民主主義を機能させる新たな試み
『くじ引き民主主義』をご存知ですか?
実際にくじを引くわけではないようですが、選挙人名簿からの無作為抽出で選ばれた人たちが、行政に対して直接進言できる機会を得るというものです。4月17日付地元紙には岡山県新庄村の例が紹介されていて、老朽化した村役場の再建について選挙人名簿から選ばれた人たちで議論されているというニュースが掲載されていました。
ちなみに新庄村は人口約1000人、約380世帯、明治以降一度の合併経験もない村です。各地で議会議員選挙での無投票当選が散見される昨今、過去3回の村議会議員選挙の結果を見ると、無投票当選は一度もありません。
前回選挙(投票日:2019年4月21日)をみてみると・・・
●定員8名に対して9名が立候補
●有権者数779人に対して投票率83.57%
●当選者の最高得票数88 票、最小得票数56票
●当選者は全員男性(立候補者も同様)
●当選者の年齢は、最高齢80歳、最年少57歳
●平均年齢67.25歳
(いずれも投票日現在)
こんなに投票率が高くて、政治参加意識の高そうな村が「くじ引き民主主義」を導入したきっかけは、村民アンケートの結果、「村民の声が議会に反映されていない」と答えた方が全体の8割にのぼったという結果に議会が衝撃を受けたからだといわれています。もっと住民の声が反映されていない議会は他にもありそうなものですが、一度も合併経験がないことからも、「自分たちの村は自分たちで」という自主自立の精神が他より強いのかもしれません。
もし、くじ引きで当たったとしたら、あなたは引き受けますか?
記事では、代表制民主主義が制度疲労を起こしていることから、国内でもこういった手法が見られるようになってきたことが紹介されていました。
●住民の声が反映されているのか?
●住民の声はどうやって把握するのか?
●低投票率では選挙結果が反映しているとはいいづらい。
●選挙が政策本位になっておらず、投票結果と市民の期待する政策は必ずしも一致しない。
こんな問題はどこも抱えているのでしょうね。
そんなことを考えていたところ、私の住む自治会の総会資料が郵便受けに投函されていました。いつもの総会議題である予算案や決算報告に加えて、「自治会員へ出産祝い金1万円を進呈」という新たな提案に目が止まりました。市町村では珍しくなくなったこうした制度を、「自治会でもやるようになったのか~」と感じました。人口減少や少子高齢化は行政だけでなく、身近な住民組織の自治会にとっても重要な問題です。コロナの影響で総会は開催されず、代わりに書面決議になるようですが、さて、結果はどうなるのでしょう。
規模の大小に関係なく、市民の声を反映するためにはもっと民主主義を機能させる必要があります。そのためには、くじ引きだけでなく、いろんな工夫が求められているのでしょうね。