官民ファンドの見直し~存在意義を問う
『COOL JAPAN(クールジャパン)』とは、最近あまり聞かれなくなった言葉の一つですが、個人的にNHKBS放送の『COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン〜』という番組は、結構気に入っています。世界各国の人たちが目を止める『クールな日本文化』の数々から、新たな魅力に気付かされることは少なくありません。また番組での会話が、日本語と英語が入り交じり、テロップに英訳と和訳が表示されるので、「リスニングとリーディングの両方の勉強にもなるな」と思いながら観ています。
そのクールジャパンを普及させることを目的に2013年に設置された『海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)』が整理統合の対象になっているとのこと。300億円を超える多額の累積赤字を抱え、そもそも効果にも疑問が持たれていたようです。いわゆる13ある『官民ファンド』の一つであり、それ自体も以前から赤字体質や民業圧迫などが指摘されていました。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220620-OYT1T50172/
官民ファンドといえば、現在の『産業革新投資機構』の前身のような存在だった『産業再生機構』という組織がありました。ITバブル崩壊やデフレ不況等の影響で経営が厳しくなった企業に対して、債権買取りや資金の貸付け、債務保証、出資などの資本面だけでなく、人材や経営ノウハウも提供することで、傾きかけた企業を文字通り再生させることを目的としていました。カネボウやダイエーなどの再建に取り組んだその機構のことを今も覚えているのは、再生第1号案件として、地元熊本市の九州産業交通に白羽の矢が立ったからです。
九州産業交通は、交通や運輸事業を中心として観光やホテル事業など多方面に事業展開し、中心部の再開発事業の鍵を握る企業でもあり、地元には無くてはならない存在として、当時、再生の行方に注目が集まったものです。結果的には、本業の交通関連事業はHISグループへ、旧運輸部門はオリックス系の物流会社フットワークエクスプレスに売却され、その後一部形を変えながら現在も企業として存続し、地域経済に影響を与え続けています。
官民ファンドの見直しは必要だと思います。数が多すぎるし、ガバナンスもあまり効いていない。一方で民間ファンドも充実してきており、それらとの棲み分けも大事な視点です。ただ、採算性については、公の関わるファンドの存在意義として、少し長い視点で評価されるべきものと思います。クールジャパン戦略も、機構の恩恵がどの程度あったのか、あるいはほとんどなかったのか、しっかりと検証してほしいものです。私自身は、地方経済活性化の観点から、ファンドの存在意義をあらためて問い直したいと思います。