ドイツに学ぶ公共交通の在り方
現在ドイツでは、月9ユーロ(約1,240円)で路面電車や地方鉄道、地下鉄、バスなどの公共交通機関が乗り放題だそうです。燃料価格の高騰を受けて、連邦政府と州政府による市民の負担軽減策の一環として6月から導入され、当初は8月末までの時限措置を延長したことが報じられていました。長距離の高速鉄道や長距離バスは対象外ですが、乗り継ぎを繰り返せば全国を移動することも可能です。
ドイツ交通事業者連合によると、6月からの3カ月間でCO2排出量180万トンの削減、自動車約38万8000台分の年間排出量に相当すると、環境面でも効果を発揮したことが公表されています。日本とは、燃料価格高騰の深刻さと公共交通機関に対する考え方の違いもあるのでしょうが、皆さんはこの制度をどのように思われますか?
これまでもこのnoteでは何度かJRの赤字ローカル線や新交通システムなど、公共交通の問題を取り上げてきました。国内の公共交通が抱える構造的な問題としては、利用者数の減少による事業者の赤字幅の拡大、路線の減便・縮小、さらに利用者の数減少、といった負のスパイラルからなかなか抜け出せないことにあります。
公共交通を利用しない理由としては料金の問題もあります。燃料費の高騰でさらに利用料金が上がれば、駐車場代も含めた自家用車保有のコストに比べての優位性は下がります。安く利用できることも公共交通の利用者数を増やす大事なポイントです。実際に熊本県では、新バスターミナルの開業日に合わせて、県内のバスや電車が無料になったことがありましたが、その際はかなり利用者が増えました。その様子を見て「みんな無料なら乗るんだ」が正直な感想でした。なので、イベント的に一部地域でやるのではなく、ドイツのように全国で一斉に導入すれば、これまで利用しなかった人たちも、公共交通に対する考え方が変わることが期待されます。
公共交通への関心が高まることで、これまでは使い勝手が悪くて当たり前の公共交通が、路線の拡充や増便、路線バスや鉄軌道との結節点の改善、共通定期券の充実、コミュニティバスや乗合タクシーとの連携など、「公共交通を使いやすくするためにはどうしたらいいのか」と、利用者側からの要求に応える形で使い勝手が良くなっていくという、負のスパイラルの逆転につながることを期待しています。
慎重さは日本人の美徳の一部なのかもしれませんが、負のスパイラルからなかなか抜け出せないような問題に対しては、ときには「とりあえずやってみよう」との大胆さも必要なのかもしれませんね。
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