測量士補資格試験における基線解析とベクトル
令和3年度測量士補試験No.8
基線解析
実質的に空間ベクトルの成分表示です。
本問では、2地点BとCとの間の距離を求めます。
数学的には、
$${\overrightarrow{AB}}$$と$${\overrightarrow{AC}}$$から、
$${\overrightarrow{BC}=\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AB}}$$
により、
$${\overrightarrow{BC}}$$の成分を求め、
$${\sqrt{x成分^2+y成分^2+z成分^2}}$$
により、2点間距離を求めます。
高校生に対して指導する場合、実業高校の生徒は数学Bを履修していないケースも見られます。
そこで、上記の問題では<Aを原点とみなす>ことにより、ベクトル的に捉えずに2点間距離によって解決する指導も考えられます。
しかし、その場合には、以下の2問で問題が発生します。
令和5年度測量士補試験No.8
令和4年度測量士補試験No.9
令和5年度では、
$${\overrightarrow{AB}}$$と$${\overrightarrow{CB}}$$が与えられています。
ベクトルを既習であれば、逆ベクトルの考え方で単純に符号を反対にするだけで令和3年度に帰着できますが、単なる座標ととらえていると、
「符号を反対にする」という発想をその場で思いつくのはややハードルがあります。
令和4年度では、距離ではなく、基線ベクトルの成分が聞かれています。
これも、ベクトルを既習であれば、
$${\overrightarrow{BC}=\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AB}}$$
によって求められるため、令和3年度よりも簡単な問題といえます。
しかし、距離を考える際には、ベクトルの向きを考える必要が
ないのに対して、成分の場合は、CからBを引く、という、
引き算の方向を考える必要があり、ベクトルを未習の生徒には
難しかったかもしれません。
令和6年度ではこのような出題はなされていませんが、
令和3年度から少しずつ形を変えて令和4年、令和5年と
出題されていることを考えると、たとえベクトルを授業で未習であっても、
・ベクトルの成分計算
・成分表示されたベクトルの距離の求め方
の2点を端的に指導した上で過去問に取り組ませた方がよいでしょう。
なお、上位資格である測量士試験でもこのようなベクトルの問題は出題されています。
国際地球基準座標系(ITRF:地球の重心を原点とし、短軸(北極方向)をZ軸の正、経度0度と赤道の交点方向をX軸の正、東経90度と赤道の交点方向をY軸の正とする)において、九州から北海道へ向かうベクトルを成分表示した際の各成分の正負が、令和2年度午前試験のNo2にて聞かれています。
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