『あいまい』も悪くない
来日中のバイデン大統領のある発言が波紋を広げています。
「中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事介入する意思はあるか」と記者に問われて、「イエス。それがわれわれの責務だ」と答えたそうです。即座にホワイトハウス高官は「米国の台湾政策に変更なし」と釈明。一方、中国は反発。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7bb2c10f8a9414d7cdf281ced446d6a6656a8f7a
これまでのアメリカの台湾政策は『あいまい戦略』。米国が台湾を防衛する意思があるかどうかを明らかにしないことで、中国を疑心暗鬼にさせる効果を狙ったというものです。ならば、バイデン大統領が意思を明確にしたことで、戦略の見直しを迫られるのかと思いきや、こんな論評をする人がいました。
「大統領の発言とは真逆のことをホワイトハウス高官が言及することで、あいまいさはより高まった。そして、相手にとっての脅威が増した」
あなたは、あいまいにしていることってありませんか?世の中、スパッと割り切れることの方が少なく、あいまいにしておくことって結構多いですよね。ただし、「考えるのが面倒くさい」「思慮が浅く人の意見に振り回される」「単に優柔不断」、そんなあいまいさは論外ですが、「よくよく考えた上で結論を出さない」、台湾政策のように「戦略的にあいまいにすることで、相手に不気味さを覚えさせる」、そんなあいまいさは理解できます。あいまいなことが多い世の中だけに、少なくとも、その違いを見極める力は持ち合わせていたいものです。
デジタル社会では、白黒はっきりつける方が求められるのかもしれません。持論をスパッと言い切る。万一意見を違える場合にも、思い切りよく展開する。あのイーロンマスク氏がそうだと語る人がいました。あいまいなことは嫌われ、歯切れのよさが評価される、そんな時代なのかもしれません。それは、変化の激しい時代に生き残るための術なのかもしれませんね。
『あいまい戦略』は、これまで日本や日本人の得意とするところだったのかもしれませんが、最近では、国内でもスパッと言い切る人が増えてきました。バイデン大統領の発言に話を戻せば、あいまいさを高めたというよりも、政治の信頼性が低下し、不安定さが増しただけだと感じています。また、ブレーキの『あそび』のようなあいまいさを失った世界は、大事故を引き起こす可能性がある、そんな恐怖すら覚えてしまいます。
あいまいも悪くない、あなたもそう思いませんか?