勝手に10選〜カッコいいアルバムジャケットPart.3(洋楽編)〜
(前記)
名盤には名ジャケットが付随するものである。
なんて格言はない。今しがた、筆者が勝手に作ったフレーズだ。
筆者のリスナーとしての音楽人生を振り返ると、始まりはレコード、カセットテープ、そしてCDの登場、期間が短い印象だがMDという時代もあり、iPODの登場、ネットからの楽曲のダウンロード、これは恥ずかしながら経験が無いのだが、サブスク。
この様な時代の流れを経験してきた。
実に便利になったのは確かだ。
しかし、何かが浅く、軽くなったのも否めない。
ジャケットがその一つだろう。
今や、音楽と出会う際にジャケットというものを介さなくなっているのだ。
レコードからCDに移行する際には、なんだかちっぽけになり、手にとっても飾っても、レコードの重厚感、迫力みたいなものが軽くなった。
さらに時が流れ、今はジャケットがあったとしてもコンピューターの中に切手位のサイズで存在する、かどうかもよく解らない。
音楽を聴く前に、まずジャケットを目にし、手に取らなければ、音楽にたどり着けない時代もあったのだ。
壁にジャケットを飾り、眺めながら音楽に酔いしれる時代もあったのだ。
ジャケットを見て、なんかダサい、と音楽にまで辿り着かない時代もあったのだ。
ジャケットを見て、カッコいい、聴いてみよう、という時代もあったのだ。
ジャケットが音楽を奏でる時代、音楽を聴くきっかけ、媒体となっていた時代が確かにあったのだ。
そんな、個人的な他愛のないジャケットへの想いを抱きつつ、カッコいいジャケットを勝手に10選する。
ジャズ界のトランペッターでかつシンガーでもあるチェット・ベイカーの名盤である。
このジャケットは音楽のジャンルというカテゴリーを超越する名作だ。
端正な顔立ちでボーカルをレコーディングする姿を中間色でくすんだ赤、黄色、緑で分割し、譜面台の位置に白抜きで絶妙のバランスとフォントを用いてタイトル。
素敵なジャズがジャケットから聴こえてくる。
ジャズ界のテナーサックス奏者であるソニー・ロリンズの大名盤である。
テナーサックスを吹くソニー・ロリンズのシルエットを少し暗めの青を用いて表現し、コントラストが実に美しい。
ソニー・ロリンズと参加ミュージシャンの文字は少し薄くし、題名のSaxophoneだけを背景と同色にし、Colossusのみを白にする事で絶妙なアクセントを付ける素晴らしいアートワークである。
ジェームス・ブラウンによるニューヨークのハーレムにあるアポロ・シアターによって行われたライブ盤である。
上3分の1くらいが看板となっているが、実に複数の色を使っているが、ベースの黒に見事に調和している。
フォントもデザインも素晴らしい。
看板の下は、色彩豊かにぼやかす事によって、様々な人々が集い、熱気や笑顔だったり、楽しさ、嬉しさ、色んな事が想像できる。
実に色遣いも美しく、弾む気持ちにさせてくれる。
ジャケットの中における緩急が見事な傑作だ。
エリック・クラプトンのソロアルバムだ。
スロー・ハンドとはエリック・クラプトンのあだ名である。
ライブの際にクラプトンがよく弦を切ってしまい、弦を張っている間、オーディエンスが遅いテンポで手拍子を打っていた。
また、ギターでテクニカルなプレイをしているのに、手が激しく動いている様に見えない事から、という2つの説がある。
ジャケットはほぼネックと腕のみをモノクロにシンプルに写し出しており、空間に記された名前と題名も絶妙な位置とフォントだ。
実にカッコいい。
このジャケットを見ると、あだ名の由来は後者では?と思ってしまう。
デヴィッド・ボウイのアルバムジャケットだ。
端正なルックスを持つデヴィッド・ボウイの魅力を凝縮した様なジャケットである。
この写真は日本人の鋤田正義さんによる撮影だ。
この不思議なポーズはエゴン・シーレの自画像の物真似と言われているが、このポーズのお陰で、モノトーンにおける黒、白のバランスが絶妙になっており、さりげない題目のフォント、位置も実にカッコいい。
ジェフ・ベックのアルバムジャケットだ。
グレッチのギター、ブロンドの美女、フォントの異なる文字を駆使して、上にスカイブルーを用いて50'sを感じさせるデザインでアーティスト名を、女性の足元に赤く、フォントもカッコよく、踊る様にタイトルを記している。
カッコいいロカビリー、ロックンロールの香りがプンプンとするのだ。
ガンズ・アンド・ローゼスによって2枚同時に発売されたアルバムだ。
両方とも黒を背景に、Iでは、明るい黄色と赤によりコントラストも鮮やかに、IIでは、スカイブルーとパープルの近似色を用いたシックなコントラストと、相対する色遣いが素晴らしい。
グラフィックの部分とバンド名、題名のフォント、バランスもよく、各々I、IIだけ色を変えているのも良いアクセントになっている。
共にモノトーンで描かれる子供のペンと頭部にチラリと入る各々のコントラストのカラーも気が利いている。
プライマル・スクリームのアルバムジャケットだ。
ストーンズにしろ、ジャミロクワイにしても、バンドを象徴するアイコンが存在すると、安定した攻め方が出来る好例である。
色遣いも鮮やかに、どんな音楽が聴こえてくるのか、見ているだけで実に楽しみに高揚させられるジャケットである。
ケミカル・ブラザーズのアルバムジャケットだ。
モノトーン系の傑作である。
アルバムの3分の1程度に二階調で白の人物を配置する事で背景の黒が強調され、ケミカル・ブラザーズのアイコンであるフォントが下の隅に、その存在感をそっと示している。
黒という空間を実に上手く使って見事にミニマムな世界観を作り上げているジャケットだ。
キース・リチャーズのソロアルバムのジャケットだ。
このブルースとロックンロールが染み込んだ皺を、余裕とも不敵とも思える笑みを、半世紀以上ロックスター、ロックギタリストの頂点に君臨し続けたオーラを感じ取らざるを得ない。
どんなCGを駆使したって、優れたデザインだって、比較の対象とはならないのだ。
モノクロのキースに、同系色の名前、くすんでいるが存在感が抜群の赤で記された題目があれば、言うことはないカッコ良さなのだ。
(後記)
邦楽編へ続く。
読んでくださった方々へ
ありがとうございました