こっそり食べたお菓子の袋
小さな子どもがいると、こっそりお菓子を食べるのにも技術がいる。
いや、普通に子どもと食べればいいじゃん?と思うかもしれない。確かにそうなのだが、まだ小さい子どもは歯磨きもままならず、虫歯になりやすい。カロリー的な問題もあり、甘いお菓子はあまり食べさせたくないのだ。
じゃあお前も食べなきゃいいじゃないか、というのは全くの正論だが、こちとら甘いものでも食わねば生きていけない。切実なのだ。だから太るんだ知ってるけどさ。
というわけで、時折子の目を盗んで、ひっそりお菓子をもぐもぐしている。
ところで、うちの夫と息子は、たいへんよく気がつくタイプだ。たとえば、私がこっそり1人で食べたお菓子の袋がゴミ箱に捨てられていると、なんと、びっくり、恐ろしいことに、気が付くのである。
これは最初想定外であった。
実は実家にいた頃も、学校から帰ると夕飯前に、母とお菓子をつまみながらお茶タイムをしていた。
その日あったことをニュースを眺めながらだべりつつ、お菓子をつまみ、お茶を飲むのである。
時には父には内緒でこっそり、ちょっと良いお菓子を2人で食べることもあった。
そしてうちの父はそれに全く気がつかない人であった。だから私と母は、2人でまったりのんびりティータイムを謳歌することができたのである。
全てにおいて父を除け者にしていたわけではない。ちょっとした女2人の楽しみがあったという話だ。
ところが、うちの夫は、気付くのだ。
ひとりで美味しいものを食べると、ちゃんとバレる。
同じ男性でも気付くタイプもいるのだなと認識を改めた。雑な性差に基づく偏見を持っていたものだ。
しかし、息子はまだ子ども。彼にならバレんだろうと思っていた。
しかし、しかし……。。
息子もまた、「気付くタイプの男」だったのだ。
大人のキットカットの袋がゴミ袋に入っているのを見て、「これ、なに…?お菓子だよね?ぼく、食べていないんだけど……?」と、袋を握りしめながら恨めしそうな視線を送ってくるのである。
しかも、実物は見たことないはずなのに、袋の形状でお菓子だと推察してくる。幼児、侮れない。
そこから「こっそりおやつを食べる」戦いが始まった。頻度は少ないが、どうしようもなく、こっそり1人で食べたい時に、頑張って挑む。
昨夜は無性にしましまうまうまバーが食べたくなった。
最近お気に入りのセブン限定アイスだ。太らない体質で糖尿予備軍じゃなかったら冗談抜きで毎日食べたい代物だ。
この美味さはわが子も知っているので、開けると飛びついてくる。最低でも1/3は食われる。
その時はもう夜だったし、幼児がこんな高カロリーなものを摂取するのはよろしくない。
だが私は食べたい。
そこで、夕食後、テレビをつけ息子が「みいつけた!」に夢中になっている間に、皿を洗うふりをしてシンクに向かいながら食べることにした。
ひやひやしながら、袋を開ける。
しまった、ガサガサ音がしたか。
大丈夫、息子はテレビに夢中だ。
ぱくり。ああうまい。これだよこれ。
よし、息子は気付いてない。
絶対に完食してやる。
ぱくっ、ぱくぱくっっ
時々息子の方を振り返り様子を見ながら食べ進める。よし、完食できた!
勝利だ!!!!
息子にバレないよう、ゴミを一時的に三角コーナーに突っ込む。ふふふ、これで安心。
食べ終わったちょうどその時、息子が「ポケモンつかまえる〜」(ポケモンの歯磨きアプリつかいながら歯を磨くの意)と駆け寄ってきた。勝利を確信し、甘味欲を満たされた私はそれに笑顔で応える。
その瞬間
ガサッと息子の手が三角コーナーに伸びた。
その手には、空になったうまうましましまバーの袋……。
「えっと、これは……
か、空だから……!!!!」
勝利の確信から急転、猛禽類に狙われたウサギの気分。
そこには袋しかなく、中身は残っていないことを確認した息子は、瞬時に歯磨きへと移行していった。今回は特にお怒りにもご執心にもならなかったらしい。
い、命拾いした……。
いつの間にか身長が伸びた息子は、シンクの中を覗き込めるまでになっていたようだ。
おおきくなったねぇ………ほんと、びっくりしたよ……。
これは「よく気がつく」というより、単に「食い意地が張っている」のではないか?という気もしてきた。
だが子に隠れてまでお菓子を食べたい私と、ピザLサイズ1人で完食できる夫の子だ。無理もないのかもしれない。
ああ、書いていたらまたしましまうまうまバーが食べたくなってきた……。今度は分けながら食べるか、悩む……。
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