を持って見る帰り道の空や風景は、いつもと少し違って見えるはずだ。
今回もカッコいいアルバムジャケットを洋楽編、邦楽編に分けて勝手に10選する。
・Hello Dolly
ジャズ界の巨星、ルイ・アームストロングによるアルバムだ。
背景が少しクリームがかった白で、下3分の2が、モノクロームによるサッチモの満面の微笑み。
上3分の1の背景を白にする事で、全体的な雰囲気が明るく暖かくなり、赤文字が実に映えている。
文字のフォント、配列も素晴らしい。
・Clifford Brown & Max Roach
ジャズのトランペッターであるクリフォード・ブラウンがドラムにマックス・ローチを迎えたアルバムだ。
濃いめのオレンジのモノトーンに白文字が実に映えており、フォト自体も文字のフォント、バランスも全てが素晴らしい。
・Bags' Groove
マイルス・デイビスのもと、ソニー・ロリンズ、セロニアス・モンク、ミルト・ジャクソンらが集う、なんとも豪華な名盤だ。
緑の背景に白と黄色を交互に使用し、よくみると絶妙なバランスで文字の大きさが異なる。
しかも絶妙に配置する事での全体的なまとまりが素晴らしい。
中間にキッチリとフォントを整えて、黄色と白交互にアーティスト名を羅列する事で見事な緩急となっている。
・One Dozen Berrys
ロックンロールにおけるエレキギターの礎を生み出したチャック・ベリーのアルバムである。
Chuck Berryとstrawberryをかけたのであろうか。
なんの一貫性もなく、形も向きもルールも無くバラバラな苺が敷き詰められている。
そこに、ノスタルジックさ、無骨さと同時にいかにも楽しいロックンロールが聴こえてきそうだ。
アーティスト名を白抜き、タイトルを黄色にする事でさりげない中にも存在感をしめし、絶妙なバランスでクリーム色の苺のシルエットの中にチャック・ベリーが頓挫する。
なんとも古き良きロックンロールが聴こえてきそうだ。
・The Times They Are a-Changin'
ボブ・ディランのサードアルバムだ。
このクリーム色とやや緑がかった黒のモノトーン、コントラストが素晴らしい。
ディランの表情、ボタンの空いたシャツも実にカッコいい。
アーティスト名とタイトルを真っ黒にして、向かって右に寄せる事でディランのフォトと互いを高め合って見事に融合している。
シンプルで計算されたカッコ良さが光る典型例である。
・Disraeli Gears
エリック・クラプトン率いるクリームのセカンドアルバムだ。
クラプトンと同じマンションに住んでいたマーティン・シャープというアーティストのデザインである。
筆者の偏見であるが、いわゆるサイケデリックは色を多用し、抽象的で、少しデザイン的にごちゃごちゃになるイメージがあるが、このジャケットは赤を基調とし、パープル、黄色、黄緑、青などの差し色が実にバランス良く配色され、メンバー、バンド名、タイトルのバランスも実に素晴らしい。
圧巻のデザインである。
・ London Calling
クラッシュのアルバム"London Calling"のジャケットだ。
エルビス・プレスリーのパクりで有名なジャケットであるが、このフォトが実にカッコよく、これがパクりだと認識していない人もいるのではないだろうか。
モノクロームのフォトにピンクと緑でタイトルが映え、絶妙なフォントにて踊っている様だ。
ゴキゲンなロックンロール、パンクが聴こえてくる。
・Sounds of Silence
サイモン&ガーファンクルのアルバム"Sounds of Silence"のジャケットだ。
森に向かい道を歩む2人、この道が向かって左に位置する事により、クレジットを右に大きく取り、そのバランスが素晴らしい。
背景が緑の多い位置に白抜きでアーティスト名、背景が黒味がかった位置に緑と白抜きでタイトルとクレジット、そして砂利道が白味がかっており、トータルとしての配置、色の配置が絶品である。
まさに、アコースティックなサイモン&ガーファンクルの世界観にぴったり合致している。
・Café Bleu
ポール・ウェラー率いるスタイル・カウンシルのアルバム"Café Bleu"のジャケットだ。
ジャムといい、スタイル・カウンシルといい、ポール・ウェラーが絡むジャケットはクールなものが多い。
ポール・ウェラーとピーター・ウィルソンの青によるモノトーンに、白抜きでタイトル、アーティスト名を記し、2人の間に白抜きで線を置く事で全体的なバランスが締まっている。
実にシンプルかつオシャレという言葉がぴったりのカッコいいジャケットだ。
・Layla and Other Assorted Love Songs
エリック・クラプトン率いるデレク&ドミノスのアルバム"Layla and Other Assorted Love Songs"のジャケットだ。
タイトルもアーティスト名も無い絵画である。
エミール・セオドア・フランセン・ド・ショーンバーグが書いた絵で、"La Fille au Bouquet"という名の絵であり、クラプトンがこの絵をみた瞬間に当時恋をしていたジョージ・ハリスンの妻バディ・ボイドを想起させ、アルバムのジャケットに採用した。
少しキュビズムの香りもして、デザイン、色の配色、バランスも素晴らしい。
元々は現代美術の範疇にあった絵画が、このジャケットに抜擢され、ロック愛好家のなかでは中では最も有名な絵画、となったのは何か不思議な運命と魅力を持った絵画なのである。
(後記)
邦楽編に続く。