子どもたちのSOS~通報する勇気
『児童相談所』をご存知ですか?児童福祉法第12条に基づき、各都道府県に設けられた児童福祉の専門機関のことで、子どもに関わる悲惨な事件の報道や、児童虐待件数の増加などで注目されて知った人も多いでしょう。略して『児相(じそう)』と呼ばれています。すべての都道府県および政令指定都市に最低1カ所以上の児童相談所が設置されており、都道府県によってはその規模や地理的状況に応じて複数の児童相談所およびその支所を設置しています。
2006年4月からは、必置ではないものの中核市にも設置できるようになりました。ちなみに熊本県内では県が2カ所、熊本市は『こうのとりのゆりかご』もきっかけとなり、政令指定都市移行に先がけて2010年に開設していますので、合計3カ所に設置されています。
そんな児童相談所を最近また報道で見かけることに。
【福岡5歳餓死、児相が不手際認め遺族に謝罪「リスクを過小評価した」】
https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/996841/
福岡県篠栗町で母親と『ママ友』が5歳の男児を餓死させたとして、保護責任者遺棄致死罪で有罪判決を受けた事件は、まだ記憶に新しいと思います。とてもショッキングな事件であり、裁判での『ママ友』による全く無責任な発言には憤りを覚え、母親はマインドコントロールされていたといわれていますが、どうにかして最悪の事態を防ぐことができなかったものか、とても残念でなりませんでした。
新聞記事を読むと、その事件に関しても児童相談所は関与していたようです。男児が死亡する1カ月前に福岡県の児童相談所が祖母から安否確認を求められ、訪問していたものの、異変を見抜けなかったというもの。所長は「職員の経験不足だった。男児に話を聴くべきだった」、「(家庭訪問で)男児に会えたことでリスクを過小評価してしまった」とし、「当時の対応は適切ではなかった」と謝罪しています。今さら謝罪されたところで、どうしようもなく、やり場のない怒りを禁じ得ないことでしょう。
各児童相談所には、一般の行政職員に加え、精神科の医師や児童心理司、また2年以上の実務経験が必要な児童福祉司などの専門職員が配置されています。児童虐待などの相談には、本来は専門の職員が担当するべきなのでしょうが、実際には一般行政職の者を児童福祉司として任用している自治体が少なくありません。一般行政職の職員は異動のサイクルが短く、専門知識が蓄積されない問題もあります。今回、福岡で対応したのはおそらくそんな職員だったのでしょう。一方では、児童福祉司の精神疾患による休職率は教員の4倍で、疲弊や心理的負担で50人に1人になっているといった調査結果もあります。判断の難しい、過酷な職場であることも現実です。
最近では弁護士や現職の警察官を配置している児童相談所も増えてきています。密室から漏れ聴こえる小さなSOSの声を聞き逃すことのないように、体制の充実が求められます。それと同時に、私たちも近所の子どもに異変を感じたときには、敏感に反応するアンテナを日頃から磨いておく必要があります。
「間違ったらどうしよう」「恨まれはしないだろうか」と躊躇する気持ちもわかりますが、あのような最悪の事態を回避するためには、警察や児童相談所等に思い切って通報する勇気が求められています。