【東京五輪】男子ロードレース、素人がみても面白かった!
あまりオリンピックには興味のないほうだけれども、この四連休は男子・女子ロードレースを見た。
テレビ放送はなく、ネット中継のみ、しかも解説も英語のみ! という状況ではあったが、週末実業団レーサーの夫が解説してくれたおかげで、楽しく観戦することができた。
7月24日(土)に開催された男子ロードレースは、東京の武蔵の森公園をスタートし、山中湖を経由して富士スピードウェイでゴールする。
総距離244キロ、東京、神奈川、山梨、静岡と、1都3県にまたがるコースだ。
国際的にも珍しい「ラインレース」だそうで、「ラインレースって何?」と聞いたら、周回するのではなく、スタートとゴール地点が異なるレースとのこと。
実現するには道路規制など様々な調整が必要になるため、開催が難しいという。
まさに五輪ならではのリッチなコースだ。
つい先日まで世界最高峰のレース、ツール・ド・フランスが行われていたから、選手たちはへろへろで、グダグダなレースになるのでは、と想像していたら、夫曰く「むしろバキバキに絶好調」「ツール・ド・フランス走ってそのまま五輪に参加している」とのこと。
6月21日から7月18日までの長期間にわたるレースを走っておいてまだまだ元気、そのまま五輪に参加するなんて、自転車乗りは皆超人なのだろうか。
■見慣れた景色を走る選手たち
私はド素人だけれども、結構楽しく見れたのは、絵的な面白さもある。
普段見慣れた景色の中を、世界中の自転車選手が駆け抜けていくさまは、なんとも不思議だ。
どぎつい色合いのラーメン屋の看板を背景に集団が通り抜けていくのは、見慣れなさ過ぎてなんだか笑えてしまう。
しかもコースは自転車乗り界隈では有名なところばかりだそうで、
「ここの登りは地味にきつい」とか
「ここは上ったり下ったりが続くんだよなぁ」
と隣で夫がつぶやくのだ。
国立競技場の芝生に立つことは一般人にはなかなかできないと思うのだけれど、今回のロードレースでは夫も日常的に走ったことのある道でトップ選手たちが真剣勝負を繰り広げている。
地元が開催地になるというのはこういうことなのか。
Twitterでもトップ選手たちが普段走る道を通っていることに感動する声がみられた。
途中、大國魂神社の境内を通ったのもびっくり。
砂利や石畳で走りにくそうなのに、パレードラン中とはいえ誰も転倒しないのがさすがだ。
巫女さんや神主さんたちが出迎えてるのもよかった。
日本ではマイナー競技なのに、割と沿道で観戦している方が多いのもびっくり。(本来は無観客の予定ではあったのだが)
SNS上でも、初めて見るけど面白い!という声もきこえて、なんだか嬉しくなってしまった。
■レース展開も面白かった!やはり駆け引きが見どころ
このクソ暑い東京で11時スタートという過酷すぎるレース。
序盤は割とゆっくり走っているように見えたが(といっても速いのだろうが)途中二人の選手が前に出た。
基本的に長丁場のレースでは、集団から飛び出して逃げようとしても、追走され、あるいは足がもたなくなって集団に吸収されることが多いという。
逃げの意味は、見せ場をつくる、あるいは、上手くいけば最後まで逃げ切って優勝できるというものらしい。
特に今回は強い選手が多いので、ゴール前スプリントでは勝てない選手が、それでも優勝を狙うために飛び出したのでは、と夫は言う。
逃げの2人は違う国の選手であるが、協力しながら全力で引き合い、集団は様子見を続ける、という状況が続いた。
どのくらい距離があけば逃げ切れるのか。
夫曰く「10キロあれば1分差は縮められる」とのことだったので、割と最後までどうなるかわからず手に汗握る展開だった。
一方集団は、先頭の様子を見ながらも、できれば人数を減らしたい。
どこで仕掛けるのかとドキドキ。
スピードを上げるのは、「登りとかのきついところで仕掛けて、周りをふるい落とすのが基本」ときいて絶句した。
周りの人がきついところで他を引き離すのは、相当強くないとできない。
一方、逃げの方も、基本的にはゴール前スプリントで勝ちにくい選手の戦略だから、飛び出したら最後、ひたすら全力疾走するしかないという。
きつい。きつすぎる。
どっちの道を選んでもきつい。
そして当然だが、だれもが「一番」になることを真剣に
目指している。
スポーツにおいて「絶対に勝ちたい」とか「一番になりたい」という感情が私は抱けないタチなので、当たり前なのだろうが、一番を目指す選手たちの精神に慄いてしまった。
■細かい情報を得られない中での戦い
結局、最後まで逃げをキープして先頭でゴールしたのが
金メダルを獲得したエクアドルのリチャル・カラパスだ。
後ろがどのくらいの位置にいるかわからないまま、全力で逃げ続けた胆力がすごい。
途中で思わず「これって選手たちは無線でレースの流れを知ってたりするの?」と夫に訊いてしまったが、「他のレースでは無線でチームとやり取りしているけど、五輪はダメかも」とのことで、こんな長丁場のレースを細かい情報なしに自分で判断して走るのか、面白いな、とわくわくした。
後で聞いたところによると、先導バイクのタイム差情報以外では、詳細な情報を得るには集団の後ろにつくチームカーまで下がらないといけなかったそうだ。
当然佳境に入るとそんな事は出来ないし、大きなレースで選手の無線を禁止し出したのはここ最近のことだそうで、選手も慣れてなかったのかもしれない。
さらに、2位3位争いも熾烈を極めた。
メダルを有力視されていた強い選手が他の選手からガッチガチに囲まれて前に出られないように塞がれているのも、それでもゴール前スプリントで皆が散らばった隙間をぬってぐんと前に出てくるパワーもすごかった。
結局、逃げが成功したのは、追走のメイン集団がどのタイミングで追いかけるかの判断が遅かったらしい。
集団で走ると互いに風よけ等で協力できたり足を温存できたりする。
先頭を追いかけるとなると消耗するし、どうせなら有力選手にそれをさせたい。お前引けよ、と。
そういった駆け引きで様子見をし合うことを「お見合い」というそうだ。
かつてバレーボールをやっていたとき、相手が取ると思ってお互いの間にボールが落ちることを「お見合い」と呼んでいたが、他の競技でも「お見合い」という単語があるのだなと興味深く感じた。
やはり駆け引きや、選手の考えていることがわかると一気に競技は面白くなる。
夫の解説には大感謝だ。
レース展開のほかにも、トイレタイムや、自国のサポートカーを探すのが大変そうな様子(見た目が全部一緒だから見分けがつかない)、とにかく暑そうでがぼがぼ水分を飲んだりかぶったり背中にボトルを突っ込んでいる姿や、なにやら選手同士で話している様子がみられたのも面白かった。
また、日本から参加した新城選手は35位でのゴールだったが、同じ集団の中から、
「あ、僕日本人なんです。自国開催なんでね、ちょっと前にいかせてもらえますか?」
あるいは、「お前自国開催だろ?前行けよ!」と押された風ににこにこ前に出てきて、
「えっ、そうなの?じゃあゴールスプリントする?」
と隣の選手と話したかのように、もうトップ争いは関係ないけれども、その集団にいた選手同士でゴール前スプリントをして場を沸かせているのも和んだ。
とても愛嬌のある素敵な方なのだなと思った。
他にも、同様にゴール前でせっかくだからとスプリントしたり、沿道に手を振ってくれたり、子どもにボトルをそっと置いたりと、お茶目だったりキュートだったりやさしかったりする選手が多かった。
でもみんな、一番になるためにトレーニングして、一番になるために走ったのだろう。
ド素人でもとても面白いレースだった。
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