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母のへんな歌
「お母さん、また変な歌うたってる〜!」
「え〜っ、そうだった!?」
そう言って笑い合うことが何度もあった。
うちの母は家事をしながら時々歌っていた。
適当な自作の歌を。
童謡やCMソングの寄せ集めみたいなメロディに、無意識のうちに出てくるらしい素直な言葉が乗る。
だいたいその歌詞はおかしくて、今やっている動作をあらわしていたり、ぬいぐるみに話しかける風だったり、歌になった独り言みたいだったりした。
歌っていることに無自覚だったりもして、「お母さんまた歌ってたよ」と我々子どもたちが指摘したり、母自身も「あら私今歌ってたわ!」と言ったり。
「なにその歌詞〜!」「どこから出てくるのその歌?」「さぁ、無意識に出てくるんだけど、歌おうと思うと出てこないわね」などと言いながら家族みんなで笑いあっていた。
ひるがえって今日。
私もへんな歌をうたっていた。
「はっみがきはっみがき楽しいな〜〜」
「ぴかぴかぴかぴか綺麗な歯〜〜」
ちなみに歯磨きが楽しいと思ったことはない。
これは息子の歯を磨きながら歌ったうた。
自分で歯ブラシをくわえ、動かしたりはするものの、当然充分に磨きあげることはできない息子。
私の方で仕上げ磨きをしたいのだが、色々自分でやりたいという感情も芽生えてきて、拒否されることが多い。
まぁ口に棒を突っ込まれていじくりまわされるのは誰しも嫌だろう。
でも虫歯がしんぱい。
それで今夜は適当な歌をうたいながら、リズムに合わせてしゃこしゃこブラシを動かした。
歌の甲斐あってか、息子は珍しく大人しくしていてくれ、その真っ白でかわいらしい食いしん坊の歯を磨くことができた。
もしかしたら母も、こんなふうに子どもを育てるうちに、なんだかよくわからない歌を口ずさむようになったのかもしれない。
子育てをすればするほど、私を含む3人を育て上げた父と母には頭が上がらないなぁと思う。
いずれ私も「なにその歌」「へんな歌うたってるよ〜!」と言われる日が来るのかもしれない。
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