新陳代謝の先にやってくる地方の時代
少し前になりますが、「東京圏で初の人口減少」というニュースを驚きをもって受けとめました。東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県の2022年の人口が前年比で全て減少に転じたというものです。特に東京都は26年ぶりのマイナスで、約2万人減の約1,327万人。その他にも、全国人口は13年連続減少の一途で、減少幅は1968年の調査開始以来最多、47都道府県のうち増えたのは沖縄県のみ、なども紹介されていました。いずれも2022年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査によるものです。
これまでの国内の人口の変化を俯瞰的に見てみると、過疎的な地域から地方の主要都市及びその周辺へ、地方の主要都市から政令指定都市等のブロックを代表するような大都市及びその周辺へ、さらには東京圏へ、という『不便な田舎』から『便利な都会』へといった流れが長年続いてきました。国がどんなに地方創生の旗を振っても、人の大きな流れは基本的に変わることはありませんでした。
全国的な人口減少が進む中、先ほどの過疎的な地域は、移動手段や医療、買い物先の確保などの生活基盤が整わなくなり、現実的に人が住めない地域となっています。不適切な表現とは思いつつも、国土全体を身体に例えると、血液が行き渡らずに『壊死』する部分が、急速に広がっていることに危機感を覚えていました。例えば地元のことで考えてみると、天草や球磨地方などから熊本市および熊本都市圏に移り住み、熊本市からは福岡市や東京圏に流れていく。その福岡市から東京圏への流入も進む、そんな状況でした。
ここでは詳しくは紹介しませんが、全国20の政令指定都市の人口の変化を見ても、東京圏と同様の現象が起きているようです。変わらないと思われてきた大きな人の流れが、複雑な思いもありますがコロナで一変したことになります。
この動きはあくまでも一過性のものなのか、それとも定着するのか、その潮目をしっかりと見ておかなければならないと思っています。密を避けるようになった私たちの暮らし方は、コロナが収束したあとも続くのか。デジタル化が進み、リモートが普通のこととなれば、近くて便利なところに住む理由はかなり減ることになります。その動きを後押しするためにも「都会は便利で田舎は不便」といった固定的な観念を一掃するような政策が必要です。
それではその政策は誰が作るのか?
これまでは、種類の少ない定食屋で仕方なく注文するように、国が示した政策のメニューの中から地方の将来像を選んでいました。地方創生の計画にしたって、金太郎飴のように市町村名を隠せばどこの計画かわからないようなものがほとんどです。人口の動きが変わり、都会から地方へ人が流れてくるということは、『人財』が流れてくるということ。その『人財』によって作られる政策は、これまでのような上から目線ではなく、地域の事情を熟知したスペシャリストたちがじっくりと政策を練るようになる。そんな理想の姿に近付けていく必要があります。
従来の地方の政治家や公務員、事業家、その他諸々の新陳代謝が進むことで、これからはもっと地方が面白くなる、本当の意味での地方の時代が来る、そんな予感がしています。