共同経営が地方公共交通を変える!?
四国旅客鉄道株式会社(JR四国)と徳島バス株式会社は、2022年4月から徳島県南部において共同経営を始めています。鉄道事業者とバス会社が連携して共同経営を行うのは全国初だそうです。共同経営により、実質的な運行本数増や待ち時間の短縮などの利便性の向上が図られるほか、利便性向上に伴う利用者の増加等による経営力の強化が期待されています。
これまでも牟岐線では、2019年3月のダイヤ改正で阿南駅以南で列車本数が減り、その補完として高速バスとダイヤを連携させる取り組みを始めていました。鉄道と高速バスの共存が困難になったことから、両者の生き残り策として、利用者の利便性を維持することを目指したという側面もあるでしょう。共同経営のスタートによって、徳島駅と阿波海南駅を結ぶJR牟岐線と並行する高速バス「室戸・生見・阿南大阪線」の一般区間(阿南〜甲浦)では、牟岐線の駅に相当するバス停留所で乗降する場合、牟岐線同様にJRの乗車券や定期券等を利用できるほか、運賃もJRと同額にするというものです。乗り換え時の初乗り運賃の負担も減ることから、安価にもなります。
共同経営に関しては徳島県にさきがけて、2021年4月から熊本市で5つのバス会社による共同経営が始まっていました。複数のバス会社が重複して運行する路線などを対象として、サービス水準を維持しつつ、運行主体や便数などを見直すことで効率化を図り、ダイヤの調整による待ち時間の平準化を図ることを目指しています。もちろん、重複路線の見直しだけでなく、今年4月からIC共通定期券サービスを開始するなど、共同経営の効果を着実に上げています。
バス、電車、JR、タクシー等、地方の公共交通機関は一部のエリアを除いて、どこも厳しい状況にあります。競争から協調へ。協調というよりも、生き残るための数少ない選択肢の一つとして共同経営ともいえるでしょう。であるならば、この仕組みを活用して、効率的かつ利便性の高い公共交通網を構築していきたいものです。例えば熊本市では、路面電車とバス路線が並行に走っている区間があり、バスの停留所や電停の位置もあまり変わりません。バスだけでなく、電車も含めた共同経営を導入することで、役割分担もしくは棲み分けができれば、効率性はもとより、もっときめ細やかで利便性の高いものに変えることが可能です。
また最近では、熊本都市圏域内の合志市や菊陽町、熊本市北東部への人口や工場等の集積が進み、渋滞も深刻な問題になっています。台湾の半導体製造企業・TSMCの進出は、その問題に拍車をかけることは間違いありません。その対策として、JR豊肥本線や熊本電気鉄道菊池線とバスやタクシーと組み合わせ、場合によってはバスやタクシーのみ走行可能な専用レーンを設けることで、渋滞なく目的地にたどり着ける利便性の高い公共交通網を構築することだって可能です。そのためには、徳島県のようなJR九州も含めた共同経営の発想も不可欠。
単独では厳しくても、既存のものを組み合わせることで、課題を解決し、新たな需要をも生み出していく、ますますそんな知恵が求められる時代です。
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