夫に「かわいい」と言われたい
髪を切ると、夫に言ってほしい言葉がある。
「かわいい」
だ。
自分の容姿や体型が突出して美しいわけではないことは、ここまで生きていれば素直に熟知している。
それに、もし他の男性に言われたら、申し訳ないがおそらく気持ち悪いだろう。
それでも、夫には、「かわいい」と言ってもらいたいのが妻こごろ。
しかしこれが簡単にはいかない。
「みてみて、髪切ったんだ!」
「短くなったね」
「どう?」
「なんか、ふわふわしたね」
「かわいい?」
「ふわふわ…?」
「………か わ い い ?」
「……カワイイデス」
こんな不毛なやりとりを、かつてはしていた。
そもそも夫は髪は長い方が好きなのを知っていて切ってくるのだから、まぁワガママなのだが、仕方ない。
言ってほしいのだ。
しかし、最近の夫は違う。
「みてみて、髪切ったんだ!か」
「かわいいね〜!!」
どうやって「かわいい」と言わせようか考えているうちに、「かわいい」の言葉が飛んでくる。
さすが、夫、頭がいい。
こういう時は「ka」「wa」「i」「i」の四音を連ねるのだと、すっかり学習している。
そうすれば私の機嫌がよくなるのだと。
「疲れた〜!!」と珍しく愚痴るときは「お疲れさま〜!」と労り、「私、日々頑張ってると思うの」と恩着せがましく言い出した時は「いつも頑張ってるよね、あ、冷蔵庫整頓してくれたの?ありがとう」と。あと、チョコミント商品を与えておけば大抵喜ぶと思っている。(喜ぶけど)
しかし最近こういうコミュニケーションがやたらスムーズに進むにつれ、これはこれで、ちょっと物足りなくも感じるのだ。
心から「かわいい」と思ってる?などと感じてしまう。(元々言わせていたくせに)
夫よ。賢く、心やさしい、夫よ。
鉄板、模範解答以外の、素敵な応答を求む。
……どこまでも面倒くさい妻である。
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