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動き始めるか!?『内密出産制度』

これまで何度か取り上げてきた『内密出産制度』について、厚生労働省と法務省が、都道府県などの関係機関にガイドライン(指針)を示しました。指針では各当該機関に対して、次のことを求めています。

医療機関に対して
●母親の身元情報管理の規定を明文化
●妊婦のやりとりを含む診療録などを作成
●児童相談所に通告し、戸籍作成に必要な情報も提供

都道府県に対して
●市区町村や児童相談所と情報共有
●医療機関での対応に違法性がないか確認

児童相談所に対して
●戸籍作成に必要な情報を市区町村に提供
●子どもの一時保護や特別養子縁組、支援を適切に実施

市区町村に対して
●戸籍を作成
●母子手帳を交付
(以上、令和4年10月1日付熊本日日新聞を参照)

現行法内で一定の道筋は示されたものの、その多くは現在の慈恵病院での取り組みを追認しただけともいえます。私がもっとも問題だと思うのは、「秘密とされる身元情報の管理方法と開示の時期等について医療機関任せである」ということ。下記にドイツの例を紹介しますが、妊娠相談体制や身元情報の管理、その情報を開示するか否かの判断など、行政や司法の関与は明らかに異なります。あくまでも内密出産を「推奨するものではない」とする日本の限界なのかもしれません。

【ドイツ】
内密出産法においては、①妊娠相談所における妊娠相談 ②匿名での出産 ③内密出産の子どもの出生の届出 ④内密出生児の保護と養子縁組の手続 ⑤内密出産した女性へのアフターケア ⑥子どもの出自を知る権利と母の秘密保持との調整について規定されている。 

内密出産を希望する女性に対しては、まず避妊や家族計画等についての一般妊娠相談が行われ、そのうえで内密出産を希望する場合にのみ、第二段階の相談に進む。第二段階では、内密出産制度の手続のほか、子どもの出自を知る権利や養子縁組の手続等について、説明が行われる。

内密出産を希望する女性は①を経て、国内の病院または助産師のもと、匿名で出産できる。子どもの身分登録上の母は不明として扱われる。出自証明書には、女性の身元に関する情報が記載され、表紙に仮名が記載された形で厳封して保管される。内密出産後の女性に対しては、心理・医療面でのアフターケアが行われる。子どもは十六歳になると、女性の身元に関する書類を閲覧できる。女性がこれを拒否する場合、家庭裁判所が女性の利益と子どもの利益を比較考量し、閲覧の可否を判断する。
『妊娠を他者に知られたくない女性に対する 海外の法・制度に関する調査研究報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)』より抜粋

ガイドラインの公表に先がけて、東京都江東区のある医療機関ではゆりかごとともに内密出産を実施する計画が公表されました。詳しい内容は承知していませんが、緊急時にも対応可能な医療機関での取り組みとなれば、現実味を帯びてくるのかもしれません。結局、国を動かすのは、こうした民間での取り組みの先にあるということなのかもしれません。

ガイドラインはあくまでもガイドライン、現状を整理するもので何かを指し示すものではありません。これからも、妊娠や出産に関わる女性の取り巻く環境や生まれてくる赤ちゃんの現実を直視し、何が足らずに、何が必要なのか、社会に問い続ける必要がありそうです。

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