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9.11~21回目の祈りを

米国では『9・11同時多発テロ』から21年が経過し、その出来事自体を知らない若者が増えており、風化を危ぶむ声があると報じていました。世界では、戦争や紛争、テロなどが絶えることもなく、大規模な自然災害や火災等も相次いでいる中、やむを得ないところもあるのでしょうが、2001・9・11に起きたことは、私の脳裏には現在でも鮮明に焼き付いています。

当時はスマホなども普及しておらず、緊急情報のほとんどはテレビから得られていた時代でした。ちょうどその日、私は東京に出張中で、夜の食事を終えてから宿泊先のホテルの部屋に入り、何気なくテレビをつけると、ニューヨークの高層ビルから煙が上がる様子が映し出されました。

「火事でも発生したのだろうか」と思って観ていると、航空機が隣のビルに激突し、しばらくするとそれらの高層ビルが次々に崩れ落ちていきました。我が目を疑い、「映画の特撮か」と思ったほどです。それは、まさにニューヨークで現実に起きていたこと。崩れゆくビルから少しでも遠くに離れようと懸命に駆け出す人々、ビル内の事務所の大量の資料が紙吹雪のように辺り一面に舞い、ビルの崩落とともに粉塵がものすごい勢いで襲いかかる、それらの様子をじっと見つめていました。

結果的に2,977人が命を落とし、その中には救助にあたっていた消防士等も多数含まれていたことを知りました。そして今でもトラウマで悩まされる人は少なくないようです。私ですら、今でも忘れられないことなのですから。

翌年7月、私は渡米し、その地『グランド・ゼロ』を訪れました。まだ1年も経っていないのに、残骸や瓦礫はすっかり片付けられていました。ただ、そこは犠牲者への祈りの場所となり、多くの人たちが訪れていました。

風化を危ぶむ理由として、遺族が運営してきた『9・11トリビュート博物館』が8月中旬に閉鎖されたことにあるようです。2006年にグランド・ゼロに建てられた博物館は、2011年には50万人超が訪れていたとのことですが、2001年はコロナの影響もあり約2万人に。閉鎖の理由は資金難とのことで残念です。

国営の博物館は今後もあり続けるようですが、祈り、伝える場は一つでも多いほうがいい。ましてやあの出来事を遺族の立場で訴え続けた場所が失われてしまったことは、風化を加速させるのではと懸念してしまいます。

テロがきっかけとなり、その後も多くの人々が命を落としています。あの事件を遺族の哀しみだけに閉じ込めてしまってはいけません。もう一度ニューヨークを訪れることでもあれば、再び訪れ、祈りを捧げるつもりでいます。

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