子どもを産んでも変わらなかったこと
「子どもを産んで、人生がかわった!」というのはよく聞くし、私もそうなるのかなぁとぼんやり考えていました。
まだ人の親になって3年程度ですが、変わったと思うことと、変わらなかったことの両方があります。
「変わったこと」編に続き、今回は「変わらなかったこと」について。
■子ども最優先になるかと思いきや
子どもは毎日、びっくりするほど可愛い。
もし、私が死ぬことで子どもの命が助かることがあったら、迷わず命を差し出せる。
愛おしくて、かわいくて、かけがいのない存在だ。
それはそれとして。
子どもはかわいいが、やりたいことはやりたい。
イベントに行きたいし、アニメも観たいし、映画も観たい。美味しいもの食べたいし、ひとりになりたいし、本を読んだり、考えごともしたい。何かを作りたいし、働きたい。
子どもが生まれたら、あまりの可愛さに欲望のすべてを忘れ、子ども最優先になるのかなと思っていた。
ところが実際は、子どもは超絶かわいいが、自分の欲望も相変わらず持っている、タスクと愛情と欲望の総量が爆増したモンスターみたいな自分が出来上がった。
■「理想の母親」にはなれそうにない
子どもを産んだら自然と献身的な母親になるんだろうと思っていたあたり、私も「都合のいい母親像」に縛られていたんですね。
いざ当事者になってみたら、こちらも生身の人間なので、自分の欲望はちゃんとある。
むしろ、本質的なところはそんなに変わってない気がします。
オタクだし、子どもへの苦手意識は減ったけど、料理も人付き合いもそんなに好きじゃないままだし、ひとりの時間がないと生きていけない……。
子を産んだ程度で人間かわらない。本質はそのまま。
子ができたら人間変わるなんて、夢見過ぎだったみたいです。
ただ、昭和生まれで、割と真面目な専業主婦の母に育てられたのもあって、心のどこかに「献身的でやさしい理想の母親像」があり、それと自分とのギャップには常に葛藤しています。
無理して「理想の母親」を目指していた時期もありましたが、私の場合はやめた方が良さそうだなと思い始めました。
我慢して、ストレスを溜めたら、いつか子どもを激しく傷つけてしまうだろうという確信があるからです。
自分より小さくて非力な存在に力を行使するのはとても気持ちがいいのです。
私も正直、自分がイライラしている時に怒鳴ってしまって、すっきりしたこと、あります。
子どもが自分を求めて、縋り付いてくるのを、愛しいだけでなく、優位を感じて小気味良く思ったこともあります。自分を殺す日が続くと、子に優しくする余裕がなくなります。
私はその程度の、ふつうに弱い人間です。
ストレスを溜めたら、いつかきっと子どもを激しく傷つけてしまう。
わかりやすい暴力だけでなく、表からは見えにくい束縛や過干渉など、意識的にも無意識にも、いろんな征服の仕方がありますから、よっぽど気をつけて接しないといけないな、難しいな、と思っています。
残念ながら理想の母親像と現実の私が乖離しているので、私の場合、それを演じるのはかなりのストレスです。
自分を殺してまわりに尽くした上に、良い母親でいられるほど、私は人間ができてきません。
だから、あまり我慢しすぎないようにしています。
大切なものを失わないために。
■自分でいられるのは、時代と家族と運のおかげ
結局、「お母さんなんだから」「今は仕方ない」と仕事やキャリア、趣味や楽しみを諦めることができず、全部ずるずる引きずりながらみっともなく足掻いているのが現状です。
「こんな自分のことばかり考えて」とか「1人になりたいと思ってしまう」とか「包丁全然握ってない」「私はだめな母親なのでは」「子に悪影響が出たらどうしよう」と日々葛藤しています。
でも、もう私はそういう人間だから仕方ないのかな、と少しずつ折り合いがついてきました。
「お母さん」だけど、「私は私」なので。
とはいえ、「私」が「私」のままでいられるのは、時代と家族と運のおかげです。
今は、「お母さんだからって無理しちゃよくない」「個人の自由が大事」と言ってもらえる時代ですよね。
もちろん、いまだ抑圧され苦しんでいる方だっているわけですが、比較的母親の自由が許される空気に背中を押されています。
また、夫が家事育児に協力的なこと、転勤がないこと、周りに我が家の在り方について口を出してくる人がいないことなども、運が良かったなと思います。
特に、手料理じゃなくても栄養が取れればそれでいい、家事はできる方がやればいい、無理や我慢をなぜする必要があるのか、という考えの夫の寛大さには救われています。
とはいえ、1日は相変わらず24時間で、やりたいこと全部はとても叶えられません。
優先順位をつけたり、諦められるものは諦めたり、絶対に外せないここぞというものは絶対に手放さなかったり、試行錯誤しながら生きています。
ある程度「自分はもうこういう感じなんだから仕方ない」と諦めることで、力みが抜けたかなと思う今日この頃です。
ただ、今後生きていく中で「否応なく変わらなければならない場面」に出くわしたらどうしよう、という不安はあるんですけどね。
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